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パネルディスカッション「スポーツとまちづくり」

チャレンジデー2011事後ワークショップでは、パネルディスカッションとして、登壇いただいた青島氏、長崎氏、武藤氏より、体験された各実施自治体の取り組みについてやそれぞれの視点で「スポーツとまちづくり」に関するお話をいただきました。

パネリスト

青島健太氏 スポーツキャスター/笹川スポーツ財団 理事
長崎宏子氏 ゲンキなアトリエ取締役/笹川スポーツ財団 評議員
武藤泰明氏 早稲田大学スポーツ科学学術院教授/笹川スポーツ財団 スーパーバイザー

秋田県でのチャレンジデー参加によるまちづくり

黒田:

ありがとうございました。ここでフロアの方からもお話をお聞きしたいと思います。今、長崎さんからもお話がありました関係者の皆様も、今日ご参加いただいている皆様ももちろん同じ立場ですが、地元でチャレンジデーに取り組んでおり、笹川スポーツ財団のチャレンジデー推進員としてご活躍いただいている秋田県体育協会の田中忠夫様にお話を伺いたいと思います。秋田県では、たくさんの自治体・地域の方々がチャレンジデーに参加いただいていますが、県内各所で、どのようにスポーツとまちづくりに取り組まれているかを紹介していただけますでしょうか。

田中:

秋田県は、2009年9月2日に「スポーツ立県」宣言を行いました。そして、生涯スポーツの普及を第一に挙げて、日々取り組んでいます。その中で、チャレンジデーは大きなウエイトを占めています。

なぜ今、秋田県でチャレンジデーが急激に増えたかというと、単なるチャレンジデーで終わるのではなく、先ほど武藤先生からもお話がありましたが、どのようなかたちでスポーツ参加に結び付けるかを重点的にやっております。例えば、総合型地域スポーツグラブを地域住民に浸透させるためにチャレンジデーをやった、また、チャレンジデーをやったことによって、総合型地域スポーツクラブを立ち上げたという効果を常に考えております。

言葉を換えると、競技会をやろうとすると、まず企画力が非常に高まります。また、それを実施することによって、各地域に企画が下ろされたときに組織力が高まります。各自治体や体育協会、体育指導委員会などが直接係わるので組織力が高まるといったことです。そして最後には、地域住民の地域力が高まります。「企画力」、「組織力」、「地域力」がチャレンジデーで高まり、生涯スポーツの普及・振興につながります。これが、今、秋田県のチャレンジデーが急激に増えた理由であると推測しております。長崎さんが、先ほど「チャレンジデーのメッカ」とおっしゃいました。早速、今後のキャッチフレーズで使わなければいけないと思いました。

黒田:

ありがとうございました。今、田中さんの言葉にあった「組織力」「地域力」からコミュニティの形成がキーワードとして想像されます。青島さん、いろいろなスポーツの現場をご覧になられていて、コミュニティ形成の部分で感じることや、実際に行われていることはありましたか。

青島:

もちろんスポーツが人を引き付けるところはあると思いますが、実際、誰かが何か動かないと、それはなかなか動かないと思います。私たちが子どもの頃は、例えばボールとバットと広場があったら、みんなで野球が始まります。でもそのレベルでも、誰か中心になる者が、「ちょっと集まろうぜ」と言い出さなければいけません。そういう意味では、今日お集まりのみなさんが取り組んでいることは、まぎれもなく大きな力だと思います。コミュニティの動きになるためには、やはり核になる方が何をやろうとするのか、どのようにしてやろうと思っているか、それが大事になるのだと思います。そもそも、まず、そこにいればいろいろな動きができる、それがコミュニティの核になる部分ではないでしょうか。

黒田:

ありがとうございました。長崎さんから、秋田県仙北市でチャレンジデーの現場をご覧になられて、特にご年配の方が熱心にかかわれたということでお話を伺いました。

長崎:

そうですね。地域的にご年配の方が多いことは伺っておりました。子どもたちは、学校生活の中でチャレンジデーやいろいろなスポーツに携わっていますが、ご年配の方々は、そういった集まりがあるところに自分の意思で行かなければ参加できない部分があります。

話は脱線しますが、私は、大仙市太田地区にある秋田県立大曲農業高等学校太田分校も訪問しました。分校なので、全校生徒がとても少ないのですが、クリーンアップ作戦と一緒になって、「町内のごみ拾いをしながらウオーキングに行くぞ」と出かけました。周りに田んぼが広がっている地域で、町内にごみがほとんど落ちていなくて、ごみを探すことさえ大変そうでした。言い方は悪いかもしれませんが、高校生たちは、学校の取り組みの一つだから参加しているというのを感じなかったわけでもありません。

反面、自分から「15分間、何かスポーツをやるぞ」と参加していたのは、圧倒的に高齢の方々が多かったように思います。水泳教室も、自分で参加したいと申し込みをしたお子さんもいるとは思いますが、お父さん、お母さんやおじいちゃん、おばあちゃんが、「長崎宏子さんが来るから、行ってらっしゃいよ」などと言ってくれて参加した方もいると思います。そういった意味で、みんなで集まってスポーツをやろうという気持ち、やる気が本気だと一番感じたのが年齢層の高い方々でした。その方々がまちや地域を一番元気にする原動力ではないかと感じました。「若い世代にリーダーシップを」も、とても大切ですが、諸先輩方がチャレンジデーに人生を懸けるぐらい頑張っていたり、高齢のリーダーの方々が現場で指揮をとっていらっしゃいました。そういった方々の姿や背中を見て、「これだけのこと、自分たちもできるだろうか。でも、もしかしたら助けを借りればできるかもしれない。」と思えることが、私たちのような世代の人間にはとても大切ではないかと思いました。実際に訪問して、ご年配の方々のパワーをすごく感じました。

黒田:

ありがとうございます。グループワークの取りまとめでも、多くのグループから、「地域の一体感が出ました」とか、「いろいろな団体さんとの声かけができて、地域がつながった」とか、「市民の一体感が持てた」という報告をいただいております。とりまとめの結果を見ると、スポーツの参加のきっかけはもちろんですが、スポーツ以外の部分でも、「地元のPRにつながった」とか、「普段はつながりのない企業の方との接点も持てました」という回答をいただいています。スポーツ以外のところで、複数の効果というか、チャレンジデーだからこそ生まれるものはありますか。

武藤:

誤解があるといけないので、あらかじめ先にお話をしておきたいのは、私は、スポーツはするだけで価値があると思っています。青島さんと長崎さん、このお二人を見れば、それがよくわかると思います。それに加えて、社会的な価値という話をします。

社会学に「弱い絆」という面白い概念があります。「弱い絆」というと、「人間の絆が弱くなって大変だ」と誤解するかもしれませんが、むしろ逆で、普段、日常的に顔を突き合わせている、強い絆の人間同士だけで暮らしていると広がりがありません。困ったことを助けてくれる人間を探しに行けません。たとえば都市部では、転職の紹介をしてくれるのが親友である確率は極めて低いです。先生である確率も低くて、30年ずっと会っていなかった同級生が意外に役に立つ、これが弱い絆です。

真夜中のラン&ウォーク出発前 参加者との交流(岡山県備前市)スポーツが、地域社会の形成というときに、「地域社会って何だか毎日顔をあわせて付き合いが面倒臭い」という人もいますが、チャレンジデーは1年に1回しかやらないのが結構良いところで、普段は付き合いがない人どうしが、1年に1回集まって共同作業をして、いろいろな方に参加してもらうために努力をしています。1年に1回やると、やり方を忘れません。よかったと思うのと、やり方を覚えているというのが、さきほど秋田県の田中さんが言われた、企画力・組織力です。これは、4年に1回だと忘れるかもしれません。毎月だと疲れます。1年に1回ぐらいがちょうどよくて、「それでも企画力と組織力と地域力が生まれるのだ」と言ってもらったので、私は、1年に1回でいいということで意を強くしました。1年に1回で弱い絆を作って保っている状態が、きっと地域のためにものすごく役に立つと考えるといいと思っています。

プロフィール

青島健太氏 スポーツキャスター/笹川スポーツ財団 理事
慶應大学、東芝を経てヤクルトスワローズに入団。公式戦初打席で初本塁打を放つ。1989年に退団後、オーストラリアで日本語教師を務める。帰国後、ライターおよびキャスターとして、スポーツの醍醐味を伝えている。

長崎宏子氏 ゲンキなアトリエ取締役/笹川スポーツ財団 評議員
1984年ロサンゼルスオリンピック、1988年ソウルオリンピックに水泳・平泳ぎで出場。日本オリンピック委員会(JOC)職員、国際オリンピック委員会(IOC)選手委員会委員を経て、スポーツコンサルティング会社「ゲンキなアトリエ」取締役に就任

武藤泰明氏 早稲田大学スポーツ科学学術院教授/笹川スポーツ財団 スーパーバイザー
東京大学大学院修士課程修了後、三菱総合研究所に入所。2006年4月から早稲田大学教授。専門は、マネジメント、スポーツマネジメント。

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