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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2012 第9回

スポーツイベントと振興プログラム

第9回スポーツアカデミー2012の様子

3月1日に第9回スポーツアカデミーが行われました。

今回は、「スポーツ白書~スポーツが目指すべき未来~」の第9章「スポーツイベントと振興プログラム」をテーマとして、わが国のスポーツ振興に大きな役割を果たしているスポーツイベントやプログラムについて神戸大学の長ヶ原 誠 先生にご講義いただきました。

長ヶ原先生は、スポーツ白書の構成に基づき、全体を「I.スポーツイベント」と「II.スポーツ振興プログラム」の2パートに分け、最初にスポーツイベントについて、国内外のスポーツイベントを16のカテゴリに類型化した表で説明されました。このうち、総合種目開催型の生涯スポーツイベントである「ワールドマスターズゲームズ」を事例としてとりあげられ、「緩やかな参加基準」「オリンピック・パラリンピックなどと比べて低額な開催経費」「生涯スポーツの国際大会の中では最長の滞在期間(参加者および家族)」などの特徴に加え、「生涯スポーツのモデルのような参加者が世界中から集いスポーツを存分に楽しみ、家族と喜び合う姿」が、加齢に対する否定的な見方を変えるなどの「社会文化的便益」を生み出すことが重要であると述べられました。また、国内で行われる複数の生涯スポーツイベントの事例を紹介される中で、ルールはシンプルに保ち参加者の年齢に応じてユニバーサルデザイン化することが肝要であることなどが指摘されました。

神戸大学 長ヶ原 誠 先生

神戸大学 長ヶ原 誠 先生

「II.スポーツ振興プログラム」のパートにおいても、最初に「スポーツ振興プログラム事業の類型化と国レベルの主なプログラム」として、主体者支援事業(運動・スポーツを実施するために必要な主体者自身の意識向上や同期付けを目的とした事業)と、ソフトウェア関連事業(運動・スポーツを実施するために必要な機会・経験的条件を整えるための事業)といった分類とともに、各々の類型について、どのようなチャネルを通じて周知され、スポーツ振興にはどのように寄与するのかが説明されました。また、「身体活動プロモーションモデルに基づく運動・スポーツの開始・継続に必要な2つの条件と事業」の図では、運動・スポーツの活動主体者が活動を開始し、それを維持する上で必要な条件と事業についての解説がなされました。説明では、多くの活動主体者を引き込む(プル)魅力ある環境や機会を創出する事業とともに、活動主体者の知識や意欲の向上を後押しする(プッシュ)事業(啓発キャンペーンやカウンセリング、表彰・評価など)が重要と指摘されました。また、自治体が行う運動・スポーツのプロモーション事業を目的別に類型化したグラフが紹介され、それら事業を構成する複数の要素の中で、運動・スポーツの実施人口増加に高い貢献度が認められた要素(「個別相談」「サポーター育成」など)に関する解説なども行われました。

講義後、過去に運動・スポーツ経験があまりない高齢者でも、容易に運動・スポーツを始められるような環境整備のありかたや、余暇活動としての運動・スポーツの魅力を高めるための取り組みなどに関する複数の質問・意見が、予定の終了時間まで先生と出席者の間で交わされました。