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開催報告

2013年度開催報告

特別編 11月25日(月)18:30~20:30開催

統計学でスポーツは進化できるのか?

11月25日、スポーツアカデミー特別編が行われました。今回は、「統計学でスポーツは進化できるのか?」と題して、統計学者の鳥越規央氏にご登壇いただきました。

鳥越氏は、1997年に筑波大学大学院博士号を取得後、東海大学理学部に赴任され、2013年9月まで准教授を務められました。2011年に話題となった映画『マネーボール』で注目された「セイバーメトリクス」の手法を用いた統計分析の、日本における第一人者のひとりです。

今回の特別編では、統計学を用いた科学的なアプローチでスポーツは進化できるのか、また統計学をスポーツ振興に生かすにはどういう視点が必要か、さらには「みるスポーツ」の新たな楽しみ方についてもお話しいただきました。

統計学者
鳥越 規央 氏

主なポイント

1. セイバーメトリクスについて

① アメリカのビル・ジェームズが提唱者。

② データを統計学的見地から用いて野球を客観的に分析し、選手の評価や用いるべき戦略を導き出す。

③ 統計学的根拠に基づき「送りバントや盗塁、ヒットエンドランは効果なし」「単純なエラー数だけを評価対象としない」といった結論を導き出したが、従来のセオリーを覆したため、提唱当初は多方面から批判された。

④ MLBではオークランド・アスレティックスのGMビリー・ビーンがセイバーメトリクスによるスター選手に依存しないチーム編成でも結果を残したことで、脚光を浴び、普及のきっかけとなった。

2. セイバーメトリクスで用いられる指標について

① 「ピタゴリアン期待値」:ビル・ジェームスが提案したチームの勝率を得失点のみで予測できる公式。得点の2乗を得点の2乗と失点の2乗の和で割ると,実際のチームの勝率に近い値となることが判明。セイバーメトリクスの基本となる公式。

② 「RC27」:1番から9番までを同一選手が打席に入ったと仮定したときの、1試合あたりに期待できる得点。2013年シーズンでは、バレンティン(ヤクルト)が最高(12.06)。歴代最高は1974年シーズンの王貞治(14.98)

③ 「FIP」:投手の評価に用いる指標。投手の奪三振、与四死球、被本塁打の記録から「明らかに投手の責任によってもたらされた失点」を導き出し、投手自身の評価に用いる。2013年シーズンでは、マシソン(巨人)が最高(2.01)。シーズン24勝の田中将大(楽天)は2.26で先発投手の中で最高。

④ 「WAR」:選手の市場価値を算出する指標。それぞれのポジションの控え選手を基準として、各選手の活躍に応じてチームの勝利を分割して導き出す。2013年シーズンのMLBにおいて、ダルビッシュ(テキサスレンジャース)のWARは5.0。つまりダルビッシュはレンジャースに5勝分上乗せする活躍をしたと見なされる。

3. セイバーメトリクスの効用

客観的なデータ分析に基づくセイバーメトリクスの手法を用いることにより、経営陣、指導者、選手が同じベクトルに向かう戦略、育成方針を立てやすくなる。チーム全体が同じ方向に向かえることが強いチーム(組織)づくりにつながる。日本でも北海道日本ハムファイターズや東北楽天ゴールデンイーグルスで、セイバーメトリクスによるチーム編成が行われている。また野球にとどまらず、バレーボール、サッカーなど、各スポーツにも統計的手法を用いたチーム分析や試合の解析が浸透し始めている。

4. スポーツの新たな魅力を掘り起こすセイバーメトリクス

客観的なデータ分析に基づいて、選手やチームを評価することは「みるスポーツ」にも新たな視点を加える可能性がある。目に見える数字だけで評価するのではなく、「選手の行動がチームの勝利にどれだけ貢献したか」や「他選手のエラー等に影響されないその選手自身の純粋なパフォーマンスはどうだったか」などに着眼してスポーツが観戦できるようになれば、そのスポーツの魅力をより深く味わえるようになる。セイバーメトリクスは「みるスポーツの進化」にも貢献する可能性をもつ。

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