本文へスキップします。

開催報告

2014年度開催報告

第9回 3月20日(金)19:00~20:00開催

特別編 ~SSF研究報告会~

3月20日、今年度最後となる第9回スポーツアカデミーが行われました。
今回は、初の試みとして笹川スポーツ財団研究員4名による研究報告会の形式をとり、各々が主担当テーマにおける直近の研究調査結果を報告いたしました。

<主なポイント>

1. 藤原直幸「わが国のスポーツ政策の現状」

藤原 直幸

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

(1)2008~2015年の国のスポーツ政策、法案の変遷について

  • 自由民主党のスポーツ立国調査会による提言「『スポーツ立国』ニッポンを目指して」(2008年6月)から「スポーツ基本法」の成立(2011年6月)、「スポーツ基本計画」の策定(2012年3月)までの流れ、および2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定(2013年9月)を経て、今秋に予定される「スポーツ庁」の設置までのスポーツ政策の変遷をレビュー。

  • 今回は「スポーツ基本計画」に示された7つの重要施策(柱)のうち、最初の3施策について検証する。

(2)第1の柱:学校と地域における子どものスポーツ機会の充実

  • 施策目標として「子どもの体力が今後10年以内で1985年頃の水準を上回る」ことなどを掲げている。

  • 文部科学省(文科省)の調査によれば、9歳男女の「50m走」「立ち幅とび」「ソフトボール投げ」の平均記録は1985年の値と比べると軒並み下がっている。ただし、これはすべての子どもたちの記録の「平均値」を比べたものである。たとえば、「運動能力の高い子どものグループ」同士の記録を1985年と2013年とで比べた場合、2013年の子どもたちの記録が1985年のそれを上回っていても、2013年の「運動能力の低い子どものグループ」の記録が1985年のそれを下回っていれば、全体としては2013年の子どもたちの記録が1985年のそれを下回ることは考えられる。「現代の子どもたちの運動能力は昔の子どもたちより低い」という見方はあくまで平均値を比較した結果であり、その裏にあるかもしれない二極化の問題などはデータの中身をきちんと分析しなければ見えてこない。国、自治体等の施策を検証する際に留意すべき点である。

(3)第2の柱:(若者、高齢者を問わず)ライフステージに応じたスポーツ活動の推進

  • 施策目標として「成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)」「成人の週3回以上のスポーツ実施率が3人に1人(30%程度)」を掲げている。

  • このように、スポーツ基本計画では「週○回以上」との目標を掲げているが、同計画を策定した文科省の「体力・スポーツに関する世論調査」の設問では「週○日以上」運動・スポーツを実施したかを回答者に問うている。この場合、1日に運動・スポーツを複数回実施した者でも、回答は「週1日」となり、同計画の施策目標(週○回以上)の達成度を評価する際、同調査では正確な実態が反映されないおそれがある。施策の達成度を評価する際に重要な視点といえる。

(4)第3の柱:住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備

  • 施策目標として「各市区町村に少なくとも1つは総合型地域スポーツクラブが育成(される)」「『拠点クラブ』 を広域市町村圏 (全国300箇所程度) を目安に育成(する)」が掲げられている。

  • 文科省の資料より「拠点クラブおよび関係事業予算の推移(2011~2015)」をデータで示した。2012年度をもって「総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)」の育成に対する国費による支援は終了した。その後、文科省は「スポーツコミュニティの形成促進事業」「地域スポーツとトップスポーツの好循環推進プロジェクト」を実施し、「拠点クラブ300箇所程度」の育成に予算を割いているが、2014年度からその額は大幅に減少しており、今後、施策目標の見直しが予想される。

(5)まとめ

スポーツ政策の検証にあたっては、掲げられた目標をデータに基づいて分析することが重要である。スポーツ分野における民間のシンクタンクとして、今後も客観性を保ちながら国や自治体の施策を検証していきたい。

2. 山田大輔「スポーツライフ・データ2014 2020年東京オリンピック・パラリンピック関連調査結果」

山田 大輔

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

(1)笹川スポーツ財団「スポーツライフ・データ」の概要について

  • 「スポーツライフに関する調査」の調査報告書として

  • 国民の「する・みる・ささえる」スポーツの現状把握を1992年から隔年で実施

  • 2014年度版では初の試みとして、2020年東京オリンピック・パラリンピック(東京2020オリ・パラ)に関する調査項目を追加

(2)東京2020オリ・パラに関する調査結果の報告

  • 「みる」視点:直接観戦希望率の調査結果

    【全体】

    オリンピックを競技場で直接観戦したいと回答した人:39.0%
    パラリンピックを競技場で直接観戦したいと回答した人:18.4%

    【性別】

    オリンピック:男性41.3%、女性36.8%
    パラリンピック:男性19.6%、女性17.3%

    いずれも、やや男性の方が女性よりも高い。
    その他、【年代別】、【(回答者の)運動・スポーツ実施レベル別】でも調査。
    また、東京2020オリ・パラを直接観戦したいという人に「どの種目を」観たいか聞いたところ、全体では「サッカー(オリンピック)」、「車椅子バスケットボール(パラリンピック)」が1位となった。

  • 「みる」視点のまとめ

    2020年までの5年間で、大会の機運を「全国規模」でどのように上げていくのか?
    チケットの販売方法や価格設定などに関するマーケティング方策をいかに立てていくか?の検討が今後の課題といえる。

  • 「ささえる」視点:ボランティアの実施希望率の調査結果

    【全体】

    オリンピックでボランティアを実施したいと回答した人:10.8%
    パラリンピックでボランティアを実施したいと回答した人:8.8%

    【性別】

    オリンピック:男性9.9%、女性11.6%
    パラリンピック:男性8.3%、女性9.3%

    いずれも、女性の方が男性よりも高く、「直接観戦希望率」の結果と逆になった。
    その他、【年代別】、【(回答者の)運動・スポーツ実施レベル別】でも調査。ボランティアの希望活動内容についても調査した。年代別の調査結果では、20歳代、30歳代のボランティア実施希望率が、オリンピックとパラリンピックで若干開きがあった。この点も含め、着目すべきポイント何点かについては、今後、詳細な分析を進めていきたい。

  • 「ささえる」視点のまとめ

    年代や性別などにより、ボランティアの実施希望率や希望する活動内容に違いがみられた。今後、ボランティアの育成を進めるにあたっては、そうしたニーズの多様性も踏まえたアプローチの検討が必要と思われる。

(3)まとめ:東京オリンピック・パラリンピックに対する期待

東京2020オリ・パラを契機として、どのような「社会の変化」を期待しているかについても調査した。「とても期待する」「やや期待する」と回答した人の割合では、「障害のある人のスポーツ機会や環境が充実する」が最も多く82.3%となった。パラリンピックを通じた、障害者スポーツの普及・振興への期待の高さがうかがえる。
一方で、「スポーツを通じて住民が地域づくりへ参加する機会が増える」(59.1%)、「東日本大震災の被災地の復興支援が加速する」(58.4%)への期待は相対的に低い値を示しており、今後の動向を注視したい。
最後に、日本地図を用いて、東京2020オリ・パラの「直接観戦希望率」「ボランティア実施希望率」を地域別に示した。東京2020オリ・パラへの「地域別の期待度」との見方もできる。大会開催を、いかに日本全体のスポーツの振興・推進につないでいけるかが今後の重要課題のひとつとなる。

3. 武長理栄「全国調査からわかる子どもの運動・スポーツの現状と課題」

武長 理栄

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

(1)はじめに

子どもの運動・スポーツの現状について、国の調査結果、SSFの調査結果に基づき報告。

(2)国の調査にみる現状と課題

  • 文部科学省「体力・運動能力調査」(1985~2012)をもととしたグラフで説明。1985年からの比較が可能な「50m走」「立ち幅とび」「ソフトボール投げ」でみると、全体として低下傾向にある。とくに「ボールを投げる」運動の低下が顕著。

  • 文部科学省「平成26年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(2014)の中学2年生の男女に関する調査結果をみると、女子の2割強が1週間に60分未満しか運動をしていないことがわかった。「する子」と「しない子」の二極化がみてとれる。
    1週間の総運動時間が60分未満の子の7割が運動時間0分という結果。

  • 平成25年度の体力・運動能力調査の結果によると、未就学である6歳の時点ですでに運動・スポーツを日常的にする子、しない子で体力合計点に差がみられた。

(3)SSFの調査「子ども/青少年のスポーツライフ・データ2013」

  • 青少年(10代)の調査は2001年より、子ども(4~9歳)の調査は2009年より開始

  • 性別にみると、4~9歳では、運動・スポーツの実施頻度群の割合に大きな性差はみられない。10代に入ると、男子に比べて女子の高頻度群の割合が低くなる。一方で非実施群が男子8.3%に対し、女子は18.1%と2倍以上となる。

  • 小学1年生~高校3年生の過去1年間に「よく行った」運動・スポーツを調査した結果、男子ではいずれの学年においても「サッカー」が共通して人気の種目である一方、女子にはサッカーに該当するような人気種目は見当たらない。

  • 10代のスポーツクラブ・運動部への加入率をみると、何らかのスポーツクラブ・運動部に加入している者の半数が運動部活動に加入している。男女別にみると、男子の半数、女子の6割が部活動に加入している。学校期別にみると、学校期が上がるにつれ、加入率は減少する。

  • 「みる」スポーツの現状として、10代の直接スポーツ観戦率(過去1年間に1度でも直接観戦した)をみると、種目別では1位「プロ野球(NPB)」13.7%、2位「高校野球」7.9%、3位「Jリーグ(J1、J2)」6.5%と続く。2019年に日本でワールドカップが開催される予定の「ラグビー」は0.5%であった。

  • 「ささえる」スポーツの現状として、10代のスポーツボランティア実施率(過去1年間に1回以上実施)をみると、2005~2013年の過去8年間12~3%で推移し、変化がみられない。

(4)「子ども/青少年のスポーツライフ・データ2013」のまとめ

青少年の「する・みる・ささえる」スポーツの現状を視覚的にまとめた。「する・みる・ささえる」すべてを行っている者は7.1%であった。注視すべきは、スポーツを「する」ことも「みる」ことも「ささえる」こともしない者が10.3%いるという点であり、スポーツにまったくかかわらない青少年が、する・みる・ささえるのいずれかに関わっていけるような取り組みが必要である。

(5)まとめ

すべての子どもたちが、性別、運動能力の高低、障害の有無にかかわらず、生涯を通じて豊かなスポーツライフを過ごせるような環境の形成が理想。そのためには、「する」スポーツのみに着目せず、「みる」「ささえる」というスポーツの楽しみ方を経験できる機会も合わせて充実させることが必要である。

4.小淵和也「障害者のスポーツ実施状況」

小淵 和也

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

(1)直近の障害者スポーツを取り巻く現状

  • スポーツ基本法の成立(2011年)→障害者スポーツの推進について言及

  • 2020東京オリ・パラの開催決定

  • 障害者スポーツの管轄が厚生労働省から文部科学省に移管(2014年度より)

(2)「競技スポーツ」の視点

  • オリンピックとパラリンピックの最大の差異は、「選手に障害があること」「選手が補装具を使用できること」「クラス分け、持ち点制度があること」の3点

  • 制度上、「障害程度(等級)」「クラス分け」では両下腿切断より片下腿切断のほうが障害は軽度とされるが、現在、陸上の100m走の世界記録は両下腿切断障害者のほうが片下腿切断障害者の記録より速い。こうした現象が起こるのも障害者スポーツの魅力のひとつ。

(3)「生涯スポーツ」の視点

  • 障害者を取り巻く環境について、本人や保護者を中心に、障害福祉関係者、スポーツに関する行政・団体・施設、および障害者スポーツに関する行政・団体・施設を同心円に配置して図にまとめた。障害者がスポーツを行うにあたっては、多様なプレーヤーが関係することがわかる。

  • 笹川スポーツ財団の取り組み

    文部科学省受託調査
    『健常者と障害者のスポーツ・レクリエーション活動連携推進事業(地域における障害者のスポーツ・レクリエーション活動に関する調査研究)』(2012~2014年度)について

  • 3年にわたり、「行政」「スポーツ関係者」「障害者スポーツ関係者」「福祉関係者」の4つの視点で、団体、組織、施設等、さまざまな対象に対して調査を行った。

(4)障害児・者のスポーツライフに関する調査のまとめ

  • 障害のある成人の週1回以上のスポーツ実施率は18.2%(成人全体の週1回以上のスポーツ実施率47.5%と比較すると非常に低い)

  • 障害者がスポーツを「しない」理由は「体力がない(26.7%)」「金銭的な余裕がない(25.9%)」「時間がない(14.5%)」など

  • 一方、スポーツをしない理由を「特にない」とした回答者が33.1%。そもそもスポーツに関心がない、あるいはスポーツは出来ないと思いこんでいる可能性のある障害者が約3割存在する。

  • 実施種目では、「水泳」の実施率がすべての障害種で高い。障害者にとって水泳は親和性が高いスポーツといえる。

(5)特別支援学校のスポーツ環境に関する調査のまとめ

  • 全国1,211校(2012年度)の特別支援学校を対象に、「体育の授業以外の活動」「部活動やクラブ活動の状況」「学校体育施設の開放状況」などについて調査をおこなった。

  • 約6割の学校が運動部活動やクラブ活動を行っていることがわかった。ただ、障害種別にみると、ばらつきがある。

  • それら運動部活動・クラブ活動で行っている活動内容をみると、全体では「陸上競技」「サッカー」の実施率が高いものの、障害種別にみると、それぞれの特徴に応じた種目が上位を占める。

  • 「指導者・サポートスタッフ」は、すべての学校で教職員が務める(100%)。一方、外部指導者等に指導を委託する学校も1割程度存在する。

  • 運動・スポーツ活動のための「施設」の開放状況では、「体育館」が約6割、「グラウンド」が約5割、「プール(屋外)」が約3割であった。開放された施設で行われている活動でもっとも多かったのが、「地域の健常者からなるスポーツの同好会・サークルの定期的な活動」で約5割を占めた。次に多かったのが「卒業生を中心とした」スポーツ団体による定期的な活動で約3割。

  • 一方、「障害者と健常者がともに活動をすることを目的とした地域スポーツクラブ等」による活動は約5%しかなかった。

総括

澁谷茂樹

研究員による報告の後、フロアからは主に調査手法や、調査結果に対する研究員の見解に関する質問が何点か寄せられた。

質疑のあと、SSFスポーツ政策研究所主任研究員の澁谷茂樹が「誰もがスポーツを楽しめる社会(スポーツ・フォー・エブリワン社会)の実現をミッションとして、本日ご紹介した調査以外にも複数の調査・研究を手がけている。大事なのは、それらの結果を研究活動はもとよりスポーツ振興につながる多様な活動に活用いただくこと。また、SSFに取り組んでほしい研究テーマや、ともに取り組みたい研究活動などへの提案も随時募集している。今後も引き続きSSFの活動にご注目いただけるようさまざまな機会、チャネルを通じて情報を発信していく。」と総括コメントを述べ、会を終了した。

ページの先頭に戻る