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開催報告

2014年度開催報告

第8回 1月28日(水)19:00~20:00開催

アジェンダ2020を読み解く

1月28日、第8回スポーツアカデミーが行われました。
今回は、スポーツ白書2014のトピックスで「アジェンダ2020を読み解く」をご執筆いただいた産経新聞社 特別記者 兼 論説委員の佐野慎輔様にご講義いただきました。

【当日の概要報告】

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

<主な講義内容>

1. アジェンダ2020作成の背景

佐野 慎輔 氏
(産経新聞社特別記者 兼 論説委員)

2022年の冬季オリンピックの立候補都市は北京とアルマトイの2都市だけ。当初はオスロ、ストックホルム、ミュンヘン、クラクフも立候補を計画していたが、財政的理由、住民投票で否決されるなどして立候補を断念。IOCは「オリンピックは変わらなくてはいけない」という大きな危機感を抱いた。こうした経緯があり、IOCは2014年12月に開かれた総会で改革プランであるアジェンダ2020を発表した。

IOCは2001年にもアジェンダ2001を発表しているが、このときも98年に開催決定したソルトレイクシティ(2002年開催)の招致に関し、接待や供応といったオリンピックの屋台骨を揺るがすスキャンダルが発生したことが、対応策としてのアジェンダ2001を生んだ。

2. アジェンダ2020の特徴

(1)オリンピック競技大会のプログラム枠組み設定

① 実施競技数「28」(夏季大会)→ 実施種目数「310」 参加選手数「1万500人以下」

これまでオリンピックの実施競技数は夏季大会28、冬季大会10と上限が決められていた。これを変更し、競技数ではなく種目数に着目し、夏季大会310、冬季大会100とした。参加選手数は夏季大会が1万500人以下、コーチ役員5000人以下、冬季大会が選手2900人以下、コーチ役員2000人以下とした。これにより、開催都市の提案に応じて、種目数を増やせる可能性が生まれた。またIOCは総会後の記者会見で「開催都市に能力さえあれば、参加人数を規定より増やしても構わない」との見解も示している。

一方でこれは単純な種目数の増加ではなく、たとえば野球やソフトボールを入れたら、水泳などの種目数を減らすなど、相当な「足し引き」が必要になると思われる。また大会の肥大化、東京やニューヨークのような財政的に恵まれた大きな都市でなければオリンピックを開催できなくなる、という懸念も生まれた。

② 野球・ソフトボールは復活できるか

野球・ソフトボールは、1チーム20人で仮に8チーム参加するとなると、合わせて選手数は320人で、人数的には調整可能だと思われる。IOCは開催国の人気競技を入れることで、関心の高まり、入場者数の増加、スポンサーの獲得などの好影響を期待しており、復活の可能性は高いと考えられる。

ただし野球・ソフトボールは欧州での人気が低く、試合時間が長いことから、7回制、タイブレーク制の導入などを求められる可能性を否定できない。また、アジェンダにも示されている(プロスポーツリーグとの関係構築)ように、MLBの参加を求められる可能性もある。MLBはオリンピック開催期間がシーズン真っ盛りであり、オリンピックへの協力に消極的である。

③ IOCは「GiveとTake」を重んじる

競技数の調整は開催都市組織委員会に委ねられているものの、野球・ソフトボールを「Give」する代わりにスカッシュや空手などを「Take」することをIOCから求められる可能性がある。

1998年の長野五輪で、日本は希望していたカーリングの採用を認められたが、代わりにスノーボードの採用を求められた。念頭になかった日本は慌ててスノーボード会場を設営したという出来事があった。

(2)立候補都市に最適な開催計画を助言する招致プロセスへの変革

① 複数都市での大会開催容認のもつ影響 その1

複数都市での開催が容認され、場合によっては国をまたいでも構わないことになった。2018年の平昌大会(韓国)で、後利用が難しく、維持コストも高いボブスレー・リュージュ競技の専用施設を自国で用意せず、長野の「スパイラル」を使って開催する、というアイデアは、この改革に基づく(平昌はボブスレー・リュージュ会場を自国に建設すると表明)。

2022年の冬季五輪に立候補を表明している北京も近隣の市でスキー競技を開催する予定。立候補を検討していたポーランドのクラクフはザコパネでも開催するほか、隣国のスロバキアをスキー会場にするというプランだった。2026年大会の招致を検討している札幌では、早くもボブスレー・リュージュ競技を長野で開催するという話さえ出ている。

仮設施設利用の推進、世界各国でプレゼンをする招致役員6人の渡航費負担など、開催都市側の負担を軽減し、立候補しやすくする、というのが改革の大きな狙いとなっている。

② 複数都市での大会開催容認のもつ影響 その2:TOKYO2020への影響

東京大会は半径8キロ以内にすべての施設を収める「コンパクト開催」を掲げて招致に成功したが、複数都市での開催が容認され「コンパクト開催」の前提は緩和されることとなった。コスト面での削減が可能になるほか、予選などの競技会場を東日本大震災の被災地に分散させることで、復興の進捗状況を世界に発信することが可能になる。

(3)IOC委員の年令制限見直し

IOC委員(定員115人)の定年が70歳から74歳に引き上げられた。日本のIOC委員は現在、竹田恒和JOC会長のみだが、今回の定年延長により2020東京大会は同会長の任期期間中に迎えられる。

一方、竹田会長の後継候補を探すことが、今後の日本の課題。かつては猪谷千春氏、岡野俊一郎氏の2氏がIOC委員を長期にわたって務める時代があった。今ではIF(国際競技連盟)の会長を務める日本人もおらず、スポーツの国際社会で活躍できる人材の育成が急がれる。

(4)「オリンピック・チャンネル」の設置

IOCは若者にオリンピックをアピールするための専用チャンネル(インターネット放送)を積極的に推し進める。既存のメディアでは比較的メジャーな競技のみが扱われていることへの対策であり、多様な競技への関心が喚起されることが期待される。

課題は当然のことながら、既存のテレビ局との関係。IOCの最大の財源はテレビ放映権料であり、この点の調整は重要課題のひとつとなる。

(5)オリンピック・ブランドの非営利目的利用の範囲拡大ほか

昨年12月のIOC総会では14の分科会に分かれ、40の項目についてわずか1日で審議し結論を出した。やや拙速という感は否めず、委員の多くが「総論は賛成、各論はこれからの議論」との思いを抱いているのが現状だ。アンチドーピング対策である「クリーンアスリートを守るための基金(2,000万ドル)の活用」、スポンサー関与の強化を図る「オリンピック・ブランドの非営利目的利用の範囲拡大」などの項目は、これから一つひとつの問題に対処していくことになると予想される。

<ディスカッション:主なやりとり>

フロアとのディスカッション

フロアとのディスカッション

フロア種目数を増やすことができる一方で、初めて減らすこともできる仕組みが導入されたともいえるが、総会での議論はどうだったのか。

講師減る可能性について議論が及んだ形跡はない。ただし「足し引き」はあるので、たとえば水泳の50メートル自由形と50メートル平泳ぎはいるのか、いらないのかという議論が起きる可能性はある。その妥当性を競技団体が示すのか、開催都市の組織委員会が示すのか、などの問題は出てくるだろう。

フロアワールドゲームズ(オリンピック非採用競技種目の国際競技大会)がコンバットゲームズやワールドビーチゲームズなど、さまざまなイベントを始め、IOCとして脅威を感じている部分もあるのではないか。

講師提言の中に「他のスポーツ・イベント主催者との緊密な協力」という項目がある。IOCにはスポーツの総本山として「影響力を強めたい」という思いがある。既存の競技だけでは伸びしろが少ないので、新しい競技、種目を増やしたいという思惑もあるだろう。国際マスターズ協会が、オリンピックの開催から数年以内にその都市でマスターズ大会を開催するのが有効かどうかを検討するという話もある。IOCが主導する形でそのような方向にもっていこうという考えもあるようだ。

フロアオリンピックを7、8月に開催するようになったのは、アメリカのメジャースポーツとの利害関係の調整の結果と聞いたことがあるが、実際はどうなのか。

講師オリンピックが放映権料に大きく依存している限り、8月開催というのは避けられない。アメリカのテレビ局にとって2、8月は鬼門。この時期に有力なコンテンツがほしい。1964年の東京大会は10月で、気候などを考えると本当は2020年も10月が望ましいが難しい。またMLBの選手がオリンピックに出場するには、けがに対する補償など、クリアすべき問題がいろいろとある。

以上

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