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2015年度開催報告

第8回 2016年1月29日(金)19:00~20:00

米国バレーボール協会におけるアスリートの発掘と育成
~競技人口に応じた強化育成策~

2015年度の第8回スポーツアカデミーが2016年1月29日開催されました。
今回は米国バレーボール協会に2008年7月から2015年5月まで在職された内藤拓也氏にご講義いただきました。

【当日の概要報告】

内藤 拓也氏
(元米国バレーボール協会スペシャル・プロジェクト・コーディネーター)

<主な講義内容>

米国バレーボール協会(USAバレーボール)でスペシャル・プロジェクト・コーディネーターを務めた経験から、同協会における選手発掘と育成の事例を報告する。

1. 米国バレーボールの現状

バレーボールのアメリカ代表は、男子が2015年のワールドカップで優勝を飾り、2016年リオデジャネイロオリンピック(2016リオ大会)の出場権を獲得した。女子は同ワールドカップ3位に終わり、出場権の獲得はならなかったが、1月に開催された大陸予選で五輪出場を決めた。最新のFIVBランキングで現在男子は世界5位、女子は世界1位。フル代表が好調な一方で、ジュニア世代、ユース世代の成績が振るわない点が課題となっている。

2. ハイパフォーマンスプロジェクト

同プロジェクトは、選手の発掘、育成を目的としたプロジェクトで、トライアウト(選抜)、ハイパフォーマンスプログラム(HPプログラム=練習)、ハイパフォーマンスチャンピオンシップ(HPチャンピオンシップ=試合)の3つで構成される。全米から才能ある選手を発掘し、国内のエリートレベルを世界のトップレベルに引き上げるプロジェクトである。

(1)トライアウトの内容

体力測定、ポジション別の技術的なドリル、他のポジションとのコンビネーションが伴う複合的なドリル、ゲーム形式のドリルなどを行う。ひとつのコートには、コートコーチと評価コーチがつく。コートコーチが球出しなどをして、評価コーチがレベルを判断したり、スコアをつけたりする。中高年代女子のトライアウトのほとんどは全米選手権への予選トーナメントの前日に行われるため、コーチはけがをさせないこと、疲労を残さないこと、コーチングをしないこと(所属チームの指導方針とのバッティングを避けるため)の3つを徹底する。トライアウトは全米で実施され(例:2015年の中高年女子は36か所で開催)、それぞれのプログラム内容や評価の仕方はどの会場であっても変わらない。年代はジュニア世代(18、19歳)、ユース世代(16、17歳)、セレクト世代(14、15歳)、フューチャーセレクト世代(13歳以下)の4つに分けて行う。トライアウトを受ける選手は約6,000人。これらの選手を年代ごとに、5つのレベルにランク付けする。また、プレーの映像を送るビデオトライアウトというスタイルもある。トライアウトの費用は1週間前までに申し込むと65ドル(約7,800円)。1週間を切ると90ドル、直前だと110ドルになる。

(2)HPプログラム

トライアウトによってランク付けされた選手が、それぞれの実力に合わせたHPプログラムに参加する。フューチャーセレクトの選手が3泊4日のプログラムに参加すると530ドル(約6万3600円)から655ドル(約7万8600円)かかる。費用には宿泊費、食費、Tシャツ代、ユニフォーム代などが含まれ、交通費は自己負担。セレクト世代で一番上のランク(A1)の選手は10日間のプログラムで1,255ドル(約15万円)かかる。一部優秀な選手に対しては協会が参加費用を全額負担するケースもある。

(3)HPチャンピオンシップ

HPプログラムのあとに4日程度行われる国際大会。海外からもチームが参加し、国際ルールのもと、実戦を通して実力を磨く。アメリカのバレーボールは独自のルールがあり、国際ルールに慣れる目的もある。

(4)ハイパフォーマンスプロジェクトにおける男女の違い

米国バレーボール協会の会員の構成はジュニア女子が全体の78%、成人女子11%、成人男子7%、ジュニア男子4%。約6,000人の受験者のうち、女子は約5,500人で、HPプログラムを受けられる人数が1,200人程度。男子は500人全員がHPプログラムを受けられる。男子の場合は発掘というより育成という意味合いが強い。競技人口が少ないので、普段所属しているチームに実力レベルが同等の選手ばかりがいるとは限らない。その点では、実力別に構成されるHPプログラムに参加することにより、力を磨くことができる。

(5)プロジェクトの成果

2014年の世界選手権で優勝した女子代表チームは、メンバーの100%がHPプログラムの参加者だった。アメリカでは大学に行く際、奨学金をもらって競技を続ける選手が多いが、HPプログラムへの参加は奨学金を受ける際のステイタスになっている。HPプログラムに参加して奨学金を得るということが、選手たちの大きなモチベーションになっている。

<ディスカッション:主なやりとり>

フロア日本の場合だと、代表チームの活躍が人気に直結する。また、プロ選手になれるか、なれないかで、子どもたちの目標も変わってくる。アメリカのバレーボールはどうなのか。

講師アメリカでバレーボールは必ずしも人気の高い競技とはいえないため、たとえば大きな大会であってもテレビ放映を組んでもらうことに苦労する。現在は国際大会を増やしたり、プロリーグの創設を検討したりの努力が続いている。

フロア実施されるプログラムで収支のバランスはとれているのか。

講師収支のバランスはとれている。国際大会は例外として、国内選手権大会などは、大会の登録費、入場料、開催地の自治体からの助成金なども加味して収支バランスをとるよう工夫する。

フロア日本の場合、学生が所属するチームなどは大きな大会のスケジュールを優先して代表チームに選手を派遣したがらない場合も少なくないが、アメリカではどうか。

講師それはアメリカにもある。たとえば女子の大学のシーズンと世界選手権などは時期が重なるため、選手を送ってこない大学もある。

以上

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