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第7回スポーツアカデミーのご報告

スポーツアカデミー2016

第7回 2017年2月28日(火)19:00~20:00

東京2020をエンジョイするためのアクセシビリティを考える~リオパラ現地調査報告~

2016年度第7回目のスポーツアカデミーが2月28日に開催されました。
株式会社ミライロ リサーチ事業部部長の森田啓氏、一般社団法人日本パラリンピアンズ協会理事の田口亜希氏にご講義いただきました。


【当日の概要報告】

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

当日資料1     当日資料2 

株式会社ミライロ リサーチ事業部部長 森田啓氏

<主な講義内容>

ユニバーサルデザインのコンサルティング専門会社ミライロの森田氏、元パラリンピック射撃日本代表の田口氏が、日本財団パラリンピックサポートセンターと協力し、2016年秋に開かれたリオデジャネイロパラリンピック競技大会(2016年リオ大会)を視察。車いすユーザー3人を含む7人で、アクセシビリティの視点から2016年リオ大会の現地調査を行った。今回は調査報告を行うとともに2020年東京パラリンピック競技大会(2020年東京大会)に向けた検討課題についても考えたい。

『誰もが観戦を楽しめる環境とは』(森田啓氏)



1.2016年リオ大会の調査


2016年リオ大会は治安などに不安があったが、大会運営ボランティアをはじめとするスタッフの対応(笑顔、声掛け、ハイタッチなど)が非常に心地よく、陽気な国民性が人的サポートを後押しした。障害のある方との出会いも多く、障害者、健常者という違いを意識する機会が減っていく感覚を覚えた。 以下、「競技会場」「公共交通機関」に分けて、ポジティブ・ネガティブ両面で気が付いた点を順不同で報告したい。

(1)競技会場

  • ▪各競技会場の入場口は、一般の入場口とは別に優先レーンが設けられていた。車いすユーザーをはじめ、足の不自由な人、高齢者、妊婦も利用可。オリンピックパークやグッズ販売店などあらゆる場所に優先レ-ンが設置されていた。
  • ▪観客席には車いす用スペースのほか、補助犬用席、ふくよかな人用の広い席、車いすユーザーと介助者が一緒に観戦できる席も用意されていた。
  • ▪オリンピックパーク内の休憩スペースには、テーブル幅よりベンチ幅が狭いテーブルが置かれ、車いすユーザーとそうでない人が一緒に座れるよう工夫されていた。優れたユニバーサルデザインの一例といえる。
  • ▪車いす席の前の転落防止柵が目線の高さと重なり観戦がしにくかった。
  • ▪案内板や誘導板は、たとえばエレベーターの設置場所が手書きで案内されていたり、点字ブロックが適切に設置されていなかったりというケースが散見された。
  • ▪セキュリティーチェックにおいて、車いすそのものはノーチェックだった。
  • ▪チケットカウンターでは高さの異なるカウンターを用意するなどの配慮がなされていたが、カウンターに設置された窓が黒くて小さく、スタッフの声、表情が読み取りにくかった。とくに聴覚障害者には利用しづらかった。


(2)公共交通機関

  • ▪BRT(バス高速輸送システム)の停車場は構造上、陸橋を通る必要があった。スロープの距離が長く、傾斜角度も急で、車いすユーザーには使いづらかった。
  • ▪バスの中は車いすユーザーの介助者が一緒に座れるようになっていた。
  • ▪BRTの停車場は駅のホームのような形だったが、バスとホームの間が30センチほどあいており危険だった。
  • ▪地下鉄は駅のホームの傾斜(ホームは水はけなどの問題で線路方向に下がっている)が日本よりもかなり急で危険が感じられた。
  • ▪点字ブロックを線路側とホーム中央付近とに二重に設置したり、ホームの線路際にゴム素材を設置してホームと電車の隙間を小さくしたりといった工夫がなされていた。


2.2020年東京大会に向けて


(1)世界で最も高齢化の進む日本

現在、日本の人口の約26%は高齢者。障害者、3歳未満の子どもたちを合わせると3人に1人はユニバーサルデザインを求めている。ユニバーサルデザインの市場規模は2013年の3兆円から、2025年には16兆円になると予想されている。

(2)社会に存在するバリア

ユニバーサルデザインに取り組むにあたり、社会に存在するバリアは主に環境、情報、意識の3分野にわたる。環境の改善、情報の発信のみならず、2020年に向けてはとくに意識の改革が必要。現状は、無関心か過剰かの二極化の傾向がある。まずは障害者の存在に気付くこと。その上で適切なサポートの方法を理解し、行動することが大事。ハードは変えられなくてもハートは変えられる。

一般社団法人日本パラリンピアンズ協会 理事
田口亜希氏

『選手が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境とは』(田口亜希氏)



1.2016年リオ大会の調査


2016年リオ大会に出場した日本人選手、スタッフ計129人にアンケート調査を実施。選手村や競技会場、移動などの便利さを5点満点で評価してもらい、実際の感想も記入してもらった。以下、調査結果の概要を報告する。

(1)選手村


  • ▪過去の直近3大会に比べてエレベーターの数が多くてよかった。
  • ▪ビジネスセンターから選手村に向かう入口に太鼓橋があり、車いすユーザーには不便だった。
  • ▪点字ブロックが細く、途中で途切れている場合もあり、色もグレーで目立たず弱視の方などにはわかりづらかった。
  • ▪エレベーターの種類がさまざまで、ボタンの位置がそれぞれ違うなどしたため、視覚障害者には不便だった。
  • ▪5点満点で平均点は3.0点。障害別にみると手動車いす、脳性麻痺、杖利用の選手からの評価が低かった。なかでも、バスルームなど水回りの評価がおおむね低かった。


(2)競技会場

  • ▪車椅子バスケットボールの競技会場のトイレやシャワーが充実する一方、車いすテニスやゴールボールの会場では数が少ないなど、競技会場によって差が見られた。また、会場によっては手すりのない障害者用トイレがあるなどした。
  • ▪車いすテニスの競技会場は路面が悪く、床に這うコード類による段差も多かった。
  • ▪射撃の競技会場にはエレベーターが1台しかなかった。
  • ▪視覚障害者がボールに入った鈴の音を聞いて競技するゴールボールは静かに観戦する必要があるが、隣接会場の音や場内の歓声で、鈴の音や選手間のコールが聞き取りにくくなり、競技に影響した。
  • ▪電動車いす選手が多いボッチャの会場は、通路が狭く、電動車いすが通りにくかった。


(3)移動

  • ▪バスに乗る際、リフトではなくスロープが設置され、乗降時間が短縮されていた。
  • ▪選手村と競技会場の距離が遠い選手ほどネガティブな意見が多かった。

(4)総合評価

5点満点で平均3.5点。過去の大会への参加回数が多い選手ほど評価が低かった。ボランティア、スタッフの対応に対する評価はおおむね高かった。

2.2020年東京大会に向けて

2020年東京大会のハード面は東京だからきちんと整備してくれるだろう、との意見が多く見られた。一方、リオ大会前のアンケートでは、5人に1人が障害を理由にスポーツ施設の利用を断られたことがあると回答。2020年に向けて誰もがスポーツを楽しむことができる環境の整備が求められる。

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