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トークセッション『ラグビーワールドカップ2019に向けて』登壇者:遠藤利明氏・ 五郎丸歩氏・増田久士氏・増保輝則氏

登壇者 遠藤 利明 氏(衆議院議員、元東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣)
五郎丸 歩氏(ヤマハ発動機ジュビロ)
増田 久士氏(釜石市ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局主幹)
増保 輝則氏(ラグビーワールドカップ2019アンバサダー)
司会 出光ケイ氏
コーディネーター 佐野 慎輔氏(SSF理事/上席特別研究員・産経新聞社 特別記者 兼 論説委員)
日時 2019年2月26日(火)18:00~20:00
会場 東海大学校友会館(東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル35階)

ラグビーワールドカップ2015イングランド大会


ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会 南アフリカ戦

ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会 南アフリカ戦

佐野慎輔氏:以下、佐野氏   ラグビーワールドカップ2015イングランド大会の南アフリカ戦は、日本中を熱狂させ、日本ラグビーの歴史を変えたともいえる試合であったが、それぞれの立場での関わりや感想などをお話しいただきたい。

 
五郎丸歩氏

五郎丸 歩氏

南アフリカの消極的なプレーをみて、「ああ、勝てるな」と思った

五郎丸歩氏:以下、五郎丸氏   南アフリカ戦の最後の場面、PG(ペナルティゴール)で同点を狙うという選択肢は僕らの中ではまったくなかった。南アフリカが後半の最後、ずっと攻めていながらショット(PG)を狙って3点差にした。このとき僕らは「ああ、勝てるな」と実感した。
仙豆*もらった感じ。めちゃくちゃ疲れているけど、南アフリカが仙豆くれて、むちゃくちゃ元気になって、みんな、これはいけるという感覚になった。

*仙豆:漫画「ドラゴンボール」に登場する一粒飲むだけで元気になる豆

 
遠藤利明氏

遠藤 利明氏

PGを狙うべき、五郎丸氏から真相を聞いて感心

遠藤利明氏:以下遠藤氏   南アフリカ戦は日本でテレビ観戦していた。南アフリカ戦の最後の場面は「引き分けでもいい。絶対PGを狙うべきだ」と思った。今、五郎丸さんの話を聞いて、選手の意識がそこまで高かった事に感心した。

 
増田久士氏

増田 久士氏

スタジアムで観戦することができて感動

増田久士氏:以下、増田氏  釜石市はイングランド大会前にワールドカップ日本大会の開催都市に選ばれていて、自治体の公式視察団としてイングランド入りした。過密スケジュールでロンドンの街並みは一度も観ず、試合の開催会場ばかりの日々であったが、伝説となった南アフリカ戦の試合をスタジアムで観戦することができて感動した。

 
増保輝則氏

増保 輝則氏

元日本代表選手として強くなったジャパンに感慨

増保輝則氏:以下、増保氏  日本が南アフリカに勝利したあとの3試合が非常に印象に残っている。スコットランドには負けて、そのあとサモアとアメリカに勝利した。かつての日本代表は挑戦者の立場の試合が多かったが、最後の2試合は日本のほうが格上感と余裕があり、僕の中では落ち着いて見れた。盤石な勝ち方をワールドカップでするというのは、昔から考えれば非常に感慨深かった。強くなった日本代表を見させてもらった。

 

ラグビーワールドカップ2019日本大会

佐野慎輔氏

佐野 慎輔氏

佐野氏  イングランド大会から4年、およそあと200日でラグビーワールドカップ2019日本大会が開幕する。さまざまな方の尽力があり、ワールドカップ招致にこぎつけたわけだが、大会への思いやこれまでの関わりなどについてお話しいただきたい。

森喜朗・元首相の執念でワールドカップを招致

遠藤氏  1999年に(ワールドカップに合わせて開かれた)国会議員のラグビー大会に参加した。これを契機にワールドカップを日本に招致しようという動きが始まったが、2011年大会はまったく相手にされず、招致に失敗した。その後、森喜朗・元首相がIRB(国際ラグビー評議会、現ワールドラグビー)に直談判し、それから少し情勢が変わってきたと思う。森さんはそれぐらい執念を持って今回の日本大会を引っ張ってきた。
スポーツの持つ力はわれわれが思っている以上に強い。今、日本の成長をどうするかという議論の中で、スポーツ産業を現在の年間5兆円から15兆円にしようという話がある。そうした流れの中で、ラグビーワールドカップといったイベントの成功が、単にアスリートやスポーツ関係者だけでなく、日本全体が元気になっていくきっかけにできると考えている。

震災を契機に「ラグビーでチャレンジ」

増田氏  釜石には「鉄と魚とラグビーのまち釜石」というキャッチフレーズがありながら、ワールドカップを日本に誘致するころには、ラグビーの存在が消えかかっていた。2011年の東日本大震災で、町の人たちと一緒に残っていたラグビー選手が、支援物資を運ぶなどして活躍した。彼らは力も強いし、明るいし、「ああ、この町にはラグビーがあったんだね」ということになり、ワールドカップに手を挙げてみよう、チャレンジしてみよう、ということになった。

大会を通じ、ラグビー憲章を浸透させたい

増保氏  アンバサダーとして全国の開催地12カ所を回り、少し前までは各都市が何をしたらいいのか分からない、どうやって盛り上げていったらいいのか分からない、という手探り状態だったが、ここ半年ぐらいでワールドカップ開催の認知度が上がり、各開催都市の住民も認識してだんだん盛り上がってきた。

多大なプレッシャーに立ち向かうジャパンに期待

五郎丸氏  イングランド大会のときは、試合が中3日、日本大会は1週間あいているが、イングランド大会と日本大会を比較することはできないと思っている。イングランド大会で日本代表は自由に生活もできた。これが日本大会となれば、外にも出られないし、メディアの人たちに囲まれ、いろいろ自由が利かない。なおかつ自国開催という大きなプレッシャーがかかる。チームがそれを乗り越えてくれることを信じたい。 震災復興というテーマの中で、釜石の成功がワールドカップの成功につながると思う。ヤマハは震災後の3ヵ月後に釜石で試合をして、試合を見に来てくれた人が大漁旗を振って応援してくれた。今、ヤマハも船を造っている関係で、ヤマハスタジアムでも大漁旗の応援が起きている。これは釜石からいただいた財産だと思っている。

2019日本大会後の方向性やあり方

トークセッション『ラグビーワールドカップ2019に向けて』登壇者:遠藤利明氏・ 五郎丸歩氏・増田久士氏・増保輝則氏

佐野氏 ラグビーワールドカップは全国12会場で試合が行われるが、その中にラグビーのまち・釜石も入っている。震災後は釜石に多くのラグビー関係者が支援にかけつけた。スポーツを通して交流が深まることで、復興への支援につながったのだと思う。スポーツには日本を一つにする力があると思うが、大会後、日本のスポーツはどのように進んでいくべきか。大会後に進むべき方向、期待することは何か。

スポーツ基本法を土台にイベント開催、財源も確保

遠藤氏  2011年以前は国としてスポーツ政策がなかった。スポーツ振興法という法律はあったが、これは、1964年の東京オリンピックのために急ごしらえで作った堅苦しい法律だった。ここではプロスポーツは対象とされていなかった。プロ野球は興行であり、スポーツではないという認識。2011年にスポーツ基本法が制定され、これに基づいてオリンピック・パラリンピック、あるいはラグビーワールドカップなどのイベントを支援しようということになった。今後もいろんなスポーツのイベントを開催し、そのための財源をつくって、競技力も強化をしていく。

勝っても負けても相手を思いやるチームに

五郎丸氏  2015年ワールドカップの南アフリカ戦を終えて、とても反省したことがある。勝ったあとに日本チームは涙を流しながら跳びはねて喜んだ。でも、敗れた南アフリカの選手はわれわれの所に先に来て、ねぎらいの言葉をかけてくれた。われわれは勝負には勝ったかもしれないが、スポーツといった観点でいえば負けていた、という思いがした。日本代表の活躍に勝利は不可欠だが、そういうところも大事にできる代表になっていかなければならない。

釜石をラグビーのふるさとに

増田氏  2015年に開催都市に決まったとき、震災の復興で(津波にのまれた地域の)地面がやっとかさ上げされた状態だった。ただ、建設費も何も付いていなくて、「どうしようか」と言っているときに、ラグビー界の世界的スターのダン・カーターさんが来て、「あなたたちは、1人じゃない」と言ってくれた。五郎丸さんや増保さんも支えてくれた。釜石をこうした人たちがまた帰ってこれるようなラグビーのふるさとにしたい。

「尊重し合う」「たたえ合う」スポーツの価値を残す

増保氏  レガシーという面で、ラグビー憲章を多くの人たちに知ってもらうことも重要だ。ラグビー憲章には「品位」、「情熱」、「規律」、「結束」、「尊重」という五つの言葉がある。ラグビーを知らない方々に、常にこういうことを大事にしながら人生を過ごしてもらいたいという説明をすると、ラグビーが素晴らしい競技であることを認識してもらえる。
ラグビー憲章にある、お互いを尊重し合う、たたえ合う、という文化をワールドカップが終わったあとに、みなさんの心に残るようにしていきたい。このような精神はラグビーの価値であると同時に、スポーツの価値でもあると思う。

ラグビーの魅力・価値とは

トークセッション『ラグビーワールドカップ2019に向けて』登壇者:遠藤利明氏・ 五郎丸歩氏・増田久士氏・増保輝則氏

佐野氏  勝つことも大切だが、それがすべてではないのがラグビーというスポーツ。それぞれの思うラグビーの魅力とはどんなところにあるか?

ルールが分からなくてもゲームをして楽しむ!

遠藤氏  ルールが難しいと言うかもしれないが、まずはゲームをして楽しむこと。私が大学で初めてラグビーを始めたとき、3回目の練習から試合をした。ただし最初はタックルなし。そのうちタックルを入れていく。ルールはやりながら覚えていけばいい。楽しんでルールを覚えていけばラグビーの魅力も分かってくる。

人を思いやる、人を支える

五郎丸氏  人を思いやる、人を支える、これは他競技に比べても、ラグビーが圧倒的に勝っていると思う。できる子ができない子にしっかり指導してあげる。先生がトップダウンで教えると、できる子とできない子は、どうしても出てしまう。その中で自分が指導をするときは、できる子たちができない子たちをどうフォローしていくか、というところを大事にしている。

一緒に水を運べば友だちになれる、それがラグビー

増田氏  ラグビーは関わっている人たちがみんな友達になれる。やっている仲間だけではなく、一緒にマネジメントしたり、一緒に水を運んだり、試合を見たりしただけで友だちになれる。そういう不思議な魅力がラグビーにはある。そういうことを子どもに体験してもらいたい。

仲間との共通体験で人生を学ぶ

増保氏  「人生、ままならないな」ということを、ラグビーを通して学んできた。ラグビーは痛いし、きついし、ほんとにままならない。そういうときに、仲間がいて、助けてもらって、試合で勝って、みんなで喜んだり、悔しい思いをしたり、いろんな共通体験をできた。

今後の日本のスポーツ政策

佐野氏  スポーツによる地方創生が注目されてるが、今回の釜石は一つの大きなモデルになると感じている。今大会にはじまり2020年東京オリンピック・パラリンピック、そしてワールドマスターズゲームズ2021関西と大きなスポーツイベントが続く。これらの大会が未来へつながるレガシーとなるように、政府やスポーツ界がさまざまな施策を検討し、進めていくことが求められている。

小中学校を活用し、スポーツ施設を確保せよ

遠藤氏  現在、日本では子どもの減少、指導者の減少で学校の部活動が成り立たなくなってきている。そこで、学校単位の部活から、地域単位の部活、あるいは地域スポーツクラブと部活を一体化していこうと考えている。
施設が足りないという問題には、全国で3万校ある学校(小学校2万校、中学校1万校)を活用し、「朝7時から夕方4時までは学校が使います。夕方4時から朝7時までは市が責任を持ってスポーツクラブにします」という仕組みにしたい。これができれば3万カ所のグラウンドと体育館とプールが確保できる。

子どもがスポーツのできる場所の確保を

五郎丸氏  2015年のワールドカップを終わって、子どもたちがラグビーをやろうと思ったときに、まずラグビーボールがない。これは大きな問題だと思っていて、この4年間、ラグビーのイベントでは子どもたちにボールを一つずつ家に持って帰ってもらう活動をやってきた。やりたいと思ったときに、道具や場所がないのは非常にもったいない。その受け皿として、小・中学校を開放するというのは一つの大きな手だと思う。

スポーツで地域を活性化する

増田氏  人口の少ない地域がどう成功するのか。すごく難しいが、そういう地域はすごくいい面もあって、自然があって、おいしいものがあるとか、だから釜石に行ってみようと思ってくれる。ラグビーをやっている子どもが、釜石に行ってみようと思ってくれたら、こんなうれしいことはない。釜石の場合はラグビーというスポーツを生かすことができると思う。

日本のスポーツはもっとエンターテイメント化を

増保氏  学校の施設を開放してもらい、地域スポーツクラブチームが入り、いろいろなスクールで教えたり、コーチングをしたりするのもいいと思う。選手のセカンドキャリアと結びつけば素晴らしい政策になる。
もっとスポーツをエンターテインメント化していく必要性を感じている。スポーツでしっかりと利益を得て、それを循環させることが大事。海外に行くと、見る側の人たちが祭りのように試合を楽しんでいる。国際大会を通じて、こういうものを少しずつみんなに分かっていってもらいたいし、そういう形を作っていきたい。

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