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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

ソシオ成岩SC クラブハウス10周年記念シンポジウム 基調講演 / 青島 健太 氏

基調講演の様子1

私はプロ野球選手を引退したあと、オーストラリアで1年弱にわたって日本語の教師をしました。野球とは決別してまったく違う人生を歩むつもりでしたが、現地のスポーツクラブを中心にしたスポーツ環境が、私に新しいスポーツの魅力を教えてくれました。
私が勤めた学校でこんなことがありました。私をプロ野球の選手だと知った子どもたちが職員室に押しかけてきて「ミスターアオシマ、野球を教えろ」と言ってきました。仕方がなく野球を教えました。そして半年くらいたって私が学校を出ることになったとき、先生チームと試合をすることになりました。

町で初めての野球の試合です。我々のチームは15人。全校生徒800人が見守る中、上手な子を9人選んで、あとの6人は「申し訳ない、君たちはあとで出すから」と伝えて、さあいくぞと送り出しました。そうしたら元プロ野球選手が半年教えたにもかかわらず、全員守備についちゃった(笑)。待てと。野球は9人でやるもんだから戻ってこいと言いました。でも全然戻ってこないんです。やる気満々ですよ。最初はイライラしました。でも見ているうちに、ちょっと待てよ、これもアリだなと。ここは日本の高校野球の予選じゃない。そう思って守りから帰ってきた連中に15番まで打順をつけました。今日は打って打って打ちまくるぞ! それいけーと言ったら、先生チームは25人も守ってたんです(笑)。結局15人対25人で最後まで試合をすることになりました。

基調講演の様子2

これは教訓的な場面として強く残っているんです。スポーツを生業にしたら9人対9人以外の野球はなかなかイメージできません。だけど私も子どものころは9人対9人の野球なんてやったことがない。集まった仲間で5人対4人とかでやっていたわけです。どんなスポーツでも原点はそういうものだと思います。
ほかにもオーストラリアではたくさんのスポーツをしました。スカッシュ、ゴルフ、クリケット、ヨット、射撃。あらゆるスポーツをしました。そこにはあらゆる世代がいました。小さい子どもから年配の人まで。ただ見ているだけの人もいました。

オーストラリアでの体験を含めて思うのは、スポーツの面白さとは、私流に言わせてもらえば「はみ出すこと」だと思うんです。この成岩スポーツクラブは子どもにとって最高に楽しいと思いますよ。はみ出せますから。学校の中だけにいたんじゃ味わえないことがたくさんある。そういう日ごろ自分たちのいる場所からはみ出すことがあるかどうかが、スポーツの面白さであり、魅力だと思います。レベルは問わないと思います。いろいろな指導者の方と会えるし、いろいろな世代とも会えるし、いろいろな土地にも行けます。年齢も性別も問わずに、どうやってはみ出す機会を作るのか。それが楽しいんじゃないかなと。

みなさんご自身もはみ出していただいて、子どもたちには自分の世界から大きくはみ出す機会を作っていただくというのが、こういう場所の使命だと思います。みなさん、はみ出しましょう!