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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

ソシオ成岩SC クラブハウス10周年記念シンポジウム パネルディスカッション

成岩モデルを広げるために地域スポーツがすべきことは?

間野
日本ではスポーツを手段としてとらえすぎていないでしょうか。スポーツで教育するとか、スポーツで体力をつけるとか。スポーツ本来の楽しみがあるはずです。本当はいろいろな競技をやってみたいという気持ちも子どもたちにはあるでしょう。
森岡
スポーツそのものに楽しさがあるのはもちろん分かります。ただ、行政的には予算の獲得があるので手段論にならざるを得ない面もあります。例えば、ある程度スポーツを行うことによって国民全体の過剰医療費が下がるとか。そういうアピールをしなければならないという事情があります。
間野
今日覚えてほしい言葉があります。スポーツのインテグリティ(高潔性)です。世界中でサッカーの八百長が横行しています。あるいはドーピングの問題、日本にも暴力の問題がありました。日本の体育は素晴らしいものだけど、制度が疲労しているのも事実です。
渋谷
大学の体育会とサークルのような関係で、本当に強くなりたい人たちが入る部と、がんばって試合には出たいけど、辛い思いをしてまでやりたくないという人たちのためのサークル的なものと2つあるように、選択肢が広がるのが理想だと思います。総合型クラブはサークル的な機能も、部活的な役割も担うことができる。一つの競技しかできないという風潮に風穴をあけることができるのもクラブなのではないでしょうか。
参加者
行政として成岩モデルはなぜ広がらないと考えますか。
森岡
率直にこの成岩モデルは素晴らしいと思いますが、なかなか広まらない理由の一つは、制度を乗り越えるだけの熱意のある人がまだまだ不足しているのかなとは思います。数件ではありますが、ここをモデルにして成功した例もあります。俗っぽい言い方ですが、そういう方々の熱意が、行政上書かれている文言もうまく乗り越えられるのではないかと思います。
間野
広まらないのは榊原孝彦さんが2人いないからでしょうか。
榊原
そうじゃないのですよ。クラブは大勢のソシオに支えられている。そういう人たちがこの町にいるからです。きっとどこの町にもいる。だれかノックする人、背中をちょっと押す人さえいればということだと思います。
渋谷
いまのシステムが10年後、20年後も存続しているのかということに危機感を持ってもらえる人をいかに増やすかを考えてもらいたいと思います。スポーツの指導者が高齢化しているところもたくさんあります。
間野
パネリストのみなさんから最後に一言ずつ頂戴したいと思います。
青島
多くの方が持っているスポーツ体験をみんなに伝える。そういう人がクラブに関われるというのは大きな魅力だと思います。実業団までいかなくても高校までやっていれば十分に教えられる。そういう方を活用していくことにクラブの可能性があると思います。最終的には自分の街が好きになる、故郷ってやっぱりいいよねっていう気持ちが醸成されるのが一番いいことではないでしょうか。町に人を呼び込む。クラブには間違いなくそういう磁力があると思います。
森岡
東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年はまさにターゲットイヤーであり、目標ができました。メダルを獲ることも大切ですが、それだけじゃなく、地域スポーツ、スポーツクラブライフを豊かにすることがメダルを獲るのと同じくらい大切だと思います。スポーツをするだけではなく、スポーツを支えるというところが、日本では豊かであるとまだまだ言えない状況です。これからもスポーツクラブライフを充実させていくよう、今後も取り組んでいきたいと思います。
渋谷
成人を対象にした調査で、スポーツボランティアをやったことがある人は7.8%。ただし、子どものスポーツ大会で同じチームの子を送迎したとか、無意識にボランティアをしている人は2割くらいいました。緩やかにでも関わってくれる人を取り込んでいくのが、地域スポーツの鍵になると思います。
榊原
我々は夢のある町にしか、夢のある子どもは育たないと思っています。このクラブハウスを拠点にして夢を共有するクラブづくりにこれからも取り組んでいきたいと思います。

「ソシオ成岩スポーツクラブ クラブハウス10周年記念シンポジウム」報告