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大気の流れを利用して数百kmを音もなく飛行する、大空が舞台のスポーツ:グライダー

歴史と沿革


複座機(機種名Duo Dscus/翼幅20m)
写真提供:山康博氏

グライダーはエンジンなしで人を乗せて空中を飛行する航空機です。グライダーを使った競技は約100年前、ドイツで発祥しました。最初は丘を下って、数分間、2kmほど飛ぶ程度でした。やがて斜面を吹き上がる上昇風を利用するようになり、機体や飛行方法の改良に伴い、1930年頃、30時間を超える飛行記録が出ました。

さらに同じく1930年頃には、寒冷前線や温暖前線を利用した飛行や、熱上昇風、ウエーブなどの利用法が開発され、200~300kmの飛行が可能になり、人々の関心は飛行時間から飛行距離や獲得高度へと移っていきました。

グライダーの素材は、1970年代までは木製羽布張が主流で、金属製も少し見られましたが、1980年代以降はプラスチックが主流です。空気の流れを精密にコントロールする最適な形状をコンピュータで計算し、表面を滑らかに加工して空気抵抗を減らした機体が造られるようになり、より高速で長距離の飛行が可能になりました。


競技スタート前(第20回日本滑空選手権大会より)  写真提供:吉岡名保恵氏

さらに近年は、衛星写真やインターネットを利用した気象データの普及で気象利用の研究が進み、精緻な予報やシミュレーションが可能となりました。こうした気象データの利用や機体性能の向上、飛行方法の革新などのシナジー効果で滑空スポーツは発展を続けています。

現在、世界の滑空スポーツ人口は20万人と言われています。日本には約60の社会人クラブと約60の大学サークルがあり、約3,000名の愛好者が所属しています。

競技方法

グライダーは航空宇宙スポーツの1つのカテゴリーです。航空宇宙スポーツは現在、スイスのローザンヌに本部のある1905年創設の非営利団体 Fédération Aéronautique Internationale (FAI)が統轄しています。世界100カ国以上が加盟し、各種定義や競技会、記録などを“Sporting Code”として規定し、記録や競技会などの管理を行っています。


競技フィニッシュ風景(第30回世界滑空選手権大会より)  写真提供:赤石京子氏

◆ 滑翔競技
グライダー競技の主流は、無動力で気象現象を利用して長距離飛行を競う滑翔競技です。西ヨーロッパで盛んで、ドイツ、フランス、ポーランドなどが強豪国です。

● 世界選手権
最もプレステージの高い大会で、偶数年に開催される。毎回100機以上が参加する。大会期間は16日以内と定められ、毎朝、気象解析の結果で設定される下記のいずれかのタスクをクリアする形で競技が行われる。1日の最高得点を1000点として得点を割振り、競技開催期間中の累積得点で順位が決まる。競技には下記2タスクがある。

・ レーシングタスク(Racing Task) : 指定された順番に旋回点を周回し出発地に戻る

・ アサインド・エリア・タスク(Assigned Area Task/AAT) : 指定空域を指定された順番に周回して出発地に戻る。指定空域内をどこまで深く飛行するかは選手が選択でき、飛行距離と平均速度の両方が得点となる。

オン・ライン・コンテスト (On Line Contest)
GPSおよびインターネットを利用した競技会。OLC本部に登録(無料)したメンバーが世界のどこかで記録を出した後、24時間以内に本部にGPS記録(電子データ/時刻、緯度経度、高度など)をメールで送信すれば、記録内容が解析され、公開される。多数のグライダーを集めて競技会を開催できる場所が世界的に限られる現在、注目を集めている競技形式。

◆ 曲技
曲技用に設計された専用競技機を使い、一連の規定パターンで構成された課題をいかに正確に美しく飛行するかを競います。採点は有資格の審判団が地上から行い、競技期間中の得点総計でランキングを決めます。伝統的に東欧諸国が盛んで、強豪です。

グライダーの種類

種類 説明
ピュアグライダー
単座機 一人乗り、練習機あるいは競技機
複座機 二人乗り、初歩練習機あるいは野外飛行練習機
モーターグライダー
クルージング 常にエンジンで飛行するタイプ。複座が多く軽飛行機同様の用途
セルフ・ローンチ 離陸できる出力の引込式補助エンジン搭載。単座・複座いずれもあり
サステイナー 1m/s程度で上昇できる出力の引込式補助エンジン搭載。単座・複座いずれもあり、エンジントラブルが少ないメリットがある。

単座競技機(第30回世界滑空選手権大会より)
写真提供:赤石京子氏


単座セルフ・ローンチグライダー(群馬県板倉滑空場にて)
写真提供:甲賀大樹氏

競技/記録のための分類

競技クラス分類 規定 記録分類
オープンクラス 離陸重量850Kg以下、その他制限なし オープンクラス
18mクラス 翼幅18m以下、離陸重量600Kg以下
15mクラス 翼幅15m以下、離陸重量525Kg以下 15mクラス
スタンダードクラス 翼幅15m以下、フラップ無し、離陸重量525Kg以下、エアーブレーキ装着、車輪:直径300mm・幅100mm
ワールドクラス 1994年設計コンペ優勝機PW-5限定、水バラスト禁止、離陸重量300Kg以下 ワールドクラス
ウルトラライト 離陸重量220㎏以下、水バラスト禁止 ウルトラクラス
クラブクラス 古い競技機にハンディキャップを与えて経済的に競技参加する目的、水バラスト禁止 オープンクラス
又は15mクラス
20m複座クラス 翼幅20m以下、離陸重量750Kg以下 オープンクラス

機体

日本には現在、300機ほどのグライダーがあります。日本で使われている主な機体は翼幅13.5~26.5m、全長6~7m、自重190~550kg、ほとんどがプラスチック(FRP)製です。高い強度が必要な部分にはカーボンファイバーが使われており、20年以上の耐久性が実証されています。

速度計、高度計、高感度昇降計などの計器類、GPSを含むフライトコンピュータ、VHF無線機が搭載されています。さらに、高度3,000m以上を飛ぶ場合には、トランスポンダーや酸素装置を搭載します。パイロットはパラシュートを付けて搭乗します。

飛行方法


曳航されて出発する競技機(第30回世界滑空選手権大会より)  写真提供:甲賀大樹氏




飛騨エアパークから曳航され、乗鞍岳に向かうJA505G機  写真提供:阿多隼人氏

一般的に、グライダーはナイロンロープで飛行機に曳航され、高度600mあるいは900mでグライダーパイロットがナイロンロープを外して、以後は自由に飛びます。また、長さ1000m程度のワイヤーロープあるいはプラスチックロープを300馬力程度のエンジンで駆動するドラムで巻き取るウインチで、グライダーを上空に上げる方法もあります。1分程度の曳航で300m程度の高度が取れます。

操縦は右手で操縦かんを持ち、バンク(機体左右の傾き:操縦かんを左右に操作する)と速度(機首上下の傾き:操縦かんを前後に操作する)をコントロールし、両足でヨー(機首方向左右の調節:ペダルを踏んだ方に機首が向く)を操作して、気流が常にグライダーに正対するように操縦します。左手は曳航索の離脱のほか、ダイブブレーキ操作やフラップ操作(フラップ付の場合)、エンジン操作(エンジン付きの場合)などを行います。

法規

グライダーは航空機で、航空法の適用を受けます。各機は国土交通省航空局に登録して航空機登録証明書の交付を受け、固有のナンバーを機体の規定位置に表示します。毎年機体の耐空検査とVHF無線機の検査を受ける必要があります。グライダーを操縦するための資格やフライト・プランの届け出などを含め、航空交通ルールを守って飛行しなければなりません。

滑空スポーツ入門

グライダーは基本的に、両手両足を離しても安定して飛行するように設計されており、操縦自体は難しいものではありません。しかし、自転車や車の運転と飛行とは、地上と空中とで常識が異なる部分があるので、上達の早さや効率を追求するより、飛行中の状況に対応して安全に飛ぶ知識や技量の習得を優先することが大切です。


飛行トレーニング用の複座機
写真提供:甲賀大樹氏

グライダーの操縦練習は14歳以上で、各区域管轄の空港事務所から航空機操縦練習許可証の交付を受ければ可能です。専門の学校はなく、各地の滑空クラブに所属して教えてもらうのが一般的です。複座グライダーの前席に練習生、後席に国家資格の操縦教育証明を有するインストラクターが乗り、飛行しながらカリキュラムに従って少しずつ技術を習得していきます。16歳以上で自家用操縦士の資格を取得し、かつインストラクターに認められれば、一人で自由に飛ぶことができるようになります。

* より詳しい競技説明やルールについては国際航空連盟公式サイト(英文)をご参照ください。

* 日本国内の滑空場、滑空クラブは、こちらから検索できます。

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