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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

図とイラストで学ぶ 新しいスポーツマネジメント

基本フレームから最新情勢まで
演習問題もついた
スポーツマネジメントの教科書

冒頭の「はじめに」で指摘しているように、スポーツマネジメントという言葉は社会に浸透してきているものの、その意味はいまひとつクリアではない。そこで本書は、スポーツマネジメントとは何か、どういったことがスポーツマネジメントの範疇に含まれるのか、またどういった取り組みが具体的になされているのか、ということを系統立てて解説した。いわばスポーツマネジメントの入門書、教科書と言えるだろう。

スポーツマネジメントという言葉にピンとこなくても、オリンピックやサッカーのワールドカップといったメガイベントに興味がある、あるいはスポーツ団体の運営組織で働きたい、または地域の発展にスポーツを何らかの形で生かしたい、と考えている人が世の中にはいる。そういった人に向けて本書は編集されている。

たとえばスポーツイベントやプロスポーツに興味のある人は、第Ⅱ部「グローバルスポーツのマネジメント」を読めばおおまかなことがわかるだろう。プロスポーツのガバナンスについても書かれており、ヨーロッパのフットボールが「解放(National liberation)」、アメリカのスポーツビジネスが「娯楽(National pastime)」であるという説明を読むと、社会背景や文化がスポーツに大きな影響を及ぼすことについて「なるほど」と納得させられる。

本書のタイトルに「新しい」とあえて書かれているように、スポーツマネジメントに関わる最新の情報を網羅しているのもこの本の特徴だ。ソーシャルメディアを通じたスポーツ消費、スポーツボランティア、スポーツツーリズムといったテーマは、10年前ならこのような教科書に載らなかったはずだ。

スポーツツーリズムはスポーツと旅行を融合させた新たな産業で、経済的効果や地域の活性化、環境保全といった観点からも効果があると言われている。国がスポーツGDPを現在の2倍、3倍にしようという方針を打ち出す中で、最も成長が期待されている分野の一つである。

本書ではスポーツツーリズムの概要だけでなく、現場で起きている問題点、今後の課題なども指摘しており、スポーツが今後、社会の中でどのように位置づけられていくかについて、大いに考えさせられる。

入門書的な位置づけである本書は、冒頭から順番に読む必要はない。手元に置き、何か分からないことがあれば該当箇所のページをめくる。より関心がわけば、さらに詳しい書籍を読むなり、講習会に参加するなり、次のステップへ進む。そんな一冊である。

(掲載:2016年12月26日)

著者
山下 秋二、中西 純司、松岡 宏高 編著
編集発行
大修館書店
紹介者
笹川スポーツ財団
定価
2,400円+消費税