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書評・書籍紹介

そろそろ、部活のこれからを話しませんか 未来のための部活講義

 そろそろ部活のこれからを話しませんか

部活動にまつわる諸問題とは
歴史とデータ、現場の声から考える
未来のための部活講義

    柔道部における死亡事故、バスケットボール部の体罰を原因とした自殺、顧問教員の長時間労働…。「ブラック部活」と称される学校の部活動に対し「けしからん!」という声が大きくなる一方で、それに比例するかのように「部活動は必要だ!」という意見も多く耳にする。では、いったい部活動はどうすればいいのだろうか。解決の糸口を見つけられずにいる私たちに、部活動の「これから」を考える一助となるのが本書である。

    大学で部活動を研究している著者は、部活動の理念である「自主性」をマジックワードだと説明する。部活動は生徒も教員も自主的に参加するものだと位置づけられており、確かに「自主性」が重んじられている。現実は必ずしもそうではないのだが、その理念ゆえに部活動は「いいもの」とみなされ、問題点をなかなか解決できず、生徒や顧問教員の“暴走”あるいは教員の労働環境悪化という不幸な結果を招いてしまった。

    なぜ部活動はこのような問題を抱えるようになったのか。本書は部活動の歴史、海外との比較、国の政策など基本的な事実をおさえつつ、地道に学校に通い、フィールドワークで得た現場の生の声にも紙幅を割いた。ここが本書のメインディッシュと言えるのではないだろうか。

    たとえば、顧問の異動により部活動が消滅してしまったケースがある。一方で、顧問がいなくなっても生徒や保護者の働きかけで部が存続したケースもある。一見したところ、部が存続すれば「めでたし、めでたし」と思えるが、保護者や生徒、教員の利害関係が複雑に絡み合い、すべてがハッピーというわけにはいかない。生徒同士の対立が部を空中分解させてしまうこともある。部活動の現場で悪戦苦闘する生徒や教員の声は、読者の心に力強く響くはずだ。

    部活動とは本来、生徒たちが好きなスポーツや文化活動に存分に取り組むことが目的だった。そのために、一般社会であれば手配することが決して簡単ではないグラウンドや体育館、用具がいつでも使えるように用意され、顧問という指導者までついている、理想的なシステムである。

    私たちはまず、こうした恵まれた制度を決して当たり前だとは思わず、多くの人々のサポート、ときに犠牲の上に成り立っているということを理解しなければならない。その上で「楽しむ」という部活動の原点に立ち返ることが、部活動を考える上でのスタートラインなのではないだろうか。ていねいな研究によって集めた部活動の実態を、ユーモアを交えた飽きのこない文章でつづった一冊は、部活動の在り方を考える入門書にも位置付けられるだろう。


  • 著者
    中澤 篤史
    編集発行
    大月書店
  • 定価
    1,800円+消費税

掲載 : 2017年7月 3日

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