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書評・書籍紹介

eスポーツ論

オリンピックの正式種目化に現実味
既存のスポーツもその存在を認める
若者に人気のeスポーツとは

  eスポーツがオリンピック競技になる、と聞いてみなさんはどう感じるだろうか。本書の第1章にあるように「なぜテレビゲームがスポーツなんだ?」と考える人、パソコン上のゲームをスポーツと呼ぶことに違和感を覚える人は少なからずいるだろう。
  決められたルールの枠の中で勝敗を決める競技をスポーツと定義するなら、スポーツは身体を動かすフィジカルスポーツと、将棋や囲碁、ビリヤードやチェスといった主に頭を使うマインドスポーツとに分けられる。この定義に沿えば、eスポーツは紛れもなくマインドスポーツの一つ、ということになる。

  そう説明しても「いやいや、体を動かさないのであればスポーツとは認めない」と断固として譲らない人もいるだろう。そこは解釈の問題ということになるのだが、本書はeスポーツを「スポーツとして認めろ」と論を展開するのではなく、eスポーツの現状と将来性をていねいに説明していく。eスポーツを知らない人であればあるほど、この“スポーツ”の現状と潜在能力に驚くのではないだろうか。
  プロリーグが存在し、億単位の賞金を稼ぐ選手が少なからずいて、海外で開催されている大会には何万人という観客が集まる。トッププロともなれば、集中力を高めるためにフィジカルトレーニングを怠らず、メンタルトレーニングや対戦相手の分析に励み、チームによっては合宿所で寝食をともにする。選手としてのピーク年齢は10代後半から30歳前後……。フィジカルスポーツのトップアスリートで同じである。

  eスポーツが世界で注目を集める理由は、なんといっても若者への訴求力の大きさと言えるだろう。野球を筆頭とする旧来のスポーツが、かつてのような絶大な影響力を若い世代に及ぼさなくなった事実とは対照的なのだ。
  その証拠と言えるだろうか、バスケットボールやサッカーなどのプロスポーツがeスポーツに出資をしたり、eスポーツのチームを買収したり、eスポーツに積極的にかかわっているという。若者の関心を得るために、既存のスポーツがeスポーツに接近しているという事実は興味深い。
  スポンサーにとっても、若者に人気のコンテンツは大いに魅力的だ。eスポーツをサポートしようという企業が今後ますます増えていくのは自然の流れと言えるだろう。

  このような背景を知ると、「(10年後の2028年に)かなりの高確率でオリンピックの正式種目になっているはず」という著者の予言も説得力を持つ。すでにアジア大会では2018年のジャカルタ大会で公開競技として採用され、2022年の杭州大会では正式種目になることが決まっている。
  eスポーツはその内容が暴力的との批判もあり、オリンピックの正式種目化や教育現場への普及にはハードルもあるという。ただし本書を読めば、サブタイトルにもあるように「ゲームが体育競技になる日」は確実に近づいているように感じられる。

  • 著者
    筧 誠一郎
    編集発行
    ゴマブックス
  • 定価
    1,300円+消費税

掲載 : 2018年11月7日

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