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書評・書籍紹介

テレビスポーツデータ年鑑2014

テレビメディアが伝えるスポーツに
正しく希望し、正しく失望するために

日本の人口は「縮小再生産」するように減っていく。これはデータが示す確実な予測である。2060年には働き手が現在の半分になると考えていい。しかし、自分に不都合なことは見ない、見たくない、考えない、考えたくないという傾向がわれわれにはある。それでいいのか?

この本は、昨年2013年にテレビというメディアが「スポーツ」をどのように扱ったかを数字で示した年鑑である。2008年に創刊されているから、これで6冊目。つまり活用方法によっては6年間の時系列変化を追いかけることもできる。これが年鑑の使い勝手のよさである。

さて、では日本のテレビは、スポーツイベントをいかに中継放送しているか。月ごと、種目ごと、中継本数ごとにデータで示す第1章にはじまり、第2章は、2020年東京五輪招致に向けた招致報道量の分析。ここではロンドンオリンピックを契機に東京五輪招致活動にも変化が生じ報道量が急増したことが見て取れる。メディアが果たす役割を考えさせられる。そして第3章では、2013年に誰が最もテレビに登場したか、アスリート30人のランキングである。このランキング第1位については誰もが文句なく、うなずくだろう。楽天の田中将大。MLB/ヤンキースとの契約金150億円以上を獲得したこの男は、テレビ登場総時間でも109時間26分という圧倒的記録を打ち立てている。2位の浅田真央、63時間11分と比較すれば2013年が誰の年だったかをデータが示している。しかし、3位、香川真司の57時間56分。5位の本田圭佑44時間11分、11位の長友佑都30時間16分と見てくれば、昨年度のスポーツ界はサッカーが牽引したのだというトレンドも見えてくる。ランキング30を種目別にみると、その内訳はサッカー(女子を含む)が6人、MLB、水泳、体操、フィギュアスケートが3人、ゴルフ、プロ野球が2人で、後は大相撲、スキージャンプ、卓球、テニス、フェンシング、マラソン、陸上、レスリングがそれぞれ1人となっている。これがデータが示す種目別アスリート人気の現状だ。それではこれを年間でみるとどうなるか。スポーツにはシーズンがある。12ヶ月の横グラフで見ると、一年を通じて安定してテレビに登場するのは、当然のことではあるが大相撲の白鵬であった。なるほど春夏秋冬、四季を通じ広告展開する際のキャラクターは、意外とお相撲さん、力士を起用すればいいのかもしれない、と書評子は考えた。広告プランナーなどには、例えばこうした視点でこの年鑑をめくってもらいたいものだ。第4章は、ずばりCMとスポーツの関係に言及している。テレビCMは、顧客とのグッドウイルを形成する場である。しかし、年鑑のデータを見る限り、テレビCMに登場するアスリートも種目も、それをスポンサードする広告主にも偏りがみられる。もっと幅広い競技種目で、もっと多様なアスリートたちが登場し、もっと多彩なクライアントがスポーツ競技やアスリートを起用してもいいのではないだろうか。例えば、日本で活躍している外国人アスリートや監督、トレーナーなどへのアプローチや、パラリンピックの競技者たちへのまなざしがあれば、テレビというメディアはもっと面白く記憶に残る情報を生み出すことができるに違いない。これはスポーツ界の問題であり、またテレビ業界、広告・スポンサードする企業の問題でもあり、またこれは、おそらくデータを収集し、そこから理解と解釈を引き出していく年鑑出版の側の問題でもあるのだろう。第5章は、スポーツとテレビ報道、第6章試合中継とスポンサーシップ、と章立てられたページをめくりながら、そんなことを考えさせられた。データにも工夫が必要だ。

東京五輪開催まで、残すところ後6年。この東京開催は、それ以降の世界を日本の社会を一変させる契機となることが期待されている。現実を見ているか。見ているはずの現実そのものが変化しているのではないのか。考える枠組みそのものが古いのではないか。われわれは自分に不都合なものも見て、考えて、判断する勇気をもっているのだろうか。切れ切れの現実の断片・データから現実を再構築する力こそが今、求められているのだ。その意味ではこの年鑑も、日本以外の国で行われるスポーツにも目をむけ、この国のスポーツの現状を新しい枠組みで見る目なども提供してほしい。第1章に、二人の執筆者が特別コラムを寄せている。それは、2020年を迎えるために欠かせない視点の一つであった。

  • 著者
    ニホンモニター株式会社
    編集発行
    ニホンモニター株式会社
  • 定価
    20,000円+消費税

掲載 : 2014年 5月7日

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