本文へスキップします。

書評・書籍紹介

オリンピック・レガシー

オリンピックレガシーとは開催を堅機に、
有形・無形の未来へとつながる遺産を意図し、構築していくこと。
東京から二十一世紀の世界を変えよう。

“洗練された知性”。知性に形容詞を冠することが許されるのかどうか。「強靭な知」という表現もあるから、ま、許されるとしたら美しいとか均整のとれた著作であると言いたい。少なくともこの本は、スポーツ政策研究者として練達の人が著した一冊である。評者は“学者の良心”と形容したいウズウズする気持ちをおさえながら読み進んだ。

著者はおそらく2020年の東京招致を縁の下で支えて来たブレーンの一人である。その彼が、いよいよ東京が開催都市に選ばれてから、この決定に対して「自分は何をしなければならないのか」を自らに問い、これまでの調査、研究、学識、経験のすべてをかけて緊急提言された書が、この書である。ノブレス・オブリージュという姿勢を想起する読者も多いことだろう。緊急出版とされているが、提言は実に目配りと気遣いにみちた、それでいて斬新なアイデアにあふれている。オリンピックという壊れやすい卵、戦争やイデオロギー対立やテロや経済危機によって壊れやすい卵を、自分の懐に抱え込むようにして語られる提言のひとつひとつには納得性と説得性がある。よく考え抜かれたさまざまな角度の提言、そのコンセプトはレガシー、未来への遺産である。2020年の東京大会は、東京から地方へ、日本から世界へ、未来を変えていく大会として開催されなければならない。これが著者の確心である。

オリンピックを歴史視座、地域視座、未来視座と鳥瞰した上で、著者はこう書いている。この272頁だけでも読んでいただきたい。「オリンピック競技会は単なるスポーツイベントではないし、エンターテイメントでもない。人類が編み出した四年に一度世界を変える機会である。人類一万年の歴史のなかで、古代オリンピックは1300年間続いたが、近代オリンピックはまだ120年足らずにすぎない。…二十世紀のオリンピックは参加し開催することに意義があった。しかし、二十一世紀のオリンピックは世界の人々が気づき、成長・発展するためのものでなければならない」。

これだけの構想力と情熱をもって2020年を語れる人たちが、日本のスポーツ界にはウヨウヨいるらしい。「オリンピック・レガシー委員会」はその代表例。二十一世紀の日本、世界を変える力は、実はこういうところにあるらしいことも分かる良書である。

  • 著者
    間野 義之
    編集発行
    ポプラ社
  • 定価
    1,700円+消費税

掲載 : 2014年 3月7日

ページの先頭に戻る