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前編後編
豊かなスポーツ環境の実現に向けて、各現場のさらなる意識改革を

澁谷 : スポーツ基本計画の中で特に期待されているポイントや、そこから展開される事業への期待がありましたらお教えください。

友近 : 第一印象は、一昨年のスポーツ立国戦略が目指した内容をよくまとめていただいたなあ、というものでした。重要なのは、計画の中で指摘されている「現状と課題」に対し、どのように取り組んでいくべきかを、改めて考え行動していくことだと思っています。
話が前後しますが、スポーツ団体のガバナンスの部分で、団体の組織運営に関するガイドラインを定め、それに基づいて国庫補助や助成の内容を変えるといった内容が盛り込まれたこと、関連して、国、都道府県、市町村のスポーツ振興予算およびスポーツ振興くじの役割分担と適切な支出のあり方を整理することは特に重要だと思います。
私たちも国のスポーツ予算であれば、ある程度どういう風に使われているのかというのはわかるんですが、例えばどこそこの県や市がどの程度のスポーツ予算をもち、それが県全体の予算の中で何割くらいかなどについては、わからない部分が多いので国からの視点で地方自治、自治体のスポーツ行政についてさらに勉強してみたいと思っています。限られた予算の中で、いかに幸福で豊かな生活を送るかといった目的達成に通じる政策と予算の使い方ということになると思います。

澁谷 : 学校教育とスポーツの問題で言いますと、総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)が学校現場にあまり受け入れられていないという現状が一つあると思います。
その点については、国の文部科学行政の学校教育分野に対し、スポーツ分野から総合型クラブの意義や重要性を伝えていく必要があるとして、基本計画へのパブリックコメントでも提案しました。昨年の7月に我々がまとめた政策提言の中でも、「スポーツを通じて幸福で豊かな生き方」を楽しむ上では、その基盤を形成する学校現場における意識改革が重要と提言させていただきました。総合型クラブに対する学校側の理解や協力の推進が今回の基本計画の中でもう少し強調されるべきではなかったかと思っています。

友近 : たしかに、学校にとっての総合型クラブの存在意義は改めて考えるべき問題ですね。国の方でも総合型クラブの育成については数年前に比べるとややトーンダウンした気がして、実際に指摘もしました。育成数の目標にしても、全市町村に1団体以上といっていますが、各々の自治体の人口や規模を勘案すれば、全てに1団体以上というのは実状に合わないのではないかと。また、総合型クラブと日本がオリンピック以降培ってきたスポーツ少年団などの地域団体との適切な連携づくりは必要だと思っています。
以前、SSFさんのフォーラムに出させていただいたとき、たしかドイツの地域スポーツクラブの話をされていた方がいらっしゃったと記憶しています。

澁谷 : はい。ドイツオリンピックスポーツ連盟に長年ご勤務されていた方で、スポーツ少年団の日独交流を進められた方です。

友近 : たしかスポーツクラブの運営に、行政がどこまで関与するべきなのかといったお話だったと思います。そこのところは日本の、また私自身にとりましても一つの課題なんですね。行政と総合型クラブの関わり方の問題と、日本の総合型クラブとは一体何かという問題への明確な答えが私自身で固まっていないところがあるんです。
ただ一つ、日本の場合は私自身がそうですが、スポーツ経験というとどうしても学校の体育の中、部活動の中で育まれる部分が大きいですから、そこと融合させる仕組みづくりは必要であろうと感じています。それは、SSFさんのスポーツ白書にもありましたが、多くの総合型クラブが学校施設を拠点として使っていると思いますし、そういう所では進みつつあるのかなとは思います。難しいテーマではありますが。

澁谷 : そうですね。実際、総合型クラブの理念を考えれば、学校現場にしてみても、申し分のない制度だと思います。例えば、競技志向から楽しみ志向までみんなが参加できるという点や、住民が自主運営するという点も、ノーという理由がありません。
ですが、その学校現場や地域スポーツの現場で、「今の状況で回っているからいいじゃないか」という人達にも、その理念を浸透させなければなりません。そもそもスポーツというのは住民の自主的な楽しみの場であるとの考えのもと、これまで地域で手弁当でスポーツ指導をしてきた方々などにとってみれば、突然、総合型クラブという制度ができたから、ここでみんなでやりましょうと言われても違和感があると思いますので、丁寧な説明が必要ですね。

友近 : おっしゃるとおりです。

総合型地域スポーツクラブの役割を改めて考える

澁谷 : SSFの調査から推計すると、地域の公共スポーツ施設でスポーツをやっている成人が1千万人います。これは、全成人の約1割にあたります。2000年に日本スポーツクラブ協会が出したデータを見ると、草野球チームやママさんバレーチームなど、全国には35万の地域スポーツクラブがあって、平均すると1団体あたり会員が28人くらいなんです。それを掛け合わせると、ほぼ1千万人になり、うちのデータを裏付ける格好となっています。
そうすると、わずか10分の1の納税者のために広大な学校開放施設や公共スポーツ施設があるという話になり、やはり市町村行政に占めるスポーツ振興予算のあり方として適切かどうか議論になるところだと思います。
スポーツをもっと盛んにしようにも、実はこれくらいの人しか施設を利用できていないとなると、今まで単一種目で限られた世代の仲間だけで楽しんでいた団体やサークルによるスポーツ施設の利用だけでは不十分ということになります。こうした状況を改善し、より多くの住民が施設を利用できるようにするためには、誰でも参加できる公益性の高いクラブが施設を優先的に利用できる仕組みが必要で、それが、総合型クラブだと考えれば、総合型クラブの存在意義はみんなに認められるはずです。

友近 : 大変興味深いお話ですね。総合型クラブを育成するメリットや、なぜ総合型にするのかということの一つの裏付けになる話として聞かせていただきました。

澁谷 : また、近年、国全体としてスポーツ実施率が伸びてきているのは、今、お話していたような施設を使っている人ではなくて、ウォーカーやジョガー、健康のために体操をしている人などが増えていることが主要因となっています。
その状況はそれで歓迎すべきことです。ただ、例えば世代間交流であるとか、青少年の健全育成とか、そういう教育や交流などの付加価値も考えると、より競技性、ゲーム性があるスポーツ種目の振興も検討していかなくてはならないと思います。そして、そこを伸ばしていくためにはどうしたらいいか。そこを伸ばす装置として機能するのがまさに総合型クラブではないでしょうか。

友近 : 今のお話を受けて、少し脱線するかもしれませんが、私の地元で行われている愛媛マラソンについて考えました。
このマラソンは、3年前から市民マラソン化しておりまして、以前に比べると、参加ランナーの数が相当に増えているんですよ。最初に市民マラソン化した3年前が3千数百人で、去年が5千人強、今年の参加者は7千人を超えました。
地元では、皆が愛媛マラソンに登録できたかどうかという話を日常的に話題にするようになりました。私の周りにも最近走り始めた人がたくさんいます。おかげで成人の運動意識がものすごく高まっていて、改めてマラソンの効果に驚いています。
私なんかより運動したことなかったような方が、私よりも断然速いタイムで走ったりするんですよ。マラソンだけは嘘をつかないスポーツだなと思います。
国会でもマラソン議連を作って、ランナーの人たちを応援しようという取り組みを進めています。クラブとかそういう所に属さなくても、家族で歩いたりジョギングしたりする人たちもたくさん見かけます。そうした動きを旅行や観光、先ほどの話で言うところのスポーツコミッションやスポーツツーリズムなどの取り組みに絡めて応援していければと思いますし、多様なスポーツの楽しみ方の推進につながればと思っています。

澁谷 : おっしゃるとおりですね。多様なスポーツを楽しめる社会づくりに向けたあるべき制度や取り組みについて、今後も議論、情報交換させていただければと思います。
本日はどうもありがとうございました。

友近 : こちらこそ、ありがとうございました。

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