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※役職名は対談当時(2012年3月)のもの
前編後編
思いを込めたスポーツ基本法前文

澁谷 : 本日はまず、友近先生をはじめ超党派議員の先生方がスポーツ基本法(以下、基本法)を作っていかれる過程で、そこに盛り込むことにこだわられた部分や、基本法の施行にあたって期待されていることについておうかがいしたいと思います。特に友近先生には、元プロアスリートしての視点もあるかと思いますが、いかがでしょうか。

友近 : 私自身の個人的な思いは、基本法の前文と第2条に全て込められています。スポーツはこれを通じて幸福で豊かな生活を営むことが全ての人々の権利であるという、スポーツ権に関すること。それから、スポーツは肉体的な部分はもちろん、故郷や国に対してのアイデンティティを感じさせるなど、精神的にも充足感を与えてくれるものだということです。私は自身のスポーツ経験を通じて、国境を越えてたくさんの仲間ができましたし、(特に後者は)理念として一番盛り込みたかったことなので、これらを前文に含めることができたのは大きな成果だったのではないかと実感しています。
それからもう一つ、基本法には、「スポーツの発展を支える好循環」として、プロ選手やトップアスリートと一般の方々、それぞれのスポーツ環境の充実が車の両輪であると明記されています。今まで体育の延長で来ていたものが、初めてスポーツとしての第一歩を踏み出せるきっかけになったのではないかと思っています。

澁谷 : 今、プロスポーツのお話が出ましたが、スポーツ振興法は当初はプロスポーツを対象としたものではなかったのが、時代の流れの中でプロスポーツも対象として加筆され、そして今回の基本法の内容につながったという流れですよね。そこに友近先生ならではのこだわりはありましたか?

友近 : 私が国会議員になって初めての質問が、Jリーグの我那覇選手のドーピング問題だったという経緯もあるのですが、スポーツ団体が運営上の透明性や公平さを、自助作用でうまくマネジメントしていけるような体制を作ってもらいたいというのはありましたし、その骨格は盛り込めたのではないかと思っています。
新たなスポーツ基本計画にも、スポーツ団体の組織運営体制のあり方が国庫補助金やスポーツ振興基金・振興くじによる支援に影響を与えるといった内容が盛り込まれました。スポーツ団体の公益法人化も進むなかで、そこには期待したいですね。

澁谷 : 私たち笹川スポーツ財団(以下、SSF)も、中央競技団体が行う強化と普及は両輪であるべきという考えをもっています。
一方で、中央競技団体の現状に関する基礎調査はこれまで十分に実施されてこなかったのではとの思いもあり、現況調査を行っています。もちろん、団体側としては、たんに登録競技者数や予算規模の多寡がその競技の普及レベルだとは理解されたくないわけですから、その点は我々も十分に理解したうえで調査させていただいています。競技によって性質は異なりますから、一概に競技者数や予算規模だけでその競技が普及している・していないと判断するのは不適切です。登録競技者数を調べた調査は他にもありますが、団体の役職員などについても包括的に調べたという点で、画期的な調査ではないかと自負しています。

友近 : 多くの団体が協力してくれていますね。

澁谷 : 驚くほど多くの団体の役職員、つまり個人からご回答いただけました。まず団体に役職員数をうかがい、次に常勤役員や正規雇用者などを対象に競技歴や職歴などを確認いたしました。

友近 : 個人への調査票は団体から渡してもらったんですか。

澁谷 : はい。日本オリンピック委員会、日本体育協会、日本ワールドゲームズ協会に加盟・準加盟している84団体のうち79団体からご回答いただけたので、中央競技団体の全体像は俯瞰できるのではないかと考えています。

友近 : そうですね。私たちも競技団体のガバナンスのあり方を検討する以上、実状について十分に把握する必要があります。

澁谷 : 先ほど、SSFの視点ということで強化と普及は両輪と申し上げましたが、多くの国民がそのスポーツを「する」だけではなく、「みる」「ささえる」というかたちで楽しむことを考えたときには、強化だけでなく普及についても、国が何らかの支援を行うのが望ましいと考えます。諸外国では競技成績に応じた補助金を出す一方で、いわゆる普及事業への取り組みにインセンティブを与えるといった制度もあります。

友近 : 私が野党時代(2009年以前)、よく文部科学省(以下、文科省)のスポーツ・青少年局の方と話していたのは、大まかに言えば国のスポーツ振興予算の多くが国際的な競技力の向上に充てられ、地域スポーツへの支援には主にスポーツ振興くじの助成金が充てられるというすみわけが、果たしていつまでもそれでいいのかという議論です。サッカーくじが安定的な売り上げを維持することは重要ですが、国の姿勢として地域スポーツ振興にもっと注力することが必要ではないか、と。
ただ、このシフトチェンジは言うほど簡単ではなく、今回の基本法策定議論でも難しさを感じました。これは近い将来、スポーツ庁を設置する時が一つの大きな転機になるかと思います。その時は、文科省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省あるいは外務省や環境省など、他の省庁も交えて、スポーツ予算のあり方や国の財源の使い方、スポーツくじ助成との配分の仕方というものを、一度整理する必要があると個人的には思っております。

スポーツ庁設置には国民への丁寧な説明が必要

澁谷 : ちょうど今、スポーツ庁に関してのお話が出ましたが、早い時期にスポーツ庁を作るべきとお考えですか。

友近 : 個人的にはスポーツ庁の設置は、極論すれば総理大臣が明日作るといえば、できることだと思っています。中国の冷凍餃子による被害などを発端として消費者庁が短期間で設置された例もあるように、国民的な関心や世論の高まりがあれば、スポーツ庁は明日にでもできるのではないでしょうか。
大切なことは、スポーツ庁を作ることによって、国民の皆さんにどのようなメリットがあるかといったことをきちんと説明することだと思います。以前、SSFさんのフォーラムでともにパネリストとして登壇したラグビーの中竹さん(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター 中竹竜二氏)の「スポーツ嫌いの人たちを集めてスポーツについて議論しましょう」というお話は、私にとって衝撃的でした。その意見には私も大いに納得できる部分があって、スポーツが嫌いな人たち、スポーツをしない人たちに対して、スポーツの素晴らしさをどう理解してもらうかというところが非常に大きなテーマになると考えています。
ただ、普段スポーツをやっていない人でも、トップスポーツを見たり支えたりというのはありますし、昨年のなでしこジャパンに対する盛り上がりを見ましても、そうしたスポーツの楽しみ方への理解も深まっていると思います。私たちが考えている以上に、国民の皆さんはスポーツの力に期待されているのかもしれません。街頭のアンケートでも、スポーツに関しては非常に好意的な結果が出ます。そこを国がもう一押しする。決してスポーツを政治に利用するのではなくて、後ろから支えていける体制を作って行くべきではないかと思います。

澁谷 : 実際にスポーツ庁、つまり新しく庁を作るとなれば、最近できた消費者庁や観光庁と比べて考えたくなります。行革の流れがある中で作られた点でもお手本になるのではないかと。
消費者庁は権限や財源をある程度集約したタイプ。一方、観光庁は省庁横断的な緩やかな連携の中心に位置づけられた機関といえます。新たな機関の設置を考えた場合、大きくこの2つのパターンがあると思います。最近の「補助金」から「交付金」への流れでみると、例えば、国交省の公園行政とスポーツ施設整備が切り離せない以上、消費者庁的に権限や財源をまとめてスポーツ庁を設置するというのは現状からは難しいと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。
むしろ、スポーツ庁を設置する前に、スポーツに関係する省庁が横断的にさまざまな領域で行っている事業をきちんと連携させて、効率的に実施できる体制を整えることが先で、その最終ゴールに、スポーツ庁設置があるという考え方もあるのではないかと。

友近 : それは全くおっしゃるとおりだと思います。おっしゃられた2つのタイプのどちらが適しているのかに明確な答えはありませんが、省庁間の連携は重要です。
今回のスポーツ基本計画の中にも、例えば観光庁が推進するスポーツツーリズムやそれを進める地域連携、スポーツコミッションに関する内容が盛り込まれました。もう少しわかりやすい例に学校給食があります。学校給食は本来、文科省の所管ですが、その中に農林水産省の地産地消などさまざまな考え方がアドバイスとして入ってきています。仮にスポーツ庁ができた時には、学校教育の一環として行われる体育のカリキュラムに「発育発達レベルに応じたスポーツメニューとしてはこういうものがいいですよ」と文科省に提起するのも一つの役割として考えられると思います。これから私も勉強して、スポーツ庁はどうあるべきかについて研究を深めたいと思っています。

友近 聡朗氏 プロフィール
参議院議員(民主党・愛媛選挙区選出) 民主党スポーツ議員連盟事務局長
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組み、2011年の同法制定に大きく貢献した。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、スポーツを通じた子供たちの育成に取り組んでいる。

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