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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究 2017

POINT 1

多くの母親が、スポーツ活動への関与に「やりがい」を感じている

スポーツ活動をしている子の母親に、実際に母親自身が行っている支援について、どの程度「やりがい」や「負担感」があるのかを尋ねた。「自主練習につきあう」「大会や試合に付き添う」「ルールを勉強する」は約8割が「やりがい」があると回答した。

一方、「負担感」が高いのは「送迎をする」「活動場所の手配や予約」などで、約5割となった。また、会費や大会参加費・合宿費などの費用も3~4割の母親が負担に感じていることも分かった。

POINT 2

子どもがスポーツ活動をしない理由の上位は「保護者の負担」

スポーツの活動をしない理由を子どもの性別・学年別にみると、性別にかかわらず、低学年では保護者の負担が上位にあがり、それぞれ5割以上を占めている。

一方、高学年では保護者の負担を理由にする割合が4割程度に下がるものの、「お子様の年齢ではもう遅いと思うから」「お子様はスポーツを好きではないから」などの割合が低学年に比べて大きく上がっている。

また、保護者の負担に関わる項目について世帯年収別に分析すると、「費用の負担が大きいから」の項目で特に大きな差が見られた。また、「送迎や付き添いの負担が大きいから」「保護者の係りや当番の負担が大きいから」「保護者どうしの人間関係に気を使いそうだから」でも差が見られ、保護者の負担感は家庭の経済状況や保護者の生活の事情などに影響を受けていると考えられる。

研究担当者コメント

今回の調査結果からは、子どもがスポーツ活動をしない理由の一つとして、費用や係・当番に対する保護者の負担感があることが明らかになった。保護者の働き方や経済状況、家族構成など、家族のあり方が多様化するなかで、余裕のない家庭では保護者自身の負担が理由になり、子どものスポーツ活動を諦めている可能性が示唆される。母親個人にできることには限界があり、多様な親子が参加しやすいクラブの運営や、活動の場に関する情報の集約・公開など、スポーツ関係者にできる工夫を検討することが重要だろう。

またグループインタビューからは、熱心にみえる母親たちも、さまざまな葛藤をしながら「ささえる」役割を引き受けている様相も明らかになった。母親たちに当たり前のように課される役割を見直すこと、母親以外の担い手を増やすことは、スポーツ活動に限らず子どもが育つ環境全体の問題でもあり、社会で検討できる課題であると考えられる。この分野については、今後も継続して調査していく。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 宮本幸子

図1 母親のやりがい・負担感(スポーツ活動をしている子)(報告書p.22「図表1-18」)

図1 母親のやりがい・負担感(スポーツ活動をしている子)

注1)「やりがい」は「とてもやりがいを感じている」+「まあやりがいを感じている」の%。 「負担感」は「とても負担に感じている」+「やや負担に感じている」の%。
注2)上から13項目に関しては、別の質問でそれぞれの支援を「よくする」「時々する」と回答した 人を母数にしている。( )内がそれぞれの母数となる。

図2 スポーツ活動をしない理由(性・学年別 ※男子1、6年生を抜粋)

図2 スポーツ活動をしない理由(性・学年別 ※男子1、6年生を抜粋)
1年生(81) 6年生(85)
送迎や付き添いの負担が大きいから 55.6% お子様が習い事をやりたがらないから 56.5%
保護者の係や当番の負担が大きいから 53.1% お子様がやりたい種目ができるクラブや教室がないから 49.4%
通いやすい場所にクラブや教室がないから 51.9% お子様はスポーツが好きではないから 49.4%
お子様が習い事をやりたがらないから 51.9% スポーツ以外の習い事や塾に通っているから 44.7%
通いやすい時間・曜日に活動しているクラブや教室がないから 50.6% 通いやすい時間・曜日に活動しているクラブや教室がないから 43.5%
費用の負担が大きいから 50.6% 通いやすい場所にクラブや教室がないから 43.5%
保護者どうしの人間関係に気を使いそうだから 48.1% 体育の授業や外遊びだけで十分だから 41.2%
お子様がやりたい種目ができるクラブや教室がないから 45.7% 費用の負担が大きいから 40.0%
長続きせずに早くやめてしまいそうだから 42.0% 送迎や付き添いの負担が大きいから 40.0%
仲の良い友達がいるクラブや教室がないから 39.5% 保護者の係や当番の負担が大きいから 37.6%
お子様のレベルに合うクラブや教室がないから 35.8% 学校の授業や課外活動が忙しいから 36.5%
お子様はスポーツが好きではないから 35.8% お子様のレベルに合うクラブや教室がないから 31.8%
体育の授業や外遊びだけで十分だから 30.9% 長続きせずに早くやめてしまいそうだから 31.8%
お子様にはクラブや教室でのスポーツ活動が向いていないと思うから 30.9% 保護者どうしの人間関係に気を使いそうだから 29.4%
お子様の年齢ではまだ早いと思うから 27.2% お子様にはクラブや教室でのスポーツ活動が向いていないと思うから 28.2%
学校の授業や課外活動が忙しいから 25.9% お子様の年齢ではもう遅いと思うから 25.9%
スポーツ以外の習い事や塾に通っているから 23.5% 仲の良い友達がいるクラブや教室がないから 23.5%
お子様の年齢ではもう遅いと思うから 7.4% お子様の年齢ではまだ早いと思うから 7.1%

注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。

図3 スポーツ活動をしない理由(世帯年収別)

世帯年収
400万円未満
(294)
400万円~
600万円未満
(288)
600万円~
800万円未満
(185)
800万円以上
(142)
費用の負担が大きいから 61.6% > 52.4% » 41.1% » 26.8%
送迎や付き添いの負担が
大きいから
61.9% 57.3% > 51.4% » 39.4%
保護者の係や当番の負担が
大きいから
58.5% » 48.3% > 41.1% > 33.1%
保護者どうしの人間関係に
気を使いそうだから
52.0% > 46.9% > 37.3% > 30.3%

注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。 <、>…5ポイント以上の差 «、»…10ポイント以上の差

小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する 調査研究

調査目的
保護者が子どものスポーツ環境を「ささえる」行動の実態や、子どものスポーツ環境やそれを「ささえる」体制に関する保護者の意識を明らかにする。
調査設計
  1. インターネット調査(小学1~6年生の第1子をもつ母親。第1子の属性が各学年男女400名ずつになるように回収した。有効回答数は 2,368名。※小学生の子どもが複数いる場合は、第1子について回答してもらった。)
  2. 母親に対するグループインタビュー
  3. 地域クラブ事例調査
調査項目
  1. 全体への質問
    現在行っているスポーツの種目/子どもの運動能力への期待/満足度/スポーツ環境に対する意見/家庭環境、保護者の属性など
  2. 現在行っている種目がある場合(子どもがスポーツ活動をしている)
    所属する団体の種類/実施頻度/保護者の関与:母親の関与・父親の関与、保護者組織の有無、母親のやりがい・負担感、母親自身の変化
  3. 現在行っている種目がない場合(子どもがスポーツ活動をしていない)
    スポーツ活動をしていない理由/子どもがスポーツ活動する場合の母親の負担感
調査時期
2017年2月(インターネット調査)、同6月(グループインタビュー)
小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究

全文(PDF:3.81MB)

目次
参考資料
発行者
公益財団法人 笹川スポーツ財団

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テーマ

子どものスポーツ

キーワード
年度

2017年度

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