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国際情報

Sport News Brazil

2016年9月13日

2016年リオデジャネイロ大会におけるホストタウン

2016年リオデジャネイロ・オリンピック(2016年リオ・オリンピック)が閉幕(8月21日)し、今後、2020年東京オリンピック・パラリンピック(2020年東京大会)開催に向けた準備が加速していくはずだ。近年のオリンピックにおいては、競技会場は開催都市内の施設だけに限らない。いくつかの競技は開催都市近郊はもとより遠隔地でも行われることが多く、各国選手団の事前合宿が行われる地域はさらに広範囲にわたる。

2020年東京大会における競技会場はほぼすでに決まっており、先般決定された追加種目の競技会場以外は、今後、変更等が起きる可能性は低い。しかし、各国選手団の事前合宿地については、決定しているのはごく一部であり、今後、各地方自治体の取り組みに応じて続々と決まっていくであろう。

本稿では、2016年リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック(2016年リオ大会)ではどのようにして予選試合の競技会場や各国選手団の事前合宿地が選ばれたのか、またそのことがこれらの都市にどのような社会的影響や経済効果を与えたかを検証したい。

2016年リオデジャネイロ・パラリンピック(2016年リオ・パラリンピック)は全競技がリオデジャネイロで行われるが、オリンピックのサッカー競技はリオデジャネイロ以外にもブラジリア、サルバドール、ベロオリゾンテ、サンパウロ、マナウスで行われた。ブラジルの場合、2014FIFAワールドカップブラジル(2014年W杯ブラジル大会)開催のため12都市の12スタジアムが準備され、2014年1月には、2016年リオ・オリンピック組織委員会がサッカー競技の開催地としてリオデジャネイロ、ブラジリア、サルバドール、ベロオリゾンテ、サンパウロの5都市を選んだ。その後、2015年12月に同組織委員会が開催地をひとつ増やすことを決定。マナウス、ナタル、ポルトアレグレの3都市が立候補し、2014年W杯ブラジル大会における成功をアピールしたマナウスが選ばれた。

2016年リオ・オリンピックのサッカー競技のマナウス会場運営に携わったマリオ・ジュンボ・ミランダ・アウフィエーロ・コーディネーターは、「我々の町はリオデジャネイロから3,000km近く離れているが、男子4試合、女子2試合を行ったことで、市民はオリンピックの雰囲気を味わうことができた」と語り、「6試合合計で約18万人の観客を動員し、うち約2万人が外国人だった。8月の市の観光収入は前年度を約10%上回ったし、オリンピック開催都市となったことで国際的な知名度をさらに高めることができた」とその経済効果と意義を強調する。他の開催都市の運営責任者も、マナウスと同様の見解だ。

各国選手団の事前合宿誘致等について、2020年東京大会の場合は日本政府が全国から「ホストタウン」を募集し、その認定を受けた地方自治体が誘致活動を展開している。一方、ブラジルの場合は政府もブラジル・オリンピック委員会もこのような方法は採用しておらず、様々な方法で誘致が行われた。

たとえば、サンパウロのスポーツクラブ「ピニェイロス」は17万㎡という広大な敷地に南米トップレベルの競技施設を保有しており、国際的な知名度も高い。2014年初めに、中国オリンピック委員会から直接、問い合わせを受けて折衝を始め、昨年2月に受け入れ契約を締結。7月22日から8月14日まで、中国選手団の15競技の選手、コーチ、役員ら約400人に練習施設、食事などを提供した(宿泊施設に関しては、中国オリンピック委員会がクラブから近いホテルを独自に手配した)。
クラブ側は、「中国側の費用負担でクラブの施設を改善できたし、会員が世界のトップ選手の練習を見学したり、選手たちと交流することで大きな刺激を受けた」とその効果を強調する。中国オリンピック委員会から受け取った使用料についてクラブ側は明らかにしていないが、地元紙は「推定350万米ドル」(約3億7千万円)と報じている。

やはりサンパウロに本拠を置くスポーツクラブ「エブライカ」の場合は、2016年リオ・オリンピック組織委員会による「外国選手団事前合宿受け入れスポーツ施設」の募集に応じ、同組織委員会を通じて日本およびイスラエルの男女競泳代表チーム、ブラジルの男子バスケットボール代表チームを受け入れた。日本の男子サッカー代表チームと女子体操代表チームが事前合宿を行った北東部セルジッペ州アラカジューの場合は、さらに別の方法で受け入れが決まった。

2014年W杯ブラジル大会前、ギリシャの代表チームがアラカジューでキャンプを張ったのだが、同代表が一次リーグで日本代表と同組だったことから日本代表のチームスタッフが偵察の目的でアラカジューを訪問。その際、アラカジューの気候条件と治安が良好であること、セルジッペ州観光スポーツ省がギリシャ代表チームに提供した練習施設が優れていることを確認しており、2016年リオ・オリンピックの一次リーグの試合地がブラジル北東部と決まると、日本サッカー協会はセルジッペ州観光スポーツ省に事前合宿実施を申し入れた。日本の女子体操代表チームの場合は、ブラジル体操協会の紹介で日本体操協会がセルジッペ州観光スポーツ省と連絡を取り、アラカジューでの事前合宿が決まった。

ブラジルの場合、優れたスポーツ施設を保有しているのは私立のスポーツクラブであることが多く、地方自治体が保有するスポーツ施設を提供したケースは例外的だった。2016年リオ・オリンピックでは、サッカー競技が行われた都市では一定の盛り上がりと経済効果がみられたが、各国選手団の事前合宿に際してはスポーツクラブが施設を提供することが多かったこともあり、クラブ会員以外の市民への波及効果は限定的だった。

2020年東京大会における各国選手団の事前合宿の誘致等を目指す日本の地方自治体は、2016年リオ・オリンピックのケースを参考にしながら、より大きな波及効果を得られる受け入れ方法を模索するべきではないだろうか。

 

レポート執筆者
沢田 啓明

Sports Journalist

Partner Fellow, Sasakawa Sports Foundation

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