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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

ドイツスポーツ便り1

2015.02.13

ドイツスポーツ便り1

「組織化されたスポーツ」という表現がある。頂点にスポーツ統轄団体(Dachorganisation)としてのドイツオリンピックスポーツ連盟(Deutscher Olympischer Sportbund = DOSB)があり、その加盟団体としての62種目別競技団体(オリンピック競技34、非オリンピック競技28)、16州スポーツ連盟、20の特別の課題をもったスポーツ団体(ドイツ大学スポーツ連盟、ドイツ鉄道員スポーツ協会等)からなる。実際のスポーツ活動がおこなわれているスポーツの基盤・底辺となるのは全国にある90,800のスポーツクラブである。このスポーツクラブには2,780万人の市民が会員となっている。これは人口の約1/3にあたる。

DOSBは、1950年にドイツスポーツ連盟(DSB)として設立された。その後の発展過程においては、戦後復興期のスポーツ施設建設計画としての「ゴールデンプラン」、競技スポーツだけでなく、健康のため、楽しみのためのスポーツを普及させる「第2の道」、そして国民全体にスポーツを呼びかけた「トリムムーブメント」などを展開し、多くの市民がスポーツクラブで身体を動かすようになった。その後現在までの組織化されたスポーツの主眼は、スポーツを市民の暮らしの中で「必要不可欠な社会的要素」として位置づけることにあり、今も健康スポーツの普及と競技力の向上それぞれに力を入れている。

2006年、ドイツスポーツ連盟とドイツオリンピック委員会(NOC)が合併した。その背景には競技スポーツの振興を管轄するドイツ政府にスポーツの窓口を一本化すること、またスポーツ・ガバナンスに注がれるパワーをまとめて強化するという狙いがあった。

DOSBとして新たなスタートを切るにあたり、その初代会長にはトーマス・バッハ氏が選ばれた。再選され二期目に入ったバッハ氏は2013年にIOC会長となり、任期1年を残してDOSB会長を辞任した。その後任にはドイツスキー連盟前会長のアルフォンス・ヘアマン(Alfons Hörmann)氏が選ばれた。

2014年12月6日、DOSBの総会で役員の改選が行われた。DOSBの最高役員会の構成は、会長、副会長5名(競技スポーツ担当、生涯スポーツ・スポーツ発展担当、経済・財政担当、教育・オリンピック教育担当、女性・男女共同参画問題担当)、ドイツスポーツユーゲント本部長、選手代表、事務局長、IOCメンバー2名である。4年任期でヘァマン氏が会長に、そして副会長5名が選出され、スポーツユーゲント本部長と選手代表が承認された。

この総会では選挙の他、二つの重要な議題があった。規約の一部改定である。DOSBの議決機関は従来総会と最高役員会であった。規約改定により3番目の議決機関として、常任理事会が設けられた。この常任理事会は事務局の有償の職員である事務局長以下3~5名の部長で構成され、最高役員会により任命される。実務を担当する事務局の責任者に執行部として強い権限があたえられ、最高役員会はDOSBのスポーツ政策の基本的な方針や戦略的な方針の決定と、その実現をコントロールする常任理事会の活動の監査とがその任務となる。ドイツのスポーツの運営は伝統的に名誉職の役員によって行われてきたが、最近はスポーツをプロフェッショナルに運営するということで、スポーツにおける有償の職員が増えている。しかし規定を変えて、有償職員に運営上の大きな権限が与えられたことは画期的であり、ボランティアの役員による運営という伝統的な原則が崩されるという憂慮の声も聞かれた。

もう一つの議題は2024年または2028年オリンピック・パラリンピック夏季大会の誘致を決めたことである。すでにベルリンとハンブルクが手を上げている。この総会に出席したトーマス・デメジエ連邦内務大臣も政府の支援を約束し、どちらかの市が誘致するというのではなく、ドイツがオリンピックを開催するという考えが重要だと述べた。2015年2月両都市で、オリンピック開催に関しての住民投票が行われ、3月21日のDOSB臨時総会で、ドイツのオリンピック招致都市が決められる予定である。

新しい組織とオリンピック開催を目指して、DOSBは次のステップへ歩みだそうとしている。

参考資料:

DOSB-Presse Nr.50(2014.9.12)、フランクフルター・アルゲマイネ新聞、グロース・ゲラウアー・エヒョー新聞

レポート執筆者

高橋 範子

高橋 範子

Special Advisor, Sasakawa Sports Foundation