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国際情報

Sport News United States of America

2015年09月01日

プロスポーツにおけるクライシスマネジメント Vol.2

前回同様、スポーツにおける「クライシスマネジメント」をテーマとして、今回はクライシスマネジメントモデルおよびチェックリストについて紹介する。

4.クライシスマネジメントモデル

フロリダ大学のペニントン・グレイ博士によれば、クライシスマネジメントは大きく分けて4つのステップがある。それらは①リスクの評価、②計画・準備、③不祥事対応、そして④再建である(図1参照)。最初に、リスクとは「現時点で大きな問題にはなっていないものの、これから起こるかもしれない不祥事を誘発する可能性をもつ要因」である。クライシスマネジメントでは、このリスクの評価を行うことが最初の、そして最も重要なステップである。この重要なステップをクライシスマネジメント専門のチームをつくって評価している必要がある。

次に、リスク評価の段階で洗い出された要因に対する明確な計画を立てる。不祥事の種類はさまざまであり、医療従事者、法律・財務専門家、警察、マスメディア、学識者の助言を基に綿密な計画の作成が求められる。このステップでは、従業員など内部構成員だけでなく、外部協力者とのコンセンサスが得られることも重要である。3つ目に、実際に不祥事が起こってしまった際の対応は、極めて迅速でなければならない。傷害事故でない場合、身体的安全が脅かされる不祥事は少ないかもしれないが、ステークホルダーの身体的安全が最も優先されるべきである。このステップで安全が確保されて後の対応は、コミュニケーションがすべてといっても過言ではない。スポンサー企業やファンへの情報提供は、極めて早い段階で行われることが重要である。

事態が収束してからは、4つ目のステップにて不祥事の再発防止、ステークホルダーの信頼の再建を行う必要がある。不祥事がなぜ起こったのか、どのように対処したのか、その後の経過はどうなのかといった情報を、他チームやリーグと共有することが重要である。共有されたデータを基に、クライシスマネジメント計画の修正は必ず行わなければならない。さらに、慈善活動や社会貢献活動を積極的に行うことで、不祥事の悪影響を最小限にすることができるという報告もされている。クライシスマネジメントはこれらの不祥事が再発する確率を下げるためという受動的な意味合いだけではなく、不祥事が起こる前よりも強い信頼を獲得し、新たな機会を創出する可能性を秘めたマーケティング手法としても捉える必要があるかもしれない。

図1.クライシスマネジメントモデル

図1.クライシスマネジメントモデル

5.クライシスマネジメントチェックリスト

本稿で紹介するスポーツ現場のリスクマネジメントチェックリストは、米国のいくつかのシンクタンクや大学研究機関(たとえばBurson-Marsteller, North Carolina State University, University of Florida)が紹介した重要なポイントを筆者がまとめたものである。不祥事の種類や程度はさまざまであるため、提供させていただく項目は自チームのクライシスマネジメントの現状を把握する最初のステップと捉えていただきたい。19項目の中で、Noと答えた項目に関しては、リスクに対する脆弱(ぜいじゃく)性を疑いクライシスマネジメントの重要性を改めるきっかけになれば幸いである。

  スポーツ現場のクライシスマネジメントチェックリスト Yes/No
リスク評価段階 起こりうる不祥事がステークホルダーに対してどのような悪影響をもたらすか評価できる人物、もしくはクライシスマネジメントチームが明確に配置されている。  
起こりうる不祥事が自分たちにどのような悪影響をもたらすか評価できる人物、もしくはクライシスマネジメントチームが明確に配置されている。  
法律の専門家を定期的に招き、法的な不祥事に繋がると思われる要因の把握ができている。  
学識者を定期的に招き、不祥事が起こりうる場面、場所、従業員・選手の性格や行動傾向などの関連性の把握ができている。  
今までに起こった自チームの不祥事、また他チーム・リーグの不祥事がどのように発生したのか情報共有できている。  
計画・準備段階 リスク評価を担当している人物・クライシスマネジメントチームが、計画策定チームとしても権限を委ねられている。  
クライシスマネジメント計画には、その他のスポーツチームや団体で起こった過去の不祥事における問題点が反映されている。  
クライシスマネジメント計画チームには、医療従事者、自治体、警察、マスメディア、学識者が加わっている。  
クライシスマネジメント計画の中には、PRやメディアコミュニケーションに関する計画が組み込まれている(誰が、誰に、いつコミュニケーションをとるのか)。  
クライシスマネジメント計画は、役割が細分化されていて、それぞれの従業員もしくは部・課によって、求められる役割が明確になっている。  
クライシスマネジメント計画の内容について、すべての従業員が全体像を理解しており、それぞれ自分が責任をもつべき役割をよく把握している。  
クライシスマネジメント計画は、定期的にシミュレーションをして見直し・修正が行われている。  
不祥事対応段階 不祥事が起きてしまった際に、その悪影響の度合いを判断し、チーム内で処理できる不祥事か否かを迅速に判断できる。  
悪影響がステークホルダーにおよぶ場合、ステークホルダーに対する情報提供を最優先することができる。  
外部機関が発見する前に、自チームがもつあらゆるコミュニケーションツール(SNS、ウェブページ、プレスリリース)を使って、迅速に事実に基づくコミュニケーションをとることができる。  
再建段階 クライシスマネジメントチームにマーケティングに精通する人物が配置されている。  
不祥事の原因、実際の対処法、その後の経過を他チーム・リーグに共有できている。  
不祥事の教訓を活かし、計画の改善に反映できている。  
不祥事が収束してから、慈善活動・社会貢献活動などに積極的に参画できている。  
海外研究員
佐藤 晋太郎

Graduate teaching & research assistant, Ph.D candidate, The Department of Tourism, Recreation, & Sport Management, University of Florida

Correspondent, Sasakawa Sports Foundation

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