本文へスキップします。

政策提言

提言8 スポーツ指導者制度の改善を通じて、障害者のスポーツ参加機会を拡充するべき

障害者基本法第22条では、国および地方公共団体は、施設・設備の整備、文化、スポーツに関する活動の助成、その他必要な施策を講じるべきとしている。また、2006年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)が制定され、以前からバリアフリーの対象となっていた建築物、公共交通機関、道路に加えて、路外駐車場、都市公園にも移動などにおける円滑化基準の適合が求められ、バリアフリー化が促進された。しかし、建築物が障害者の利用の幅を拡大しただけでは問題は解決せず、障害者スポーツの指導者が適正に配置されるように環境を整えていかなくてはならない。JSADが養成・認定している主な指導者資格には、身近な障害者にスポーツの日常化を促進する「初級障害者スポーツ指導員」、都道府県レベルにおいて障害者のスポーツ指導にあたる「中級障害者スポーツ指導員」、障害者のスポーツ指導に必要な専門知識と技能ならびに高度な指導技術を身につけ、都道府県あるいはブロックレベルにおいて指導者を含めた指導にあたる「上級障害者スポーツ指導員」がある。JSADによると、初級障害者スポーツ指導員数は1万8,249人、中級障害者スポーツ指導員数は2,359人、上級障害者スポーツ指導員数606人が登録されている。JSADでは、資格保有者の約3割が実際に活動していると認識しており、初級、中級、上級の障害者スポーツ指導員を合わせると、約6,400人が実際に活動していると推測できる。JSADが行ったアンケート調査では、スポーツ団体からは「指導員を募集しているが指導員が来ない」、指導員からは「活動したいが活動の場がない」との意見があり、互いのニーズに対してのマッチング不足が課題であることがうかがえる。内閣府「障害者白書」(2010)によると、障害者人口は約744万人であり、活動している指導者が約6,400人であれば、一人当たりが担当すべき障害者数は1,200人という計算になる。この数字からも指導者が足りないことがわかるが、さらに障害の種類や度合が多岐に渡ることから、指導には細部のケアが要求され、こうした点からも指導者数の不足は否めない。

障害者にスポーツを教えられる指導者を確保するための最も有効な方策は、一般の運動・スポーツ指導者の活用、つまり、現状において、運動・スポーツの指導にあたっている地域の指導者が、障害者の指導を兼ねるようになることである。このために必要な施策が、統轄団体などが養成・認定している運動・スポーツの指導者資格制度のノーマライゼーションである。

資格認定団体はJSADや障害者スポーツの競技団体と連携し、障害者スポーツ指導の実践を養成講習や資格更新のための研修などに盛り込む。講師はJSADの上級障害者スポーツ指導員が務める。障害者を教えられる指導者の養成とあわせて、障害者のために用具やルールを修正、適合(adapt)させて、障害の有無を問わず誰もが楽しめるよう作られたアダプテッド・スポーツ普及の場としての機能をもたせるのが理想である。

「スポーツ立国戦略」(2010)において、体育の授業や体育的活動の計画について支援する役割として「小学校体育活動コーディネーター」が位置づけられている。JSADの上級障害者スポーツ指導員によるアダプテッド・スポーツの講義受講をこのコーディネーターの必須要件とすれば、小学校の教育活動を通じたノーマライゼーション教育も可能となるだろう。

地域スポーツの受け皿となる総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)においては、アダプテッド・スポーツの機会創出を期待する。JSADの認定指導者が、前述したスポーツ指導者制度の改善で障害者スポーツに理解を深めた地域のスポーツ指導者と協力して、各地の総合型クラブで障害者を受け入れ、障害者と健常者がともに楽しむプログラムを提供するのである。この体制を整備するために、JSADの認定指導者を配置し、アダプテッド・スポーツのプログラムを実施している総合型クラブを、(独)福祉医療機構や(独)日本スポーツ振興センターなどが助成金で支援するのは、ノーマライゼーションの普及と総合型クラブの「多種目、多世代、多志向」プログラムの充実の点から理にかなっている。なお、総合型クラブにおけるアダプテッド・スポーツのプログラムの開発と普及には、JSADとJSADの上級障害者スポーツ指導員の協力が不可欠であることはいうまでもない。資格制度の改善によるスポーツ指導者のノーマライゼーションを、地域スポーツを核にした社会全体のノーマライゼーションの普及につなげるのが最終的なねらいである。

ページの先頭に戻る