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2.「専門体育」(=エリートスポーツ)中心のシステム

2010年10月、従前行われていた、高校野球の大会の統廃合と「週末リーグ」への移行が発表された。韓国では高校野球に参加する学校は、全国でわずか50校程度にとどまり、これらの学校が、学期中を含めて年中行われる全国大会(9つあった)で覇を争ってきた。この大会を抜本的に統廃合し、学期中の大会開催を取りやめ、週末に大会を行おうとするものであり、大会ばかりで学業をおろそかにするエリート選手の傾向に歯止めを掛けようとしたものである。

そもそも、韓国では、こういった高校野球に参加する学生は、基本的に将来その分野で活躍(主にプロ入り)を目指すトップアスリート予備軍から構成されている(日本のように、将来野球選手を目指さないものの、好きなので、趣味的に自分の意思で部活で野球をするような学生の存在は極めてまれである。)。以前に比べれば改善に向けた取り組みも進んでいるものの、彼らの生活は、基本的に学業よりもスポーツ中心となりがちであり、「勉強しない学生スポーツ選手」のイメージは、今日まで社会一般に広く共有されている。

こういった、社会から隔絶され、「スポーツ漬け」となった学生スポーツ選手を巡る様々な社会的問題(基礎学力の不足等に起因するリタイア後の社会からのドロップアウト、学校運動部を巡る性暴力問題の表面化など)がテレビなどでも取り上げられて話題を呼び*、政府も対応を余儀なくされてきている。*

すなわち、韓国の学校体育(学校における体育と関連した分野の活動)では、大きく分けて、①一般の教育課程内の「体育」、②エリートスポーツの担い手たる選手が授業後に専門的にスポーツを行う「学校運動部」活動、③一般の学生が放課後などの時間に、個人の意思で運動活動を行う「学校スポーツクラブ」やお稽古ごとを学校に取り込んだ「放課後学校」、などから構成されている。

そして、特に、日本とは異なり、極めて国家主導の少数精鋭・重点的なトップアスリート養成の方針とあいまって、学校体育においても、エリートスポーツの担い手たる選手を育成する「学校運動部」活動が重視されてきた。そして、学校体育に関する主要な資源配分先を全体の1%にも満たないエリートスポーツ(韓国語では「専門体育」という。)に定めた*ことは、韓国のスポーツ各競技・分野における競技力を高めることに貢献した一方、一般学生が教育課程で取り組む体育の軽視の風潮や、放課後の体育活動の低調を招いてきたともいえる。1%の学生向けのエリートスポーツ優位の下、99%の学生向けの一般の体育活動の存在が危機に瀕しながら、双方がかろうじて併存しているのが、まさに韓国の学校体育である。

* KBS(韓国放送公社)で報道された「スポーツと性暴力に関する人権報告書」、「悲しい金メダル」などのドキュメンタリー番組において、詳細に報告され、衝撃を与えた。

**一例として、中高の体育教師が14,000人前後の状況で、2009年には、エリート選手養成のため「学校運動部」で技術指導を行うコーチが4,905名も配置され、これらの給与に総額約611億Wも投入されていることがその証左である。

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