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3.体育の教育課程-韓国の「学校体育」の教育目的とは-(1)

(1)体育の教育課程の変遷と実態-2009年改訂教育課程と集中履修制のもたらすもの-

韓国では日本の学習指導要領に相当するものとして「教育課程」がある。これは、日本よりやや短いサイクルで改訂され、最近では、1997年(第7次教育課程)、2007年(2007年改訂教育課程)、2009年(2009年改訂教育課程)に改正が行われている。この改訂がすでに戦後8回行われ、体育に関し、その変遷の要諦(授業時間数、教育課程の内容等)をまとめたものは、以下の通りである。

※ 「楽しい生活」は、体育、美術、音楽を包含したもので、概ね2時間程度が体育である。

授業時間1時間は、小学校40分、中学校45分、高校50分である。
高校の1単位は50分×17回の授業であり。週1時間-通年で2単位となる。
2009年改訂教育課程は2011年から段階的に導入される。

時間数、教育課程も、時代の要請、時々の政治状況も反映しながら、変化している。特に、韓国の教育全般に言えることでもあるが、時々にアメリカの教育理論の影響を大きく受けていることを垣間見ることができる。

確かに、制度そのものはこのようになってきているのだが、現場の学校の裁量(運用)によって、各学校で制度の標準から相当のばらつきが生じていることを看過することはできない。

まず、問題を複雑にしているのは、2007年改訂教育課程で認められた、体育を含む一部科目における「集中履修制」である。これは、一時期で集中的に実施し、あとの時期は一切その教科を行わないような指導方法であり、同時に履修する科目数を減らし、学生の負担を減らすと共に、教員の効率的配置を狙ったものであったが、主要科目(国語、英語、数学)中心の傾向に拍車を掛けるものとされる。実際、2010年に2011年の各学校の教育課程の計画状況を調査したところ、中学校では、「体育」が3年間6学期(※韓国は1年-2学期制)継続して開設される学校は2,193校にとどまり、4学期のみ開設(1年間は体育をやらない学校)は全体の1/5の653校にも上るとのデータもみられた。(2010ホ・ヒャンチョク「国語・英語・数学でなければ教えるな!(2009年改訂教育課程と学校体育)」「学校体育」秋号・全国体育教師の会)。

そのほか、新しい2009年改訂教育課程では、各学校の裁量で、授業時数を20%の範囲で増減させることが出来ることとなった。この裁量を利用し、知育に集中している各学校は、いきおい数学や英語の授業時数を増やそうとする流れが危惧されている。同じように、2010年に2011年の各学校の教育課程の計画状況を調査したところ、中学校で、全3,144校のうち、標準時数以上に数学を増やそうとする学校が1,786校、英語を増やそうとする学校が2,198校であったのに対し、体育は増加がわずか94校で、2,588校が標準時数通りの一方、462校では標準時数より減らそうとしているとのデータもみられた。(2010ホ・ヒャンチョク「国語・英語・数学でなければ教えるな!(2009年改訂教育課程と学校体育)」「学校体育」秋号・全国体育教師の会)。

特に、選択科目中心の高校の実態はもっと深刻である。従前より「7次体育教育課程(※筆者注:2つ前の教育課程)の適用により、授業時数が減少し、高学年になればなるほど、体育科目が入試に及ぼす影響が小さくなり、ぞんざいに扱いやすくなっている」、「最近高等学校2、3学年の体育教科選択現況によると、2005年~2008年まで、全体高等学校中で76%を少し上回る学校だけが体育教科を選択しており、このよう懸念が表面化」(2009「体育白書」)していた。つまり、2008年段階で、すでに高校2年・3年について、4校に1校では体育そのものが行われていない現実にある。

2011年から本格的に導入される「2009年改訂教育課程」では、従前に比べて、一般高校の必修単位数が10単位に増加したが、もともとのこのような状況に加え、20%の授業時数の増減、集中履修制などが合わされば、高校2・3年の一定の時期に、体育の授業を受けないことも十分あり得る事態となっている。(教科部担当者も上記のような実態、弊害を認めている。)

そのほか、データには現れてこないが、一般に、高校では本来の授業時間であっても、体育の時間の「自習」の割合は高いとされるなどの問題も指摘されている。

このように、教育課程の制度的タテマエと現実に相当の乖離が生じているのが、韓国の学校体育の特徴の一つである。

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