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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

(1)学生身体能力検査

5.韓国の学生の体力の状況(1)

「学校体育」の教育内容、教員、施設などを外観してみたが、次に、一般の学生の体力の状況を、「体育白書」や統計結果などを眺めながら、確認してみたい。

(1)学生身体能力検査

韓国では、1951年より「学生身体能力検査」が実施されてきた。実施対象は小学校5年から高校3年まで、16市道(注:日本の都道府県に相当)ごとに各30校を選抜し、約3万人を対象に調査を行ってきた。
調査種目は6種目(50メートルリレー、幅跳び、長距離走(1,600(男)/1,200M(女))、長座体前屈、上体起こし、腕立て伏せ/懸垂で構成される。(小学生は「腕立て伏せ/懸垂」を除外。)学生身体能力検査は系別種目検査だけでなく、総合的体力の判断のために級数判定(相対評価)も実施される。
2009「体育白書」によると、2008年の記録は、2000年の各種目別結果を比較すると、全ての種目で体力水準が低下している。

※ 韓国では、女子の懸垂については、回数ではなく、ぶら下がっていられる秒数を測定する。

※ 韓国では、女子の懸垂については、回数ではなく、ぶら下がっていられる秒数を測定する。

特に、こうした結果などから、大学入試による運動不足、体育授業時間数などに起因すると考えられる高3の体力低下(以下、本稿にて「高3プロブレム」と呼ぶ。)は深刻である。

(黄色は、高3が高2に比べて記録が下がっている項目である)

(黄色は、高3が高2に比べて記録が下がっている項目である)

女子に至っては、中学校期から高校まで体力の向上がきわめて緩慢な傾向がみられるなど、女子の運動離れ傾向がみられる日本の体力調査結果と近似する傾向も見せている。
また、この調査の特徴として、運動機能の優れた者を選抜する機能を持っていることである。ここにもエリートスポーツ優位の韓国の学校体育の一面が現れている。