Search
国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
Knowledge

日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

9.今後の施策の方向-「学校体育法」の制定の検討と学校週5日制完全実施への対応-

9. 今後の施策の方向-「学校体育法」の制定の検討と学校週5日制完全実施への対応-

このように、韓国では、「99%の一般学生」を、どのように学校体育に向けていくか、ということが課題となっているが、現在韓国国会でも「学校体育法」などの検討が議員立法の形で進められている。(アン・ミンソク議員(野党民主党)提出の「学校体育法」とパク・ヨンア議員(与党ハンナラ党)提出の「学校体育振興法」が繫留されている。)
具体的には、

●「学校体育」の法的定義(=「学校で学生を対象になす諸般の体育活動」とされる)
●国家及び地方自治団体は学校体育活性化のため、施策を講ずること
(個別に15項目程度があげられ、この中には、学校体育振興に関する基本計画、女子学生体育活動活性化支援などが掲げられている。)
●学校長は学校体育振興施策を施行するため必要な経費を学校予算の範囲から確保すること
●学生健康体力評価(PAPS)を実施し、低体力及び肥満学生に体力増進プログラムを運営するようにすること
●学校の長は放課後、学生達が自立的にスポーツトンアリ活動に参与できるよう、「学校スポーツクラブ」として運営できるようにすること
●学生選手(エリートスポーツ選手のこと)の人権と学習権を保障し、学生選手が一定の学力水準に到達するよう、支援するようにすること
●学校運動部指導者に対して資格基準を大統領令で定め、運動部指導者が給与を学校会計から支給されるようにすること
●国家及び地方自治団体は初等学校にスポーツ講師(パク議員案では「体育専門講師」)を配置するようにすること
●国家及び地方自治他団体は幼児及び障害者学生に対して適切な体育活動を運営するようにすること

などが掲げられている。現在、与野党議員の双方の提案に差異があり(学期中のエリートスポーツ選手の合宿禁止の可否)、今後の立法の行方やそれに伴う施策の展開は未だ不透明であるものの、韓国の体育・スポーツのウイークポイントでもあった一般学生の「学校体育」に直接スコープをあて、法律を制定することの意義とインパクトは決して小さくない。実際、体育教師等の関係者の要望も高く、次期通常国会(9月)での成立に向け、署名活動なども行われている。

そのほか、韓国では現在月2回の学校週5日制が実施されてきたが、2012年の新学期(3月)から完全週5日制が施行されることとなった。この中で、教育科学技術部は、「土曜スポーツデイ」などと定めて、土曜日のスポーツ活動が促進されることを期待している(全小学校にスポーツ講師を配置する計画を検討中)。他方、本来正課の授業の充実こそが急務にもかかわらず、正課外の運動を充実させるのは方向性が逆であるとの指摘も一部でみられている。