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10.学校体育と生涯スポーツの関係~韓国人は大人になって何のスポーツをするのか?~

学校体育のあり方と関連して、参考的に、韓国人が大人になって、どのようなスポーツにどのように触れ親しむか、少し触れておきたい。

2010年の「国民生活体育参与実態調査」(以下、「2010生活体育調査」という。)によれば、2010年の週2回以上規則的に体育活動をする人の率は41.5%であった。91年からの推移をたどると、一貫して増勢であったが、2000年の実施率はIMF危機の影響で減少したとされ、2008年も、2006年と比して9.9%の大幅な減少となっており、経済危機感の高まり、雇用不安、失業率の増加が複合的に適用された結果と分析されている(2009体育白書による)。他方、10年の大幅な増加は、経済の回復基調もさることながら、「多様な解析が出来るが、政府の『15分運動プロジェクト』に基づく公共体育施設の充実化と生活体育指導者の配置拡大等、体育政策の成果も主な原因」と評価している(「2010生活体育調査」)。

では具体的には、どのようなスポーツに触れ親しむのだろうか。別表を見ればわかるが、登山が継続して上位を占めていることがわかる。事実、登山はまさに韓国の国民的スポーツともいえ、ソウル市内でも、市内に多くの名山がある好環境もあいまって、市内の地下鉄などでも、多くの登山客を見かけることが出来るが、数字はこれを裏付けている。

地下鉄の中で見られる登山客の光景

2010年調査結果によれば、「2008年調査から日常生活の『歩き』を除外して、「歩き運動」すなわち、余暇時間に運動目的で行う「ウォーキング」を運動種目に含め、2010年度調査でも「ウォーキング」が一番大きい運動参加率となり」、「登山は2位であるが、70歳代女性で一番参加率が高く、自転車の参加率増加は汎国家的な支援で自転車道路を拡充し、自転車に乗る運動を展開した成果」で、「自転車参加人口の増加は自転車による負傷の危険も高まっているため、自転車に乗る運動とともに安全教育の重要性も指摘されている」と分析している。

「ボディビル」はウエイトトレーニングなどを含み(韓国では、ウエイトトレーニング+ランニングマシンなどを備えた日本のいわゆる民間フィットネス施設相当のものを「ヘルス」と呼んでいる。ただし、韓国の民間フィットネス施設では、日本と異なり、プールが設置されている場合は極めて少ない。)これは、民間の「ヘルス」といわれるフィットネス施設に通う人々の増勢を表しているのではないかとも推察される。

では、学校教育において運動と距離をおいてきた人たちがなぜ大人になって運動をするのか。同調査結果からその理由を探ると、「健康管理及び維持」56.6%、「体重調節及び体型管理」17.0%、「ストレス解消」7.2%とあり、「個人の楽しみのため」5.8%、「余暇をよりよく過ごすため」6.6%といった、スポーツそのものを楽しむという志向が極めて弱いことが分かる。

(日本で同種の調査では、運動・スポーツを行った理由として、上位は、「健康・体力つくりのため」53.7%、「楽しみ、気晴らしとして」50.3%、「運動不足を感じるから」42.0%、「友人・仲間との交流として」33.8%などとなっており、楽しみ、交流などの色彩が強くなっている(内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」2009年9月)

また、スポーツへの参加に影響を与える者はという問いに対しても、「自ら」44.4%、「家族」17.5%、と自分と家族関係者が非常に大きく、意外にも「友人」は29.7%に過ぎない。さらにいうなら、「指導者」0.8%、「学校教師」0.4%と、学校などを起点にしたスポーツの誘因が非常に弱いことを間接的に示している。

運動をしないことについての理由としては、「仕事が忙しく時間がない」55.2%ということは想像に難くないが、「怠けている」16.9%、「体が弱くて年を取っている」9.3%に続き、「関心がない」7.7%となっている。

他方、注目すべきデータもあり、今後行ってみたいスポーツの最上位は、国民的スポーツと考えられる「登山」を押さえて、「水泳」(17.6%)が第一位となっており、これはここ数年続いている傾向である。比較的アプローチしやすいゆえメジャーとなっているスポーツが「登山」であるとすれば、「やってみたいけれど機会に恵まれないスポーツ」がここ韓国においては「水泳」であり、スポーツそのものに対する関心を高める意味でも、学校体育が果たしうる分野の潜在的可能性を示しているといえる。(なお、最近の事情としては、北京五輪400M自由形金メダリスト・パク・テファン選手の活躍などの影響もあると推測されるが、統計ではそれ以前から水泳人気は持続しており、水泳人気の原因はより詳細な分析が必要。)

※「国民生活体育参与実態調査」は、10代から70代までを対象としており、学齢期の者も調査対象に含んでいるが、国民のスポーツ指向度を全体として把握する上で議論の参考になるものと考えられる。

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