本文へスキップします。

スポーツアコード 現地レポートノンフィクションライター 松瀬 学 氏

オリンピック候補。野球・ソフト、スカッシュも

ちょっとわかりにくいシステムながら、ポイントは空手と武術の得票数がほとんど変わらなかったこと、野球・ソフトの得票数は増えていったことである。
なぜか。もちろん投票前のプレゼンで野球・ソフトの出来がよかったこともあろう。IOCの指導にそって、新しい総括団体をつくり、時間短縮のため7回制に変える試合変更もアピールした。オリンピック復活への熱意も伝わった。
ただ思うに、IOC理事会のバランス感覚が働いたのではないか。まずレスリングの格闘技系が最終候補入りしたため、同じ格闘系より、球技に票が流れることになった

これは9月のIOC総会で実施される会長選挙と無関係ではあるまい。IOC理事会の中に、会長に立候補している人がトーマス・バッハ副会長(ドイツ)やセルゲイ・ブブカ理事(ウクライナ)ら多数いる。ならば、IOC委員の特定の競技団体グループに反感を抱かれたくないとの心理が働く。
だから、競技団体に猛反発を食らったレスリングをまず残し、バランスよく、球技系の野球・ソフトに票が流れたのである。

何はともあれ、野球・ソフトは「逆転勝ち」で残った。会見場の後方に座っていたポーター国際ソフトボール連盟会長はからだを震わし、涙を流した。
「やった。我々は生き残った。少女たち、青年たちの夢がつながった」

スカッシュのラマチャンドラン・国際スカッシュ連盟会長はにこやかに笑っていた。
「次のステップに移ることができる。オリンピック競技入りに自信を持っている」
IOC関係者の話を集めると、どうも下馬評では英国発祥のスカッシュの評価が高いようだ。実はスカッシュのPR戦略のアドバイザーが、12年ロンドンオリンピックや16年リオデジャネイロオリンピック、22年サッカーワールドカップを相次いで招致成功に導いたマイク・リー氏である。つまりIOCのツボを熟知している。
ガラス張りのコートを世界各所に設置する普及活動に加え、09年にはルールを変更した。テレビ映りを意識して、ラリーポイント制を導入し、時間短縮に努めた。用具を使うため、マーケット効果も大きい。

IOC総会(9月8日・ブエノスアイレス)では、100人余のIOC委員の利害、価値観、考えで判断されることになる。明確な判断の基準はないが、IOCの方針として ①世界の普及度、人気 ②テレビ向け ③男女の参加比率の均衡化― の3つがある。つまり入場料、放映権料、スポンサー料、用具マーケットにプラスになるかどうか。
競技としての「新鮮味」と「マネー効果」を考えると、新規オリンピック参加を目指すスカッシュが最有力候補とみる。英国発祥の競技で欧州を中心に根強い人気があり、とくに若者を中心に競技者が増えている。「テレビ向き」の競技で、ラケット、ウエアの市場も魅力的だ。

野球・ソフトボールは、大リーガーのオリンピック参加への道筋をつけることができるかどうか、がカギを握るだろう。
伝統のレスリングは、オリンピック存続のためには、女子階級増、参加選手の削減など、さらなる改革が必要である。
いずれにしろ、ポイントは「改革実行」と「マネー効果」「将来像」である。7年後だけでなく、10年後、20年後にはこうなる、魅力アップでIOCに潤いを与える、オリンピック運動に貢献することになる、そういった具体的なイメージを創り出さなければならない。

前のページへ  |  次のページへ

ページの先頭に戻る