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スポーツアコード 現地レポートノンフィクションライター 松瀬 学 氏

情熱とチームワーク ~東京オリンピック・パラリンピックプレゼン

外国人記者の反応を聞けば、社交辞令か、多くの記者が「東京が一番よかった」と言うのだった。当然、完璧ではなかった。荒木田裕子・招致委スポーツディレクターと、ビデオの小谷実可子さんの「コンパクトなオリンピック施設」の説明が少しだぶっていた。
プレゼンにはもちろん、入念な準備がなされていた。登壇した6人は英国人トレーナーの指導のもと、直前まで発声の仕方や振り付けの練習を重ねたそうだ。ちょっとオーバーアクションではないかと思ったけれど、国際舞台ではこのくらいがいいのだろう。

記者会見では外国人記者から、こんな質問が飛び出した。「前回(2016年)招致の時と比べ、なぜ、東京のプレゼンは変わったのか。スピルバーグ監督をアドバイザーに雇ったのか?」。皮肉か本音か。
周りの好反応に猪瀬知事も上機嫌だった。「イスラム諸国はけんかばかり」という失言以降、発言には気を使ってきた。今回、悪いイメージは払しょくできたようだ。

猪瀬知事は言う。
「プレゼンテーションをやるごとに、その意味がよくわかってくる。なんでもそうでしょ。スポーツでも鍛錬を繰り返していくと習熟していきますけれど、スポーツ選手の心境がよくわかりました。」
実は猪瀬知事はサンクトペテルブルクでも5キロのジョギングを続けた。
「毎日、走っていると、走り方がだんだん慣れてきますよね。プレゼンもそういう意味でふだんのジョギングと同じで、繰り返してやることにより、技術的なことだけでなく、勘どころ、そういうものがわかってきます。」

ライバル都市のプレゼンはどうだったかというと、イスタンブールは「欧州とアジアを結ぶ架け橋」を強調した。映像には頻繁に橋を登場させ、「2大陸の経済、文化をつなぐ。世代をつなぐオリンピックに」とした。「イスラム圏初の悲願」を前面に出すことはなかったけれど、イスラム教をイメージさせる映像はあった。
国の好調な経済情勢もアピールし、慢性的な交通渋滞の解消策としてトンネル掘削工事の映像も示した。悪くはなかった。

マドリードは、35の競技場のうち80%が完成していることを強調し、スペインを襲う経済危機の懸念の払しょくにも心掛けていたようだ。東京と同様、「コンパクトなオリンピック」「現実的な選択」を訴えた。はっきり言って、こちらはパッとしなかった。

あと9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会の投票まで、3回のプレゼンの機会がある。竹田理事長は言う。
「まだまだスタート段階ですから。ライバル都市も作戦を変えてくると思うので、我々もその(ライバルの)上をいくよう頑張りたいと思います」

招致レースは熱を帯びていく。今回、残念だったのは、聴衆にIOC委員がほとんどいなかったことである。

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