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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

3.調査結果(1)

3. 調査結果(1)

(1)競技活動にかかる費用の自己負担額について

第2回調査を実施した最大の理由は、国庫助成による助成金額が増加し(2009年以降)、スポーツ基本法が制定(2011年)されたにも関わらず、「選手の負担感が消えていないのではないか」との“仮説”による。図1は、前回調査と第2回調査の競技活動にかかる費用を比較した結果だが、共に自己負担額「50~100万円未満」とする回答が最も多かった。このことから、選手が負担する金額にこの数年で大きな変化はなかったことが伺える。一方で、パラリンピック出場権を獲得するために海外遠征や合宿などの機会も増えており、高額の負担をする選手が増えていることもわかった。なかでも500万円以上を負担していると回答した選手がロンドンで4人、バンクーバーで2人であり、また「200万円以上」を自己負担していると回答した選手が2度の調査で11.2%から20.0%と増加傾向にあった。換言すれば、負担額については二極化の傾向が見られたといえる。

図1:年間個人負担額(平均額を提示)

依然として負担感が「変わらない」「増えた」とする選手が多いことは注目すべき結果である。そこで、回答者のうち前回大会(夏季:北京大会、冬季:トリノ大会)に出場した選手に、特に高額負担が予想される海外遠征日数と遠征に伴う負担額について質問した。実際のところ、表2に示すように共に「変わらない」(遠征日数:37.3%、遠征負担額:29.9%)との回答が最も多かった。しかし、遠征日数については「少し増えた」(34.3%)と「大幅に増えた」(22.4%)を合算すると5割を超える数値であり、遠征日数は全体的に増えている傾向にあるといえるだろう。特にバンクーバー大会(冬季)に出場した選手はロンドン大会(夏季)よりその傾向が強い。たとえばアルペンスキーなど、冬山への長期の合宿や遠征が伴う冬季種目の特性も影響しているのではないかと考えられる。

次に遠征負担額(図2参照)であるが、遠征日数と比較すると、「大幅に増えた」「少し増えた」と「少し減った」「大幅に減った」はほぼ同じ数値を示した。国庫補助の影響もあってか負担額が減ったとする選手がいる一方で、海外遠征にかかる個人負担額の年間総額が300万円以上と回答する選手もいた。興味深いことに、海外遠征にかかる個人負担額が0円と回答する選手が9人(7.2%)といた一方で、300万円を超えた選手が10人(8.1%)いた。300万円を超える競技種目では、冬季種目(アルペンスキーとクロスカントリー)、夏季(車いすテニスと陸上)に集中し、今回の調査では特定の競技種目に負担額の偏りが見られる傾向も明らかとなった。

表2:前回大会(トリノ大会、北京大会)に出場した選手の遠征日数、遠征負担額の変化(%)、図2:海外遠征にかかる個人負担額の年間総額