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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

中国のスポーツ政策の新動向について(2)

―生涯スポーツを中心として

呼倫貝爾学院体育学院 張 林芳 氏

全民健身増進の実施状況

1. 「三納入」政策の実施状況について

学校体育施設での様子

国家体育総局副局長冯建中による2013年全国大衆体育事業の会議での演説によると、2012年に国家体育総局が第3回会議で国家発改委、教育部、財政部、国務院法制弁と共同で調査研究グループを構成し、全国の各省(日本における「県」)に「条例」と「健身5ヵ年計画」の実施状況の調査研究を行った。全国調査の状況をみると、各行政府における「三納入」の実施状況のレベルが2年前より大幅に向上した。特に地(市)や県(区)の2級の政府における「三納入」推進実行が更に著しい。

昨年10月の末までに、全国の省レベルにおける「三納入」のカバー率は100%を達成し、地(市)級における「三納入」が98.6%、県(区)級における「三納入」が82%、このうち14の省では、省、地、県の3級の政府の「三納入」全カバー率を実現した。25省では、地(市)級の政府の「三納入」全カバー率を実現した。他の省の県(区)級のカバー率も90%を超えている。

2. 学校スポーツ施設開放について

張の論文調査によると、中国では、全民健身計画を実施し、スポーツ施設不足問題を解決するために、学校体育施設の対外開放政策を実施している。しかしまだ全国で学校体育・スポーツ施設の開放使用率は低い。原因は、高層次立法が十分でないことや、各法律関係の責任の所在、例えば権利と義務が明確になっていないなどの問題がある。

3. 全民健身財政投入について

冯建中によると、全国地級政府の財政投入は全国地級政府から全民健身事業に財政投入された経費は49億1159元に達し、そのうち東部地区が27.75%、中部地区が31.71%、西部地域が40.54%を占めている(2012年の全国調査統計による)。経済と社会の発展につれて、特に西部地域の政府の財政投入力はますます大きくなっている。

4. 国民健身公共サービス体系について

冯建中によると、2012年までに、全国で「農民健身ルート(健身路径)」即ち「ルートプロジェクト(路径工程)」が34.86万ヵ所建設された。行政村数の55%を占め、資金投入額は153.43億元にのぼる。2014年、全国体育局長会議における国家体育総局局長刘朋の演説によると、さらに積極的に「第12期5ヵ年公共スポーツ施設の建設計画」の実施を推進し、2013年には体育総局に本級のスポーツ宝くじの公益金約133億元を投入した。現在建設の農民健身ルート(健身路径)は5万か所、「雪炭プロジェクト(*1)」は190個、新しいGB健身路径(*2)の器材は1,192セットを購入し、国家級体育指導員として3,803人を養成したという。

*1)「雪炭プロジェクト」とは、中国の辺境地区と中部西部地区の貧困地域スポーツフィットネス施設建設を支援したプロジェクト
*2)「GB」とは、屋外健身器械の安全標準号のこと。全称は「GB19272-2011」

今後の課題

現状、社会主義の中国における、生涯スポーツ事業の発展レベルはまだ初級段階にあり、社会変革の時期になるため、情況は複雑で、矛盾も多く、多くの問題を抱えている。例えば、試合ひとつにしても内容や方法の改革が必要であるし、参加人数が少なかったり一部の層に偏るなどの現状もある。そもそも誰もが参加できるようなスポーツ活動が豊富ではない状況や、順位とメダルを強調しすぎるなどの問題もある。

著者

張林芳氏

張 林芳 氏

中国北京師範大学大学院体育人文社会学専攻修士修了後、日本の鹿屋体育大学大学院で体育学専攻修士号を取得し、筑波大学博士課程人間総合科学研究科・体育科学専攻研究生を修了。
筑波大学人間総合科学研究科外国人受託研究員として研究活動を経て、現在は、中国内モングル呼倫貝爾学院体育学院の教授。専門分野はスポーツ経営・スポーツ政策。研究領域は、日中両国におけるスポーツ法学及び政策。

参考資料