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震災から3年 ~スポーツのチカラノンフィクションライター 松瀬 学 氏

変わる風景。“トモダチ”球場に励まされ ~石巻市

もちろん、一番大事なのは、被災地に住む人々の心の持ちようだろう。石巻市では、石巻漁港を要する中心部は津波で壊滅的打撃を受け、人口約16万人のうち、死者・行方不明者は約7千人にものぼった。「石巻市立大川小学校の悲劇」など、子どもたちの犠牲も少なくはなかった。

市内の運動場やプール、体育館などの施設も津波の影響を受けた。市内のスポーツ少年団の半分位が拠点を市外にいったん移し、子どもたちも親と一緒に市外に流れていった。運動公園そばの仮設住宅には、まだ1千世帯ぐらいが暮らしている。「やっぱり、なんというのだろう」と黒澤さんはため息をつく。

「何か前に向かう気持ちを失ったような、気が抜けた感じの人たちもたくさん、いました。そんな(仮設住宅の)住民の方々が、“どれ、運動でもやっか”という気持ちを起こしてくれればいいんですけども…。3年経って、徐々にそういうカタチになってはいます」

広大な総合運動公園には、野球場やフットボール場のほか、ふれあいグラウンド、パークゴルフのやすらぎ広場などがある。公園の外周だと、ざっと4キロ弱か。この日も、ご年配のご夫婦が腕を大きく振りながら、寒風の中、かっ歩していた。

「家の中にいると、それこそ、下を向いた生活をしてしまう状況にありますが、この頃、とみに暖かくなったせいもあるけれど、ウォーキングされている方がかなり出てきています。仮設住宅の子どもたちも、ここに遊びにくるようになりました」

道具貸し出しが、テニスとパターゴルフ、バスケットボール、サッカーボール。
よく小学生がバスケットボールのフリースロー競争に熱中しているそうだ。課題は、なんといっても施設整備のための資金だろう。未来を担う子どもたちに環境を整えてあげたい。スポーツをしたい子どもにはスポーツができる場を提供する、それが行政の仕事だと黒澤さんは信じている。

インタビューが終わり、一緒に施設を見て回る。近くの通称「馬っこ山」から強風がゴーゴー吹いてくる。前に進めない。復興におけるスポーツのチカラとは。前傾姿勢になりながら、黒澤さんが言うのだ。

「スポーツのチカラとは、心身を養生する場じゃないのかと思います」

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