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震災から3年 ~スポーツのチカラノンフィクションライター 松瀬 学 氏

夢挑戦。ワールドカップ誘致に燃える ~釜石市鵜住居町

「フィールド・オブ・ドリームス」
あの日から3年。釜石市鵜住居(うのすまい)町で開かれた『ラグビーワールドカップ(W杯)2019釜石誘致応援タウンミーティング』に参加したら、そんな米国ファンタジー映画のタイトルを思い出した。

夢なのだ。壮大なる挑戦なのだ。ここにスタジアムをつくったら、新たな何かが生まれるだろう。そう信じている。
もっか釜石市民がラグビーW杯誘致に乗り出している。司会役をつとめる浜登寿雄さんがマイクで呼びかける。

「ここは3年前、震災で何もかもなくなりました。まさにゼロ状態。それがスポーツの世界大会の試合を呼ぼうという状態にまで戻ってきたんです」

45歳の浜登さんは、山田町にあった家屋が津波で流され、両親と妻と三女を喪った。鵜住居にあった職場の病院も真っ黒な濁流に飲み込まれた。コトバでは表現できないような辛苦を乗り越え、どっこい生きている。W杯誘致の旗を振る。
会場となった「鵜住居絆ハウス」の2階の部屋には市民の熱気が充満していた。ざっと50人。グループに分かれて討論し、それぞれの代表が発表する。

「自分たちのルーツはラグビーだった。そう、子どもたちに自慢させたい」と、鵜住居町にある旅館のおかみ、岩﨑昭子さんがアツくアツく、語った。カラフルな「ふらいき」(大漁旗)をバックに。

「自分たちは井戸を掘る人です。努力する。井戸を一生懸命に掘れば、こんこんと市民の気持ちがわき出てくるでしょ。市民がリードして、行政さんを引っ張って。緑と海がある空間にスタジアムをつくり、そこで世界中の人たちと笑いあいたいのです」
まちの名士のドクターがつづく。「W杯まで元気で生きていたい。応援にきた外国の美人サポーターと友達になりたい」

釜石市は、人口約4万2千人のうち、1千人以上が犠牲になった。とくに被害が大きかったのが、この鵜住居地区である。海岸線をのぞむ地域は、荒涼たる平地がひろがっている。黄色のクレーン車、こげ茶の大型ダンプカーが走り、盛り土が造られている。
スタジアム予定地は、津波に流された鵜住居小学校と釜石東中学校の跡地である。まだ何もない。ただ道路脇では、W杯誘致フラッグが北風にばたばたと揺れていた。

釜石市教育委員会の『ラグビーワールドカップ2019誘致推進室』を中心にスタジアムの建設計画を推し進めているところだ。観客席の規模はどうするのか、肝心の財源はどうするのか。課題は山積である。

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