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震災から3年 ~スポーツのチカラノンフィクションライター 松瀬 学 氏

がんばっぺし。子どもたちにスポーツを ~大槌町

<生きているってすばらしい>
岩手県大槌町の山際の丘の上に建つ大槌役場城山公園体育館。そのホールには無数の著名人からの激励色紙が飾られている。
<がんばっぺし>とのコトバも。

大槌で生まれて育った33歳、教育委員会・生涯学習課の平舘豊さんは人懐っこい笑顔を浮かべた。「がんばっぺし」は「一緒にがんばろう」の東北地方の方言である。
「“がんばっているから、がんばれって言わないで”とすごく思ったこともあります。でも、いまはそのコトバに励まされ、がんばってますと思える。日常的にスポーツする場がないというのが、やっぱり一番つらいですね」

ほんとうなのだ。大槌町には、スポーツをする場所もなければ、施設もほとんどないのである。役場を出て、大槌湾のほうを見下ろせば、な~にもない。かつて家やビルが密集していた町並みは津波で流され、こげ茶色の荒涼たる更地がひろがっている。
盛り土をする黄色のクレーン車とこげ茶色の大型トラックが動き、ぽつんと小さな自動販売機があるだけだ。

「景色は変わらないですね。復興は進んでいるはずなんですが…」と、平舘さんは小声で漏らした。
「3年経って、この風景ですから。がれきがなくなっただけですね。スポーツ好きな子にはたまらないと思います。土地がない。ほんとうに土地がないんです」

大槌町は、東日本大震災の津波で町長を失うなど壊滅的な打撃を受けた。町民約1万4千人のうち、約1千4百人が犠牲となった。ゆるやかなる人口流出も続き、建築規制もあってか、復旧が遅々として進んでいない。

家屋を失った人のための仮設住宅は42カ所に分散している。かろうじて津波の被害を受けなかった大槌町小槌の『大槌ふれあい運動公園』の野球場やテニスコートも、病院建設のため、もうすぐ取り壊しになる。代わりに町の中心部に多目的のスポーツ総合施設がつくられる計画だが、そんなのいつ完成するのかなどが見えてこない。

住宅や病院などの生活基盤の復旧が一番だろうが、ほんとうにそれでいいのか。町もJOCによるオリンピック・デー・フェスタや、笹川スポーツ財団によるチャレンジデーへの参加、ウォーキング大会などの独自事業を手掛けるが、全体として大槌町の子どもたちはスポーツをする機会を失い、平成25年度の全国体力・運動能力、運動習慣等の調査結果をみると、シャトルランや50メートル走、立ち幅跳びなどの平均は軒並み、全国と県の平均を下回っていた。
肥満傾向出現率も高まり、中学校では全国の約2倍の出現率となっている。もろ運動不足によるものだろう。

スポーツ環境の現状をみるため、平舘さんに学校の校庭に連れて行ってもらった。サッカー場がつぶされ、プレハブの2階建ての合同校舎がつくられた大槌中学校、大槌小学校。ちょうど放課後、中学生たちが雪でぐちゃぐちゃになった校庭にたたずんでいた。

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