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世界が取り組むスポーツの不正対策
安藤 悠太 氏

1. スポーツの試合操作Match-Fixingの現在

今年3月、J1リーグ第2節サンフレッチェ広島対川崎フロンターレ戦について、国際サッカー連盟(FIFA)が賭博市場の監視のために設立したEWS(Early Warning System)社から“不自然な動き”があるとの警報が出された。この件についてはJリーグによる調査の結果、不正な事実はないと結論付けられた。また、同じく今年開催されたサッカーのブラジルワールドカップにおいても、八百長疑惑が報道された。今年に入り、上記2つの事例が日本国内でも度々ニュースなどで取り上げられたが、近年スポーツ界では試合の過程および結果を操作するMatch-Fixingが世界的な関心事になっている。

例えば、国際オリンピック委員会(IOC)は2013年12月にMatch-Fixing対策に1,000万ドルを拠出する計画を示すとともに、今年9月には国際刑事警察機構(ICPO)と共同で対策を取っていくことを示した。FIFAは2011年より、ICPOへ10年間で2,000万ユーロの寄付を行うとともに、共同で試合の管理体制の強化やサッカー界の啓発に取り組んでいる。欧州の政策協調機関である欧州評議会(CoE)では、Match-Fixing対策の新たな条約が策定され、準備が進められている。さらに、英国やロシアなど、大きなスポーツイベントの開催を前にMatch-Fixing対策を立法として策定している国もある。

これまでもテニスやサッカー、クリケットを中心として散発的にMatch-Fixingの疑惑や実際に事件に発展したものが見られたが、これほどまでにスポーツ界全体、およびスポーツ界を越えて議論されてきたことはなかった。このような流れに繋がる大きな転換点は2013年2月の欧州刑事警察機構(Europol)の発表にある。

2005年頃よりドイツやベルギー、フィンランド、そしてイタリアで発覚したMatch-Fixingの捜査を発端として、欧州では国際的なネットワークを持った集団が組織的にMatch-Fixingを仕組んでいるのでないかとの認識が持たれ始めていた。欧州のトップリーグや代表チームにも処分や捜査が及んでいたところ、Europolは各国警察等と共同で捜査を行い、2008年~2011年の試合について、全世界で680試合以上にMatch-Fixingの疑いがあり、選手・審判・スタッフなど425人に疑惑が向けられていると公表した。また、Match-Fixingにより800万ユーロの利益が生み出され、そのうち200万ユーロが賄賂として不正関係者に流れているとも述べた。その後英国や豪州、チェコ、香港などで捜査や逮捕、リーグからの処分などが多数起こっている。

本連載では全4回にわたってMatch-Fixing事件及び疑惑の事例、なぜMatch-Fixingが行われるのか、現在スポーツ界内外でどのような対策が取られているのかについてお伝えできればと考えている。

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