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ソチパラリンピック 現地レポート
星野 恭子 氏

4. 大盛況だったソチ大会。そこから学ぶこと

■言葉の壁を埋める努力

今大会で活躍した約8,000人のボランティアの大半は「ロシア語しか話せない人」たちだったように思う。正確な数は分からないが、何とかコミュニケーションを取ろうと英単語を並べてみても、「?」という顔の人も少なくなく、気軽な会話はもちろん、必要な情報すら得られないこともあった。一方で、英語にプラスしてさらに1言語以上を話す語学堪能組もいて、ロシア語オンリーの人では手におえないときにどこからか現れて、あれこれ面倒を見てくれた。

大盛況の公式グッズショップ

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各国の報道陣が基地として集うメディアセンターに用意されていて、「なるほど」と思ったものの一つに、「便利なロシア語表現」集がある。「こんにちは」「ありがとう」「~はどこですか?」といったよく使う表現について、8言語(英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、韓国語、日本語)それぞれの表現に対応するロシア語が併記されていた。残念ながらあまり役に立つ場面はなかったが、心遣いの一つだと感じた。また、表示言語を切り替えることができる自動販売機なども導入されていた。さすがに日本語表示はなかったが、英語に切り替えられるだけでもずいぶん助かった。

欲を言えば、たとえば会場地図や交通網情報についてはイラストやアイコンを多用したものを用意するなど、言葉の壁を埋める工夫は他にもできるだろう。

■2020年東京大会に向けて

大会運営やボランティア体制など、ソチ大会は良い点も見直すべき点も含めて参考になることが多い大会だと思う。それらは各章で述べたので、最後に一点だけ追加したいと思う。

閉会式のテーマ「不可能から可能へ」

閉会式のテーマ「不可能から可能へ」

今大会、ロシアは69名の選手団を送り、メダル獲得は金30個を含む80個で、15個で2位に入ったドイツを引き離し、圧倒的な強さを見せた。この活躍こそが観客を喜ばせ、大会を盛り上げた大きな要因であったことは間違いない。

ロシア選手の活躍の背景には選手の発掘や育成、強化に国家的な努力と取り組みがあった。一例は銀メダルに輝いたアイススレッジホッケーチームだ。ソチ大会の招致定後に結成された新チームながら、わずか5年の強化期間でパラリンピックに初出場し、銀メダルにまで輝いた。その戦いぶりも立派で、予選グループを1位通過し、決勝戦では前回覇者のアメリカチームに食らいつき1点差での惜敗。徹底した強化策の賜物だろう。スキー競技でもロシア勢の躍進が光ったが、医科学サポートを含み、国策として強化に取り組んだ結果だと聞く。

こうした状況はロシアだけではない。開催国として2020年東京パラリンピックで日本選手の活躍を期待するなら、国を挙げての強化体制は不可欠だ。できるだけ早く真剣に取り組まないと、世界との差はどんどん開いてしまうだろう。それほど世界の競技レベルは上がっていると思い知らされた大会でもあった。でも、きっとまだ間に合う。6年後を見据えた対策を一日も早く。ソチを終えて今、強く思う。

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