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 第3回  スポーツによるまちづくり ~新郷村 須藤良美村長対談~

「チャレンジデーでは4回日本一」 スポーツが村づくりの原点に


 左:須藤良美氏(新郷村村長)右:渡邉一利(笹川スポーツ財団専務理事)
左:須藤良美氏(新郷村村長)右:渡邉一利(笹川スポーツ財団専務理事)

渡邉  村長室の扉は1年365日開けっ放しだと聞いています。

 須藤 その通りです。村は親睦と融和で成り立っていると考えています。
チャレンジデーを始めてから、村の雰囲気が和気あいあいとしてきました。チャレンジデーを始めたころは、村全体の高齢化が進み生産意欲が低下し村民の協調性、団結力が薄れてきている状況にあったため村づくり実行員会を作り、村を明るく元気にしようとしていたところでした。そこにチャレンジデーが飛びこんできました。

 渡邉
 チャレンジデーが村づくりのひとつのきっかけになったということですが、村をひとつにするためにはどのような具体的な取り組みが必要なのでしょうか。

須藤 農業と山があっての村ですから、第一次産業が元気でなければなりません。農家を助け、農家に生産の意欲を持たせる。それが行政のやるべきことです。
少子高齢化が進み、元気のない農業中心の村では、黙っていたら人がいなくなります。村民が豊かで幸せを感じる村づくりを実現するために健康づくりは欠かせません。チャレンジデーは村に健康と笑顔を呼ぶイベントであります。

 

 

人口減少・少子高齢化に伴う課題に対する施策や取り組み

渡邉 高齢化率が40パーセントを超えているという状況で、いろいろな施策を打ち出していると聞いています。

須藤氏(新郷村長) 須藤  ひとつは定住対策です。村内にある山の木を使って住宅を10棟建てて入居者を募り、抽選で東京や千葉、県内では青森市から42人が入居しました。現在では子どもが1人生まれ43人となっています。家賃が月3万5,000円で、子どもが1人いると5,000円安くなり、22年で住宅・宅地を無料で譲渡します。
 
渡邉 
子育て支援はいかがでしょう? 

須藤  学校給食や村営の学習塾の無料化を行っています。また、子ども1人に対して月1,000円の商品券を配り、地元の商店で買物をしてもらいます。

渡邉  村内には小学校が2つ、中学校が2つで高校はありません。人口の流出と関係があるのでしょうか。

須藤
 村の中学生は村外の高校へ行きます。高校に進学する際、昔は下宿をしたものですが、今は下宿所がありません。そうすると部屋を借りるわけですが、子どもだけで住まわすわけにはいかないと家族で高校に通えるところに引っ越してしまいます。ですから受験、進学を迎えると自然に人口が減っていく。この繰り返しです。
1年間に50人、60人と減り、生まれる子どもは10人くらいですからなかなか厳しい。だから産業が元気になって、ここで生活ができるという環境を作らなければなりません。

渡邉一利(笹川スポーツ財団専務理事) 渡邉  人口減の話になると結婚という問題も重要になります。

須藤  それも村の大きな課題です。結婚したい若い人はいるのですが、結婚する人は少なくなっています。これは都市部も同じなのかもしれません。村では婚活のイベントも開いています。最初は大勢でやりましたが、あまり効果はありませんでした。そこでお金をかけて大きくやるより、少人数で地元産の果物を食べたり、そば作りをしたほうが良いのではないかと考えました。こうしたほうが以前よりもうまくいっているようです。

渡邉  そうやっていろいろな手を打ち、人口減少を食い止め、村を元気にしようと努力しているのですね。

須藤  人が減っていくと、たとえば消防団などの活動も滞ってしまいます。結婚の問題はとても重要だと考えています。



村の農業と林業をもう一度元気にする

渡邉   村の産業は農業と林業が中心と考えてよろしいのでしょうか。また村にはどのような特産品があるのでしょうか。

須藤  そうです。ここではにんにく、長いも、葉タバコ、それから黒毛和牛の畜産をやっています。昔は酪農の産地でもありました。ところがいまは酪農家が5、6軒しかありません。飼育しているのは合わせて400~500頭くらいです。これらを村が助成していますが、高齢化が進み、せっかくの農地を手放す人も少なくありません。 

渡邉  畜産もやっていらっしゃる。

須藤  そこでいま黒毛和牛、肉牛の繁殖牛の畜産農家育成に取り組んでいます。鹿児島県などから優良牛を買い付け生産者の方々には購入牛の助成や買い付けのための旅費助成等を行い、生産意欲を高めています。

渡邉  やはり高齢化が進む中、新たな担い手を見つけるには、安定した農業経営が必要ということですね。

須藤  儲からない農業に後継者は育ちません。逆に畜産農家でも葉タバコ栽培の安定しているところには後継者がいます。村では米農家をもう一度元気にしようということで、米を自然乾燥させる天日米づくりに取り組み、これに補助金を出しています。機械を使わない自然乾燥は、手間はかかりますが、考えを切り替えて新しい米づくりに取り組み、消費者の方々に美味しいといわれるような新郷村の米をPRしていくつもりです。

渡邉  農業収入を上げ、雇用を生み出すために、生キャラメルせんべいなどを作って販売しているとも聞きました。いわゆる6次産業ということでしょうか。

須藤
 現在は公社(一般財団法人 新郷村ふるさと活性化公社)で、若い人が20人くらい働いています。そこで生キャラメルせんべい、飲むヨーグルトなどを作りヒット商品となっています。飲むヨーグルトはアメリカのニューヨークにも輸出しています。日本からアメリカに畜産物の輸出はほとんどないのですが、アメリカで評価され、注文がくるようになり励みになっています。

渡邉  ほかにはどんな取り組みをしているのでしょうか。

須藤
  甘草(かんぞう)の栽培もしていて、大分県の製薬会社と提携して、それを利用した飲料水の開発にも取り組んでいます。また、山にはシイタケの原木があり、高齢者が山に入ってシイタケを採っています。シイタケを売ることで収入が得られ、山を歩くことで健康づくりにもなっています。

渡邉   里山に入って収入を得て、健康づくりにもつながる。まさに一石二鳥というわけですね。

須藤
  それを目指しています。きれいな山を将来の宝にするためには、村がテコ入れして山を整備しなければなりません。国だけに頼らず、村も負担して山づくりをしています。山づくりで出た間伐材を村の温泉施設「新郷温泉館」の燃料にしています。
会員登録している森林所有者ら74人がスギの未利用材を出荷すると、相場より高い1立方メートルあたり6,000円分の地域通過「郷(さと)やま券」が支払われる仕組みとなっています。雑木は同量で7,000円分。使用期限は6ヵ月間となっており、村内の商店や事業所で使用できます。
スギは森林組合が実行委員会から4,000円で買い取り、薪に加工した後、温泉館へ売却。雑木は温泉館が実行委員会から5,000円で買い取り、いずれも木質ボイラーの燃料に利用されます。出荷と買い取りの差額分2,000円は、村が実行委員会に補助金として交付しており、山づくりに励む方々に大変喜ばれています。温泉の燃料代は年間1,200万円です。その1,200万円を森林整備にあてると山の人たちがもっと元気になるという考えです。


スポーツが村づくりの原点に

渡邉  現在、新郷村には村民が気軽に参加できるスポーツプログラムなどはあるのでしょうか。

須藤
  村民大運動会や村民体育大会、綱引き大会など、いろいろなスポーツ行事を開催しています。恒例行事のため性別・年代問わず参加していて、イベント終了後の懇親会も盛り上がりを見せていますね。また、チャレンジデーを実施するきっかけをつくってくれた三ツ岳スポーツクラブの存在も大きい。約100人の会員がいる同クラブでは、ノルディックウォーキングや体操などのスポーツ教室、ゆったどウォーキング(ゆったど=ゆっくりと)やスキー体験などの単発イベントを開催しています。

チャレンジデーの様子 渡邉  チャレンジデーが村を元気にすることに役立っているというお話がありました。村には新たに入居された方も、旧来の住民の方もいます。さまざまな交流をチャレンジデーがもたらしているでしょうか。

須藤 チャレンジデーは村民の交流のみならず、他市町村との交流も深めています。チャレンジデーを開催すると、近隣の五戸町からも「新郷村がんばれよ」と応援にきてくれます。これは交流が深まります。毎年来てくれる方からは「今年はいつやるんだ」と聞かれます。村外の方も楽しみにしています。

渡邉  チャレンジデーを2012年から5年やって4回日本一に輝きました。村民の方々に具体的な変化はありましたか。

須藤
  元気のない村は会議を開いても、いいアイデアを提供しても人が集まってきません。昔は行政が何かしても村民の興味は薄かったように思いますが、チャレンジデーに取り組むにつれ、村民が自ら積極的に会議などにも参加するようになりました。行政にただ任せるのではなく、自分たちでがんばろうという意気込みが出てきました。
チャレンジデーの実行委員会も、あらゆる団体から参加してもらい、みんなで意見を出し合っています。スポーツが村づくりの原点というのはそこだと思います。

渡邉  チャレンジデー2016の結果報告会に、各種団体の方が70人も集まっているのでびっくりしました。いい循環が生まれているのだと思います。一方で、村の人口はどうしても減り、移住された方はなかなか戻ってこないという現実があります。そうした方々はどのようにすれば村に戻ってくるとお考えでしょうか。

須藤  
やはり地域が元気にならなければ戻ってくる人はいないでしょう。大きな工場を誘致するという考えはありませんが、農業・山での生活の見通しが立つ産業の育成をしないといけません。ここに住んでよかったなと、幸せを感じる地域でなければなりません。そこを担うのが行政です。これからも産業の育成、村民の健康づくりに力を入れ、光の射す村づくりを進めていきたいと考えています。

 

 


須藤良美 氏
対談者
須藤良美氏
新郷村 (青森県) 村長

昭和15年(1940年)尾上町(現平川市)生まれ。
昭和35年(1960年)に農業改良普及員として新郷村役場に入り、農業指導に邁進。
平成17年(2005年)新郷村村長に就任。現在3期目。

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