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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツが市民の誇り・財産となる 栃木県宇都宮市 後半

スポーツは誇り・財産である

プロスポーツチームは市民共有の財産

栃木県宇都宮市 佐藤 栄一 市長

渡邉 市長が考えるスポーツの価値を教えてください。

佐藤 スポーツは、市民が共有できる財産です。宇都宮市には、自転車のプロレーシングチーム・宇都宮ブリッツェン、プロバスケチームのリンク栃木ブレックス、J2リーグで活躍する栃木サッカークラブ(栃木SC)と、3つのプロチームがありますが、市民がチームを応援することで、心を共有し、さらには宇都宮市民としての自信を養うことができると考えています。その考えに則って、「施設愛称によるプロスポーツ応援事業」を実施し、ネーミングライツではなく無償で、宇都宮市サッカー場を栃木SC宇都宮フィールドとし、宇都宮市体育館をブレックスアリーナ宇都宮と命名しました。
実は、宇都宮市民はあまり自慢をしたがらない市民性のようなものがあるのですが、スポーツチームが活躍してくれれば、全国に誇れる自慢にもなります。つまり、スポーツは宇都宮市のPRツールのひとつなのです。ブレックスや栃木SCが活躍すれば、それを見てくださった方が「宇都宮市ってどこだろう」と興味を持ってくれるかもしれません。あるいは、ジャパンカップ観戦のためにたくさんの方が宇都宮市を訪れてくださいます。メディアもこぞって報道してくれますから、スポーツは高いPR効果が期待できます。スポーツを通じて、宇都宮市の良さを市民そして全国の人々にアピールしていきたいと考えています。

うつのみやサイクルピクニック ブレックス2010年リーグ優勝時のイベント

渡邉 市民とプロチームは、どのような交流をされていますか?

佐藤 3チームはそれぞれ、市民参加型のイベントや子どもたちを対象とした特別レッスンなどを開催しています。ブリッツェンは、自転車の安全教室ウィーラースクールを開催しています。ブリッツェンが特別協力しているうつのみやサイクルピクニックは、参加希望者が非常に多く、募集開始からすぐに募集人員に達してしまいます。ブレックスには、市が推進している自治会応援プロジェクトに協力いただき、地域のイベントで自治会加入を呼びかけてもらっています。

渡邉 子どもたちとプロチームとの交流は、学校の授業や部活動にどのように影響していますか?

佐藤 ブレックスは市内の小中学校をめぐり、体育の特別授業というかたちでバスケットボールを指導していますから、もともとバスケットボールが好きな子どもたちだけではなく、全体的にバスケ人気が広がっています。栃木SCも同様に小中学校でサッカー教室をひらいていますので、全国的なサッカー人気もありますが、サッカーを楽しむ子どもたちは増えています。

スポーツの力で100年続くまちに

渡邉 まちづくりを考えるうえで大切なことを教えてください。

佐藤 全国各地の自治体を例にみても、まちづくりには実にさまざまな方法がありますが、それをわがまちで同じように実施しても絶対に成功しません。成功するまちづくりに方程式はありませんから。ですから、チャンスやきっかけがあるならとにかくやってみることです。失敗したらまた別の方法を試す繰り返しです。そのまちに合う方法をみつけたら、どんどんふくらませて、まちづくりの武器にするのです。宇都宮市の場合は、それが自転車でした。今後も自転車をわがまちの宝として、さまざまな事業を展開していきます。

渡邉 宇都宮市をどのようなまちにしたいとお考えですか?

佐藤 私の理想は、100年先も誇れるまちです。栃木県の県庁所在地といえども、宇都宮市を発展させるための施策を続けなければ、100年先に宇都宮市がなくなってしまうかもしれません。実際に、市町村合併では小さな市町村が大きな市町村に吸収されていますから。実は、宇都宮市は全国調査で「住みよさ」や「民力度」など全国第1位という名誉ある評価をいただいています。しかし、そのことを知らない市民の方も多いのです。

100年先も持続しているまちをつくるためには、宇都宮市に住んでいる人、勤務している人、商売をしている人の皆にとって魅力あるまちでなければなりません。そのなかで課題となっているのが、少子高齢化です。今後、生産労働者が減り、税収が減る一方で、医療費や介護費などの義務的経費は増えていく、そのためには財政改革、行政改革が必要ですが、改革を実現するには市民の力が必要です。ですから、先ほども申し上げたように、市民一人ひとりに、宇都宮市民としての誇りを持っていただくためには、スポーツが欠かせないツールなのです。

さらに、市民の健康づくりのためにもスポーツが必要です。簡単な運動であれば、年齢に関係なく、いつでも、どこでも毎日楽しむことができます。スポーツに親しむことで、健康で明るく活気あるまちをつくり、少子高齢化の課題を迎え討ちたいと考えています。
スポーツには、する人、観る人を問わず、私たちに夢や希望、元気を与える力があります。そうしたスポーツの力を、まちづくり、人づくりに積極的に活用していくべきだと私は考えています。

渡邉 首長にとって重要な仕事は、夢を語り、その夢の実現に向けて具体的な政策をつくり、実行することです。市民の方がうらやましくなるほど、佐藤市長は素晴らしいリーダーだと思いました。ありがとうございました。

宇都宮市の実力が分かるランキング(資料提供:宇都宮市)
スポーツによるまちづくり