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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
Knowledge

日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

独自のスポーツ事業で洪水対策も行う 神奈川県横浜市 前半

Vol.4・神奈川県横浜市

子どもから高齢者までの市民に加えて、プロスポーツチームを含めた多角的なスポーツ事業を展開している横浜市。また、日産スタジアムを含む新横浜公園は、頻発する鶴見川の洪水対策として遊水地機能を持っている。スポーツ事業、新横浜公園の各担当職員に実情を伺った。

多岐にわたるスポーツ事業

スポーツと市民をつなぐ架け橋として

スポーツ振興課長・小泉 英一 氏

現在、横浜市のスポーツ振興事業は、2011年3月までを目途に進めてきた横浜市スポーツ振興基本計画「いきいきスポーツプラン2010~スポーツで育む地域とくらし~」を踏襲しながら進めています。あらたに横浜市中期4か年計画を策定し、そのなかの施策No.13「スポーツや学びで育む豊かなくらし」を軸にさまざまなスポーツ事業を進めているところです。この施策では、目標達成に向けた5つの事業を柱としています。

横浜市中期4か年計画・施策No.13「スポーツや学びで育む豊かなくらし」における目標

目標

目標達成に向けた主な事業

5つの事業

1.市民参加型スポーツイベントの充実
これについては、横浜マラソン大会や市民体育大会の開催が挙げられます。横浜マラソン大会は、今年で31回目を迎える歴史ある市民マラソン大会です。そのため、参加希望者が非常に多く、募集開始の数時間で定員に達してしまいます。より多くのランナーの方に参加いただくにはどうすればいいか、来年以降の運営に向けて検討しています。

2.地域におけるスポーツ活動の支援
スポーツ推進委員らによって誰もが気軽に楽しめるスポーツを推進しています。子どもも高齢者も一緒になって身体を動かすことを目的としており、グラウンドゴルフやソフトバレーボールなどのさわやかスポーツを実施しています。

3.大規模スポーツイベントの誘致・開催
今年9月には、2011トライアスロン世界選手権シリーズ横浜大会を開催しました。当日は、多くの市民に加えて市外からもたくさんの観客が来てくださいました。山下公園やみなとみらいを中心としたコースで、横浜市の魅力を知っていただくよい機会になったと思います。加えて今年は、第87回日本学生選手権大会水泳競技大会を横浜国際プールで開催し、期間中はたくさんの大学生が集結しました。

プロスポーツチームによる活動例

4.横浜熱闘倶楽部事業の推進
「横浜熱闘倶楽部事業」とは、市内にあるプロスポーツチームによる各種イベントなどの実施のことです。横浜市では、横浜DeNAベイスターズ、横浜FC、横浜F・マリノスとこれまで三つのプロスポーツチームが拠点として活動していますが、さらに今シーズンからbjリーグのプロバスケットチーム、横浜ビー・コルセアーズが始動しました。これまでの3チームの選手には、地域でのイベントや学校でのスポーツ教室を行っていただいています。加えて、食育事業にも協力をいただいています。例えば、三浦和良選手にサッカー教室を行っていただいたあとに、子どもたちと一緒に給食を食べていただき「子どものころから好き嫌いなくなんでも食べて、サッカー選手になったよ」という話をしていただくだけで、子どもたちは嫌いなニンジンやピーマンを食べるようになります。些細なことですが、選手たちと学校あるいは地域とのつながりが、子どもたちの健康的な身体づくりという大きな結果に結びつくと考えています。

5.【新規】スポーツ等による市民の健康づくりの推進
市民局だけではなく健康福祉局との共同で進める事業です。子どもから高齢者まで、市民の誰もがスポーツを通じた健康づくりを行えるように進めています。

市民が主役のイベントや施設の運営

横浜マラソン大会 トライアスロン世界選手権シリーズ

スポーツ推進委員の活躍
横浜マラソン大会や、2011トライアスロン世界選手権シリーズ横浜大会など、多くの人が集うイベントでは、スポーツ推進委員の方にボランティアとして協力いただいています。横浜市には、約2,800の自治会町内会があり、各自治会から1名ずつスポーツ推進委員を選出していただいています。横浜マラソン大会の場合は、その約半数のスポーツ推進委員の方にご協力いただきました。各方面から非常に好評を得ていて、イベントを開催する際、神奈川県警から「スポーツ推進委員さんが沿道警備にあたるならいいですよ」と言われているほどです。

イベントの主催者にとっても、大きな経費削減になります。アルバイトを募集してお願いするとなると、人件費が必要です。横浜市ではスポーツ推進委員はボランティアですので、基本的には無報酬で、交通費とお弁当などをお渡ししています。もちろん大きな大会のほかにも、各自治会町内会で開催する区民祭や運動会などでもご活躍いただいています。

総合型地域スポーツクラブの充実
また横浜市では、総合型地域スポーツクラブを18のすべての区に設置する活動を進めており、そこでもスポーツ推進委員の方に協力いただいています。

総合型地域スポーツクラブは地域密着がモットーですので、市民局としても地域の方たちとのつながりづくりに気を配っています。さらに、運営も地域の方にお願いしますので、やる気を持続していただくためにはどのような仕組みが必要かというのも私たちの課題です。運営方法はクラブによってさまざまなのですが、スポーツ推進委員の方や町内会長さんが代表者として活動しているクラブが多数あります。

総合型地域スポーツクラブの多くは、学校施設を利用しています。横浜市の教育委員会では、2007年ごろから学校開放事業の自立化を進めており、2010年には学校開放をしているすべての学校で自主自立化をして活動しています。各学校には、学校開放運営委員会として文化・スポーツクラブを設置しています。文化・スポーツクラブに施設を取りまとめていただいています。この学校開放事業も、全国の自治体に比べて先進的であると自負しています。学校開放事業の延長として総合型地域スポーツクラブに移行したクラブもあり、2011年12月現在13区21クラブを設置しています。

地域に密着したスポーツ活動では、参加する方はもちろん企画運営する方も地域に住む方たちなので、活動を通じて顔見知りが増えたり、また高齢者の方との結びつきができます。大規模なスポーツイベントでは、私たちも市民の方と話す機会が増えますから、スポーツを通じた事業は人と人とのつながりを生む効果が大きいと実感しています。加えて、12月にはTOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップジャパン2011が日産スタジアムで開催されるなど、大規模なスポーツイベントの開催も横浜市の強みなので、観るスポーツ、するスポーツ、支えるスポーツの3つの柱で横浜市を盛り上げていきたいと考えています。

スポーツによるまちづくり