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第5回World Sport for All Games報告

TAFISA-UNESCO International Forum 報告

前回大会でTAFISAとUNESCOによるフォーラムが開かれ、伝統スポーツの保護と推進に向けた行動指針「Busan Appeal」が採択された例に則り、本大会でも会期中に「TAFISA-UNESCO International Forum」が開催された。同フォーラムは、「地域社会の発展に果たすスポーツと文化の役割(The Role of Sport and Culture in Community Development)」をテーマに据え、李TAFISA会長、UNESCOのアレクサンダー・シシュリック氏(アンチドーピングとスポーツ担当チームリーダー)、シャウレイ市長によるパネルに始まり、ウルフギャング・バウマンTAFISA事務局長、シシュリック氏による基調講演、TAFISA理事ら各国のスピーカーによるプレゼンテーション、と続いた。

表題 : Games of the Past - Sport of Today

講演者 : ウルフギャング・バウマン氏(TAFISA事務局長)

本講演の中で最初に「我々のスポーツは、たった一つの価値観に基づく世界に向かっているのだろうか?(One way to a single world of concept of sport?)」との問題を提起し、多くの国のスポーツ関係者がオリンピックを最優先する傾向に警鐘を鳴らした。一方で、「スポーツの進化」を促すキーワードとして「民族の伝統と大衆スポーツの融合」、「音楽との連動」、「伝統衣装の重視」などをあげ、「オリンピックと一線を画す第2の世界のスポーツ(A second world of sport beside the Olympic one)」という表現で、その重要性を説いた。
また、スポーツの多様な側面を尊重し、誰もが楽しめるスポーツのあり方について、今こそ真剣に考える時だとの持論を披露した。

表題 : Furthering Social Inclusion
through Traditional Sports and Games

講演者 : アレクサンダー・シシュリック氏(UNESCO)

モンゴル、トルコ、ベトナムにおける伝統スポーツイベントを例にあげ、そうしたイベントにおいて障害者や低所得者層がスポーツをするにとどまらず、物販などの機会を与えられていることの重要性に言及した。スポーツに携わる我々は伝統スポーツがもつ、そうした人々を巻き込む(Social Inclusion:社会的包摂)力について、きちんとした裏づけをもって社会に訴えるべきと強調した。

表題 : Sport and Culture in Community Development

講演者 : フィン・バーグレン氏(Gerlev 体育&スポーツアカデミー、デンマーク)

蔓延する「個人主義(Individualism)」の影響によりヨーロッパではスポーツボランタリズムは減少していると見られがちだが、必ずしもそうではなく、スウェーデン、デンマーク、オランダなどが牽引していると指摘し、中でもデンマークでは数あるボランティア活動のなかでもスポーツボランティアの実施人口が最大であることをデータで示した。
また、今後、地域のスポーツと文化の発展を牽引させるのは「豊かな生き方」、「社会的一体感」、「(スポーツを)楽しむ適切な場所」に対するニーズであると指摘し、発展に資するスポーツプログラムを実施する上では、「政治(公共サービス)的コミットメント」、「スポーツ・フォー・オールの重要性に対する地域全体の共通理解」、「組織化された実行部隊」の3つが必要であると論じた。

所感

今回、TAFISA主催の大会に初めて参加した。人口約13万人のシャウレイ市に60カ国から約7,000名の参加者という数字の大きさは、町の目抜き通りに並ぶ飲食店の連日のにぎわいや、アクロバットなどを駆使して大々的に行われた開会式などでは感じることが出来た。一方、会期中にスタジアムで行われた各国代表団によるデモンストレーションや体験会、祝賀祭などへの一般住民の積極的な参加があまり見られなかった点は残念であった。

UNESCOとのフォーラムや開会・閉会式において登壇者の多くが、「レガシー」という表現を用いて、国の首都でもない同市に世界中から伝統スポーツ関係者が集い、ネットワークを築いたことに賛辞を送っていた。より具体的なレガシーの検証にあたっては、本大会を通じてどれだけ多くの一般住民が伝統スポーツの素晴らしさを再認識し、スポーツ活動を日々の生活に取り入れるようになったか、や、市政府のスポーツ振興施策(予算を含む)に大会前後で変化があったかなどにも注目する必要があると思われる。また、各国の伝統スポーツが世界共通のルールに基づかず、民族や歴史の違いを反映して異なっていること、その違いを尊重し理解することが国や民族の違いを超えた相互理解につながるといった大会の趣旨を地元の子ども、青少年に向けて発信するような教育プログラムもレガシーの一環として実施すべきと感じた。大会運営をボランティアとして支えた多くの若者たちが将来、またこうした機会を通じて同市の活性化に尽力することに期待したい。

笹川スポーツ財団 国際担当 玉澤 正徳
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