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チーム・ニッポンの勝利 ~東京五輪決定ノンフィクションライター 松瀬 学 氏

総合力の圧勝 60-36


ひと言で言えば、『総合力』の勝利だった。前回2016年招致の失敗を受け、今回の招致活動は戦略がきちんとし、徹底していた。つまり丁寧だった。いや16年招致からの積み重ねがあったからこその、深くて広い人脈、総合力だった。故古橋広之進さんがいたからこその水泳人脈、故松平康隆さんの築いたバレーボール人脈も忘れてはならない。

竹田理事長はこの1年、50カ国以上を飛び回り、IOC委員全員に会って、東京招致を誠実に訴えてきた。森喜朗元首相もロシアやキューバなどに飛んだ。水野正人招致委専務理事も、荒木田裕子招致委理事も、もう数えきれないくらいの国際大会に顔を出し、IOC委員との接触を図ってきた。安倍首相も、外交の合間に東京を売り込んだ。

「総力戦」で戦った。スポーツ界だけでなく、政界も、財界も、そして事実上、皇族もがロビー活動に参加した。最終プレゼンテーションで勝利のカギとなった安倍首相の「福島第一原発の汚染水漏れ」に対する真摯な発言も、IOC委員の心をつかんだ。

ロビイングにしても、最後はエレガントな高円宮妃久子さまも加勢した。安倍首相も、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されたロシアから駆け付け、IOC総会の開会式セレモニー後のパーティーには加わった。招致委幹部は、こう表現した。「ロビイングの3本の矢」。東京のイメージアップに貢献した高円宮妃久子さまと安倍首相、竹田理事長の3人を指していた。

さらに東京は最終プレゼンの出来がよかった。久子さまの感謝のスピーチから、被災地(宮城県気仙沼市)出身でパラリンピアンの佐藤真海の情感あふれる語り、安倍晋三首相による「汚染水問題」の不安の払拭…。IOCの心に全てが伝わったようだ。
その結果、決選投票では東京が60-36でイスタンブールを下した。圧勝だった。

寿司とシャンパン

ロビイングの中心人物は言う。
「敵失もあったけれど、東京の汚染水問題の打ち消し方がよかった。ソチ五輪とリオデジャネイロ五輪の準備が遅れていることも、確実な運営能力を誇る東京にプラスに働いた。世界各地からまんべんなく票を獲ることができたことが大きい」

翌日のブエノスアイレスのスポーツ新聞「Ole」には、こう見出しが躍った。
<Sushi con champan!>(寿司とシャンパン)

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