Search
国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
Knowledge

日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

女子サッカー:中学生年代の現状と課題/第3回 アンジュヴィオレ広島U-18 監督 柴村和樹氏に聞く 2

広島市内で女子サッカー部がある中学校は一校だけ!?

―実施人口に関して、小学生はある程度の人口がいるのに、中学生でガクンと減ります。部活動や町クラブなど、広島では数が足りているんでしょうか?

柴村 ニーズはもっとあると思いますが、足りていないかもしれませんね。プレーする場所がなくて、サッカーを辞める生徒もいます。現実的に競技レベルが高い女子はプレーできるところはありますが、そうじゃない生徒、あるいはやってみたいと思っている生徒には、道が拓かれていないのが現状です。これは広島だけの問題ではないと思います。

―中学校の部活動はどうでしょうか。広島は男子サッカーだとJ1クラブもユースもある。高校の強豪校もありますが女子は?

柴村 女子のサッカー部は、県内で1校しかありません。2013年に創部して今年4月から新入生が入って部員が11名になると聞きました。

―1校ですか!? 厳しいですね。女子サッカー部も町クラブもないとなると…

柴村 ほかの種目を選択するか、あるいはサッカーを辞めてしまうか。広島でこの現状ですから、もっと厳しい地域もあるでしょうね。

―募集に関して、クラブとして気にかけていることは?

柴村 体験会を行い、スタンスを事前にハッキリ表記して、それを理解した選手が集まれるようにしています。

―場所の問題は。

柴村 小学校か中学校のグラウンドを使わせてもらっています。ありがたいことに毎回取れています。東京や大阪などの大都市はわかりませんが、このクラブでは場所は確保できています。

―連載の第1回と第2回でも話が出てきたのですが、男子の中に混ざってプレーできる女子は、どんな環境でもプレーできる。でも女子の中には、そういった生徒のプレーをみて“私はできない”と思ったり、本当はサッカーがしたいと言わない生徒がいるという…。こちらにもそういったケースはありますか?

柴村 アンジュヴィオレ広島というクラブは、広島でサッカーに関わっている人たちの中では知名度が上がってきているので、サッカー経験のある女子が少なからず入会してくれます。ただ、サッカー経験がなくても、取り組む気持ちが大事だと思っています。しかし、未経験者がサッカーのクラブへ飛び込んでいくのは、相当な勇気とやる気がいることと思います。そういった面では、さまざまな特色のあるクラブが地域にあれば、選手たちにとっては、良い環境だといえるのではないでしょうか。

なでしこジャパンに選ばれる選手を育てたい

―ちなみに体験会というのは、セレクション(入団試験)のようなものですか。

柴村 うちはU-12がありますが、チームではなくてサッカースクールなんです。そこからU-18に上がってくる子たちも、ほかのチームやスクールから来る子も全員体験会に参加してもらいます。
セレクションとまでは言わないですが、体験会では厳しいトレーニングを行います。それでもここでプレーしたいという選手に入ってほしい。募集用紙には『なでしこジャパンを目指す選手』と表記していますが、僕は本気でそのレベルの選手を育成しようと思ってます。そんななか、11名の選手が入会してくれました。

―トップレベルで活躍できる選手に必要なものは何ですか?

柴村 トップレベルで活躍していくには、他人より秀でた技術、身体能力は必要だと思いますが、そのレベルに到達するためには、まず気持ちだと思います。本当に頑張って上のレベルへ行きたい、と思えない向上心のない選手に、いくら技術や身体の使い方を指導したところで、ある程度のレベルまでにしかいけないと思っています。

―女子の指導者として大切にしていること、課題は?

柴村 男子以上に指導者ありきの世界です。指導者次第で選手は180度変わる。指導者にも伸びしろがないと、指導者が思う以上の選手に育たないので責任は重いです。

―日本がアメリカやドイツなどのように、女子サッカー大国になるためには?

柴村 小、中学生年代の環境を整備すれば裾野は広がっていくと思います。ただ、果たしてそれで強くなるのか。上のレベルまでもっていけるのか、もっと伸ばせるのか。ピラミッドがあるとすれば、下(裾野)と上(強化)両面へのアプローチが必要です。そのためには、“個”を育てていかなければ。競技実施人口を増やすことだけが大事ではないと思います。