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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

女子サッカー:中学生年代の現状と課題/第4回 日本サッカー協会 野田朱美氏に聞く 2

Jリーグとの連携を大事にしていきたい

―今後の取り組みや戦略を具体的に教えていただけますでしょうか。

野田 ひとつ考えているのが、Jリーグとの連携です。女子の活動を活発にするため、特に育成年代のスクールをクラブで作っていただけたらと思っていました。
クラブが女子のトップチームをもとうと思っても、財政やクラブライセンスという課題があって簡単なことではありません。しかしU-15年代の生徒に対して、まずスクールを作ってほしいのです。これなら可能なクラブもあると思います。

『女子版・高円宮杯』をぜひ実現させたい

―Jリーグとの連携以外にも目標はありますか?

野田 男子でいう高円宮杯の女子版を実現させたいです。U-18やU-15にとって強化が進むからです。
もし実現したら、学校の運動部をはじめ、Jクラブのレディースや町クラブなど、全て網羅できます。ですから「高円宮杯」という冠をいただけるのだと思います。今はそこには至っていません。Jクラブだけが女子チームをもてばよいのではなくて、町クラブだけでもなくて、学校だけでもない。実現に向けて、自分たちが中心となって関係者と調整しながら、地道にコツコツと努力していくことが大事です。

日本の女子サッカーの強さの秘密とは

―野田さんご自身の中学生時代のサッカー体験を聞かせて下さい。

野田 私は中学1年生から読売クラブの女子部に、ほぼ一期生として加入しました。同級生には菊原志郎さん、ひとつ上には北澤豪さんがいましたが、男女で混合の練習や試合は当たり前でした。
これは私の世代だけでなく、現在のなでしこジャパンの多くの選手が経験しています。澤穂希選手は府中にあるチームで中村剛憲選手と、岩渕真奈選手は武藤嘉紀選手とトレセンで一緒でした。女子の日本代表が強い理由の一番の要因はここにあるんです。子供時代に男女の垣根なくプレーしたことが強化につながっています。

―海外でも同じようなケースはありますか。

野田 たとえばドイツでは、U-20女子のトレセンチームと、U-17男子のトレセンチームで練習や試合をしています。ここでも女子は強化につながり、男子はジェントルマン精神を養えるそうです。

「世界を目指せ!」―中学生時代の指導者からの忘れられない一言

―指導者からの言葉やエピソードで印象に残っているものがあれば教えて下さい。

野田 すでに亡くなられましたが、かつて読売クラブの女子チームで監督を務められていた相川亮一さんに言われた一言があります。
『お前は世界を目指せ!』
世界を目指せ、国内に小さく収まるなと。中学生の私にとって世界なんか見たことありません。でも、毎日そう言われて、知らない間に“いつか世界を”と意識するようになりました。そのお陰で今日の私があると思いますので、相川さんには今も感謝しています。

中学生にも“なでしこスピリット”を受け継いでほしい

―野田さんは女性初のJFAの女子委員長、就任されて一年が経ちました。振り返られていかがでしょうか。

野田 この一年間にあらゆる現場をみた結果、強い代表は強いリーグがあってこそ、と思いました。強いリーグにはしっかりした育成組織があり、そのしっかりした育成組織は地道な普及活動あってこそです。当たり前のことですが、これを痛感した一年でした。カナダ女子W杯に向けて、日本代表だけを強化しても世界一には絶対なれないということです。

―最後に野田さんから、中学生のサッカー選手にメッセージをいただけますか。

野田 これは女子代表が始まって、今も脈々と受け継がれているものです。

リスペクトする
感謝の気持ちを忘れない
あきらめない心を持つ

指導者や仲間、そして対戦相手をリスペクトする。サッカーに関係する全てのことに感謝する。最後まであきらめない。これは試合だけではなく、日々の生活においても大切なことです。この“なでしこスピリット”を中学生にも受け継いでいってほしいです。