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伝統競技レスリングが存続 ~迷走のIOCノンフィクションライター 松瀬 学 氏


2020年東京五輪で実施される競技の残り1つにレスリングが決まった。8日、ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会。国際レスリング連盟(FILA)副会長の福田富昭・日本レスリング協会会長はホッとした顔を浮かべた。

「緊張の連続でしたけど、やっと心が晴れた気分になった。よかった。日本のレスリング界としては、東京五輪決定に次ぎ、レスリングが五輪に戻ることができた。金メダルを2つ、獲ったようなものです」

投票前の候補競技のプレゼンテーションで、レスリングは1896年の第1回近代五輪から実施の『伝統競技』であることと子どもたちへの広がりをアピールし、時代にあった改革努力も訴えた。結果、投票(有効投票数95)では、1回目に過半数の49票を集め、野球・ソフトボール(24票)、スカッシュ(22票)を抑えた。

レスリングは除外対象となってから、観客にわかりやすくするためのルール変更や、男女比をできるだけ近くするための階級変更なども行ってきた。レスリングのオリンピアンで衆議院議員の馳浩さんの言葉を借りると、「IOCによる(レスリングの)外科手術が見事に成功したカタチ」となる。

ブエノスアイレスでレスリングの存続アピールを手伝ったロンドン五輪金メダリストの小原日登美はこの日、午前中に日本で合宿中の吉田沙保里らからメールをもらっていた。「いよいよだね。こっちから存続を祈っているよ」と。

小原は言う。
「ロンドン五輪の時と一緒で、うれしさとホッとした気持ちでいっぱいです。東京五輪でレスリングがなかったらさみしいので、ほんとよかったです。どんなカタチでもいいから、東京五輪でレスリングをサポートしたい」

東京五輪の時には39歳。青森県八戸市出身の小原は真顔で言葉を続ける。

「現役でやりたいと思っても身体がついていかない。まずは語学をマスターしようと思います。まだ標準語も厳しいので…。標準語と英語が目標です」

IOCの迷走に振り回された競技団体

今回の一連の除外&追加騒動は何だったのだろう。そもそもレスリングが除外対象となるのがおかしかったのである。

わずか15人のIOC理事会(会長、理事14人)で五輪の中核競技から除外を決められ、IOC委員や競技団体からの猛反発を食らうと、方針を一転して5月末の理事会では追加競技の候補3競技の1つに加えた。

IOC理事会の大会の肥大化を抑えながら、新たな競技の導入で五輪の活性化を図るという理念はわかる。でも除外の対象競技を決める際にはIOC理事会内の利害や権力バランスがものをいうのだろう。

はっきり書く。IOCの競技除外・追加のプロセスは間違っている。追加をIOC総会で決めるなら、除外だってIOC総会で決めるべきである。

福田会長は漏らした。
「初めての経験でした。まさか外されると思ってなかったのに外され、なんとか戻ることができました。初めてだから、何と言ったらいいのか。ま。FILAが改革するきっかけになりました。この苦労は、これから再び頑張る土台になると思います」

ミステイクというか、IOCの迷走のお陰で、レスリングなどの競技団体は多額の金と労力を使うことになった。なのにIOCは反省の言葉がひとつもない。ナンダッタノダ、これは。野球・ソフトボール、スカッシュの関係者の心中は察して余りある。

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