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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

セミナー「子供のスポーツ」

チャレンジデーとスポーツによる町づくり

北海道上川郡の鷹栖町、愛別町、東神楽町が農繁期の終わる秋に「B&G秋のチャレンジデー」を行った。3町長はこのチャレンジデーの実施により何を得たのか。またスポーツによる町づくりをどのように進めていくのか。これまでの取り組みから今後の展望まで、鷹栖町の谷寿男町長、愛別町の前佛秀幸町長、東神楽町の山本進町長の3人に、愛別町農村環境改善センターで話を聞いた。

─まずは町長ご自身のスポーツ観、もしあればご自身のスポーツ体験についてお聞かせください。

谷寿男氏(鷹栖町長)

前佛秀幸氏(愛別町長)

前佛 私のスポーツ履歴はこれといってありませんが、役場に勤めましてから社会教育畑に10年と長く勤めました。その中で子どもたちのスポーツ活動に関わり、スポーツが子どもたちにとてもいい影響を与えると実感しました。自分の子ども3人にもバドミントンをやらせました。今の時代の子どもたちには、できるだけスポーツに触れてほしいと考えています。
山本 私はそんなにスポーツが得意な方ではないのですが、中学校のときは卓球、高校1年生のときはテニス、大学生ではサークルでテニスをやっていました。今はスポーツのイベントに積極的に参加するようにしています。今年も北海道マラソンで11キロを走り、美瑛で開かれた自転車大会にも出場しました。そうした大会では本当に多くの方々がスポーツに親しんでいました。やはり地域を挙げてスポーツを楽しむことは、私たちの生活を豊かにすると思います。
自分は小学校のときは少年団で野球をやっていまして、そのあと中学、高校では卓球をやりました。役場に就職してB&Gの育成研修で沖縄に3カ月間派遣してもらい、そこで海洋スポーツを教えてもらいました。ただですね、小学校のときに「肩が冷えるからプールに入るな」という野球の教えがあって、全く泳げないで沖縄に行ったんです。それでずいぶん苦労しました。そのときに泳げない自分を仲間が助けてくれ、最後は試験にも全部通りまして、あきらめずにコツコツ努力することは大切だな、と沖縄で教わったわけです。その後は水泳少年団を立ち上げたり、クロスカントリースキー大会を20年以上事務局長としてお手伝いさせてもらっていたりしてスポーツに関わっています。

─町長という立場で、スポーツをツールにした町づくり、健康づくりについてどのようにお考えでしょうか。

山本進氏(東神楽町長)

前佛 広く子どもから高齢者までスポーツに触れていただきたいのですが、年齢に応じて求めているものはちょっと違うのかなと思います。小学生は成長過程ですから、体力だけでなく、仲間を大切にする気持ちや精神面もスポーツを通じて養ってもらいたい。ある程度高齢になると健康の維持ということでスポーツに触れていただきたい。特に現在は高齢化社会ですから、健康な寿命を延ばしていただきたいと考えています。
うちの町は「生涯元気」という合言葉で運動の日常化に取り組んでいます。このチャレンジデーが始まってから、ラジオ体操会を定期的にやるようになりました。ラジオ体操は本気でやったらかなりの運動量になります。特に普段から体を動かしていない人にとってはいい運動で、継続してやっていこうと考えています。子どもについては、体力向上も大事ですが、スポーツを通していろいろな場所に出ていき、そこで社会性を身につけるという側面が大きいと思います。知らないところに出て行っても委縮せず、自分の力がちゃんと発揮できる人間になる。見逃されがちかもしれませんが、これはスポーツの大事なところではないでしょうか。
山本 コミュニティーに果たすスポーツの役割は大きいと考えています。スポーツ大会のさまざまな種目を通じて、多様な年代、多様な趣味趣向を持った人たちが関わり合う。そういう仕組みを作ることはとても大事で、私たちもいろいろな角度からスポーツを応援することが必要だと感じています。

─チャレンジデーに参加して、町が活気づいたとか、町にとって何かプラスになったとお感じになったことはあったでしょうか。

秋のチャレンジデー(鷹栖町)

前沸 チャレンジデーは4回経験しまして、当初は参加率が対戦相手より低いと、相手の町旗を掲げなくてはならないというルールを町民によく理解してもらえませんでした。「なんで愛別の町に関係ない旗が掲げられているんだ」と町民からお叱りの電話をいただいたこともあります。それが4回たつとだいぶ浸透しまして、徐々に参加率は上がってきました。チャレンジデーに参加する以前から、町では町民スポーツデーを実施していましたが、チャレンジデーの参加率の上昇に合わせて、スポーツデーの参加率も上がり、相乗効果があるのかなと感じています。
山本 敬老会なんかで話をすると「よくやってくれた」という人がけっこういました。こういうイベントを待っている人は少なくないということですね。うちの町だけでなく、よその町と一緒にやるので効果も大きいし、張り合いも出ます。今年対戦した神奈川県の松田町の町長とは、エール交換をした関係で、互いに行き来するなど交流が広がりました。副次的ではありますが、そういう効果もうれしいものです。
チャレンジデーはスポーツをすることのきっかけづくりという意味で非常にいいことだと思います。また、みなさんが「自分たちは何に出たらいいのか」と考えてくれるのはうれしいですね。福祉施設の方なら、椅子に座ってボウリングとか、椅子に座って玉入れですとか、自分ができることを考えて参加してくれる。みなさんうまく自分を引き出してくれていると思います。

─みなさんの町にはB&Gの施設があると思います。町における施設の位置づけ、期待するところについて教えてください。

秋のチャレンジデー(愛別町)

前沸 児童生徒数の減少で小学校が統合され、それに伴ってプールが廃止されました。今ではB&Gの施設が町内で唯一のプールで、おかげで小学生のプール学習が続けられます。体育館も一般の方々向けとなると、B&Gの施設だけです。ですから学校の施設と併せて、B&Gの施設は大変有効に使わせてもらっています。
山本 私たちは平成元年にB&Gにプールを作ってもらい、今年度一部補助をもらってプールの改装と採暖室の設置をさせていただきました。少し話はそれますが、今年は鹿児島県の長島町と交流する機会があり、私たちの小学生を30人弱長島町に送り込みました。あちらにもB&Gの施設もあり、そこのカヌーを使いながら、私たちの町では絶対にできない海洋スポーツを体験させてもらいました。離れてはいますが、そのような形でもB&Gの施設にお世話になりました。
うちの町のB&G施設はプールと体育館が一つずつあります。私が沖縄の研修から戻って立ち上げた水泳少年団は今も続いていて、60人くらいのメンバーがいます。冬場はプールに隣接する町有地をクロスカントリーコースにして、スキーの練習をしているのですが、実はプールの更衣室が冬になるとスキーのワックスルームに変わるんです。B&Gの施設をスポーツの拠点として使わせていただいています。子どもたちはどこで伸びるかわかりませんから、いろいろな種類のスポーツを用意したほうがいい。スポーツをして子どもが変わっていく、成長していく姿を見るのは本当に面白いですね。そうやって成長した子どもたちが大人になって、次の子どもたちを指導する。その繰り返しが人づくり、町づくりの推進力になっています。

─最後に、今回のチャレンジデーを終えての感想と、今後の展望をお聞かせください。

日頃から関わりが深い近隣の町との対戦ということで、5月にも増して「負けないぞ!」という町民の皆さんの熱意を感じました。握力測定などで3町の1番を決める共通種目も非常に盛り上がり、それぞれの町と人とがつながるチャレンジデーの良さを改めて実感しました。私自身も卓球やフロアカーリングなどに参加させていただきました。今後も継続していきたいと思います。
前佛 当日はあいにくの天候の中でも、1,000人近くの方にご参加いただきました。町中がチャレンジデーで盛り上がり、心も、体も、地域も元気にするスポーツのチカラを再認識できました。今後も多くの町民の皆さんの、スポーツに親しんでいただくきっかけにしていただけるのならうれしいですね。
山本 チャレンジデーは、冬の長い北海道民にとって、春のスポーツシーズンを彩るイベントとして定着しつつあります。初の秋開催となる今回も多くの町民の方にご参加いただき、スポーツに親しむとても良い機会になったのではないでしょうか。来年度以降も継続して実施することを検討しています。