• 日本のソフトボールと宇津木麗華の国籍変更

    2008年北京大会で夢の金メダルを獲得した26歳の上野由岐子は、自身の夢をかなえたことで満足して進む道を見失い、ソフトボールをやめることまで考えたという。次の目標を見つけられない状態の上野に声をかけたのは、所属チーム・ルネサス高崎の監督(当時)の宇津木麗華。宇津木麗華は中国・北京出身で、かつて任彦麗という名で、小・中学校時代は陸上・やり投げの選手として強肩を誇っていた。そんな任を北京にある体育学校のソフトボールの監督が見て興味をもった。14歳のときである。

    執筆者:大野 益弘 View more
  • オリンピック柔道史上最多メダルへの流れの中で見た井上康生の人間味

    東京2020大会、柔道個人で日本は男子金メダル5個、女子金メダル4個・銀メダル1個・銅メダル1個を獲得した。史上最多の快挙である。とくにこの大会を最後に任期を終える男子監督の井上康生が注目された。
    男子の金メダル5個は日本柔道界の集大成である。しかし、これは決して井上だけの手柄ではない。多くのスタッフの尽力があった。それは、本人も謙虚に自覚しているはずである。逆説的ではあるが、だから井上は愛される。

    執筆者:鮫島 元成 View more
  • バスケットボール女子銀メダル

    バスケットボール女子日本代表には、試行錯誤を繰り返して編み出した、サイズ不足を克服して世界と真っ向勝負できる戦い方の土台が、途切れることなく脈々と受け継がれている。先人たちのたゆまぬ研鑽と蓄積のうえに花開いた銀メダルだった。
    2024年のパリオリンピックで、さらなる高みを目指すバスケットボール女子日本代表が再び世界を驚かせる日が、待ち遠しくてしかたがない。

    執筆者:谷釜 尋徳 View more
  • 地道な歩み、史上初の女子2冠…──競泳女子・大橋悠依

    実力は確かだったが、これほどの活躍を誰が予想しただろうか。東京オリンピックで競泳女子の大橋悠依(イトマン東進)は、女子個人メドレーで2冠に輝いた。夏季オリンピックの日本女子史上、初の快挙だ。大会直前には大不振に陥っていたにもかかわらず、華々しい結果を残せたのはなぜか。「自分らしさを出せた」という戦いぶりの裏には、緻密で周到な準備や、長年の歩みがある。

    執筆者:菊浦 佑介 View more
  • 長嶋さんと聖火リレー、そして金メダル……

    その登場に目を見張った。2021年7月23日、東京オリンピック開会式。読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんが「ON砲」の盟友、王貞治さん、愛弟子の大リーグ元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんとともに聖火リレー走者として国立競技場の舞台に立った。柔道の野村忠宏さん、レスリングの吉田沙保里さん、オリンピック3連覇を果たした2人の手で国立競技場の聖火リレーがスタート。球界のヒーローたちはオリンピック・レジェンドから聖火を引き継いだ。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • 東京2020ボランティア、…そして水谷隼との邂逅

     オリンピック・パラリンピックでは何百にもおよぶ様々なボランティアの役割がある。その中で言語サービスの任務は、選手の試合直後の第一声を世界に伝えることだ。大変なプレッシャーがあるものの、選手と感動を共にできる非常に恵まれた、そして同時に名誉なポジションと言っていいだろう。観客の案内や、競技のサポートといった役割には最も多くのボランティアが配属される。また関係者の移動をサポートするドライバーや、関係者・選手団・来賓などの接遇・お手伝いなどもボランティアが対応する。今回の東京大会はある意味、私たち、ボランティアにとって過去の大会以上に、活動の重要性が浮き彫りになったと言えるかもしれない。

    執筆者:西川 千春 View more
  • 東京2020オリンピック選手村にて

    初めて日本選手アシスタントとしてオリンピックに関わり、「オリンピックとは何か」「選手村とはどのような場所なのか」など多くのことを学び、選手村の中でみて、感じたことを通してあるべき社会の姿についていろいろ考えた。新型コロナウイルスによる史上初の大会延期、無観客開催となった特殊な大会は、開催の是非について多くの議論がなされた。選手たちも、世界中が混迷を深める中、目の前の目標が見えなくなる辛さと葛藤、様々な想いと共に不安な日々を送っていたに違いない。オリンピック・パラリンピック自体の在り方も、改めて考えさせられた。

    執筆者:秦 絵莉香 View more
  • ホストタウン活動の成果と将来

    自治体は、1.大会参加者との交流、2.大会参加国の方々との交流、3.日本人オリンピアン・パラリンピアンとの交流、の3つの要素を盛り込んだ交流計画を作成、ホストタウンとして登録することで交流事業の1/2の特別交付税を得られるという制度。大規模国際スポーツ大会で、自治体が事前キャンプ地となることは多くあるが、制度として国が実施するのは世界でも初の試みであった。

    執筆者:松原 茂章 View more
  • 東京2020大会という分水嶺
     ──無観客とテレビ、インターネット

    日本オリンピック委員会(JOC)は選手たちへの誹謗中傷を記録し、状況次第では関係機関と協力し対策に乗り出す構えだ。一方で選手たちへのカウンセリングの取り組みも進めている。
    ICTの進歩はスポーツ界を変え、スポーツ報道をも変えつつある。だからこそスポーツ界と取り巻く社会が共同歩調をとり、選手を守る対策を講じる事は急務となった。東京2020大会は変化のただ中で初めて開催されたメガ・スポーツ・イベントだと後世、記録されるはずだ。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • 電通オリンピック

    なぜ、東京2020大会組織委員会は実行委員会を組織しなかったのだろう。運営の中核として実行委員会を設けて各専門委員会をぶら下げれば、意思の疎通が諮られ、より円滑に運営がなされたように思う。
     大会公式代理店の電通から民間最大の約150人が組織委員会に出向し、要所に配置された。まさに電通が実行委員会の代役を担ったという事なのか。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • 大会組織委員会の運営総括

    日本で2度目の夏季オリンピック開催の準備は、不祥事や想定外のトラブルに次々と見舞われ、さながら暴風雨の中を懸命に前に進んでいるようだった。
     新型コロナウイルスの世界的大流行によってオリンピック史上初めて1年延期となるなど不可抗力の出来事もあったが、それを差し引いても不手際による混乱が続発した。なぜこんな状況に陥ったのか。今後の教訓とするためにもしっかりと検証する必要がある。

    執筆者:北川 和徳 View more
  • 「オリ・パラの将来像」真夏開催の限界と競争促す競技の新陳代謝、パラと一部共催の道も

    商業化と肥大化が進み、曲がり角を迎えたオリンピックはもはや「オワコン(終わったコンテンツ)」なのか──。東京大会は「多様性と調和」「ジェンダー平等」を掲げながらトラブルが絶えず、ブランドイメージも傷ついた。オリンピックとは、いわば世界最大の運動会。筋書きのないドラマに人々は引き込まれる。それでも時代の変化に対応できなければ「平和の祭典」が永久に続く保証はないだろう。

    執筆者:田村 崇仁 View more
  • IOCとオリンピック・パラリンピックのあり方

    2021年の流行語大賞候補にまでなった「ぼったくり男爵」。IOCは本当に、「血も涙もない金の亡者」なのだろうか?そうでないなら、なぜ人々の反感を買い、批判の矢面に立つことがままあるのだろう?28年近くIOCの取材をしてきた経験から、読み解いてみたい。

    執筆者:結城 和香子 View more
  • オリンピックとジェンダー
    ──世界初の女性スポーツ組織設立から100年目の到達点と課題

    「大会は世界の生活を支持しなければならず、貞淑で恣意的な規則の囚人であってはならない」
    このクーベルタンの言葉は、自らの偏見を世界が乗り越えることへの予言のようにも読める。何十年か後、「ジェンダーに関する古い規範の囚われの身からスポーツが解放された大会」として東京大会を歴史的に位置づけることはできるだろうか。検証は後世に委ねられることになるが、開催地である日本のスポーツ界、社会の取り組みがその成否の一端を担うことは間違いないだろう。

    執筆者:來田 享子 View more
  • 無観客大会に思う

     思えば近代オリンピックは誕生のその時から、観客あってのイベントだった。1896年、アテネで第一回の近代オリンピックが開催された際にも、7万人ほどの観客が詰めかけていたこと、また人々が口々にオリンピックの話題を持ち出していることなどが当時の報告書に詳細に綴られている。オリンピックのアイデアの優れたところはそのインターラクティブな性質、インターナショナルな環境にあるはずが、東京2020大会だけは、それぞれに孤立した存在であることを求める例外的なオリンピック環境だったのだ。

    執筆者:山本 浩 View more
  • 沖縄初の金メダリストが静寂の日本武道館で捧げた祈り――喜友名 諒

    本土にくらべて脆弱な医療体制や観光産業を新型コロナウィルスに狙い撃ちされ、大きな困難にみまわれた沖縄の人びとが久しぶりに喜びを分かち合えたのが、喜友名の金メダルの瞬間であった。その喜友名諒の演武と言葉は、どんな政治家のパフォーマンスよりも子どもたちに届いたのではないだろうか。

    執筆者:美甘 玲美(みかも れみ) View more
  • オリンピック・パラリンピックと持続可能性(Sustainability)もしくは、「オリンピック・パラリンピックの持続可能性」

    オリンピックやパラリンピックと持続可能性(サステナビリティ:Sustainability)という取り合わせは少々奇妙に見えるのかもしれない。スポーツという身体の運動と、持続可能性というさまざまな要素を含む社会の運動がすんなりとは結びつかないからだ。しかし今では持続可能性はオリンピックのたいせつな要素の一つとなっている。

    執筆者:藤原 庸介 View more
  • ブラインドマラソン「チーム・ジャパン」の挑戦と軌跡

    選手強化を効果的に継続させるためには、大会後に過程と結果を分析し、次に生かすことが欠かせない。こここでは、東京パラリンピックからの学びとして、最終日に行われた陸上競技マラソン・視覚障害の部(T12)に挑んだ、日本ブラインドマラソン協会(JBMA)と選手たちの事例をもとに考えたい。

    執筆者:星野 恭子 View more
  • 車いすバスケットボール男子日本代表を銀メダルに導いたものとは

    東京パラリンピックで史上初の銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子日本代表。
    今回の歴史的快挙を「奇跡」と捉える人は少なくないかもしれない。しかし、それは事実とは異なる。今回は、その背景に迫りたい。

    執筆者:斎藤 寿子 View more
  • 「2つの金メダル」と「United by Emotion」

    オリンピック、パラリンピックはその長い歴史の中にさまざまな印象に残る場面を残してきた。東京2020大会でもまた、心が動く場面があった……。
     大会10日目の8月1日、陸上男子走り高跳び決勝をテレビ観戦していたときだ。審判が1位を争う2人の選手に話しかけると1人の選手が答え、審判がうなずくともう1人が飛び跳ねて片方の選手に抱きついた。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • 今回はしかたがない──次は幸せな夢の扉を開けてくれる開会式が見たい

     東京2020大会はオリンピック史上初めて1年延期された。さらに緊急事態宣言発出中の開催となったことで、多くの議論はあったものの、一部地域を除き無観客で行われた。関係者以外の圧倒的多数の人々にとっては、テレビやネット配信以外の手段で競技を観戦できなかったのである。東京2020大会では競技場がまさにスタジオと化した。スタジオ・オリンピックである。

    執筆者:大野 益弘 View more
  • パラ報道、物足りなさが残ったのは?
    ――「伝えるべきこと」は何なのか


    合わせて600時間余に及ぶという、かつてない規模でテレビ中継が行われた2021年東京パラリンピック。多くの人々がパラ競技の実像に触れる機会を得た東京大会は、日本におけるパラリンピック元年を開いたと言ってもいいだろう。一般社会に対し、障害者スポーツを競技として、それも細部までつぶさに見る機会がたっぷりと提供されたのは初めてのことだった。コロナ禍による無観客開催ではあったが、多くの人がテレビ映像によって初めて生のパラ競技に触れ、その魅力の一端を知ったとなれば、これはまさしく「パラリンピック元年」と言い切っても差支えあるまい。

    執筆者:佐藤 次郎 View more
  • 東京2020大会、政治の敗北

    オリンピックと政治が無関係ではありえない事は歴史が証明し、人々の理解も及ぶ。しかし為政者を賛美し、明確な理念を語らない政治利用はやがてオリンピックの存在を危うくする。東京、北京冬季は分水嶺である。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • パラリンピアンの脳はどうなっている?

    東京2020大会が掲げた「多様性と調和」という理念は、よりパラリンピックの方が腑に落ちた。パラリンピックの選手たちはみな、何らかの障害がある人たちである。しかし巧みに義足を操って走り跳び、目に障がいがあるのにまるで見えているかのように泳ぐ。脳には元来、失った機能を補う働きがあるという。「失ったものを嘆かず、残った機能を活かす」選手たちの肉体を司る脳はどうなっているのか。

    執筆者:佐野 慎輔 View more
  • パラスポーツとクラス分け

    障害の内容や程度によって選手を区分する「クラス分け」は、競技の公平性を保つ上で欠かせない、パラスポーツ特有の制度だ。区分のラインをどう引くか、どう検査し判定するかなどは大きな課題である。障害は多様で選手個々の身体機能も異なるため、ときに受け容れがたい判定が下されることもある。とくに、東京パラ前はクラス分けの課題が顕在化した事例が複数発生し、選手が翻弄される事態となった。

    執筆者:星野 恭子 View more
  • 分厚い壁に風穴を開けた快走
     ――田中希実 快挙もたらした真っ向勝負  


    2021年8月、その分厚く高い壁、到底越えられないかにも見えた世界の壁に、一人の選手がついに風穴を開けた。東京オリンピックを21歳で迎えた田中希実は、クラブチームの豊田自動織機TCに所属する同志社大4年生。女子1500mへの日本女子初出場を果たした若きランナーは、果敢な走りでオリンピック史に画期的な足跡を刻み、「越えられない壁はない」ことを鮮やかに証明してみせたのである。

    執筆者:佐藤 次郎 View more
  • 「パラリンピック元年」開いた東京大会
    ――広く伝わった「パラ競技の生きた姿」

     2021年は日本におけるパラリンピック元年になったと言えるだろう。自国開催の東京大会でいままでにない規模のテレビ中継が放送されたことにより、多くの人々が初めて、パラ競技を目の当たりにしたのである。コロナ禍のもとでの無観客開催だったとはいえ、実際のところ、一般にはほとんど知られていなかったと思われるパラ競技の実像が、これだけ広く世の中に知れ渡ったのは、まさしく画期的な出来事だった。

    執筆者:佐藤 次郎 View more
  • スポーツの楽しさ再発見
    スケートボードに見るチャレンジ精神

    東京オリンピック後のアンケートでは、スケートボードに高い関心が集まった。解説者の口から出るスケートボードの世界を彷彿とさせる空気に加えて、日本の選手が高い競技成績を残したこと、さらに、選手達のチャレンジ精神、高い得点のために、危険を覚悟で難しい技に挑戦する姿勢に注目が集まった。演技を終わった後の選手同士の励まし合いもすがすがしいものだった。

    執筆者:山本 浩 View more
  • 「異形の」オリンピック、歴史の評価は?
     ――深まる危機、改革につなげたい

    2020(2021)東京大会は、オリンピック史の中で長く語り継がれるものになるだろう。それも、なんとも複雑な思いとともに語られるに違いない。新聞に大見出しが躍ったように、それがかつてない「異形の」オリンピックだったからだ。

    執筆者:佐藤 次郎 View more
  • 2020年東京パラリンピック大会 競技日程・スケジュール View more
  • 2020年東京オリンピック大会 競技日程・スケジュール View more
  • 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会までの道のり View more