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種目別(エクササイズ系と競技系)にみた運動・スポーツ実施状況 その2

-週1回以上実施者の傾向-

2019年2月19日

種目別にみた運動・スポーツ実施状況

はじめに

1月に公開した、スポーツライフ・データ分析レポートVol.6「種目別にみた運動・スポーツ実施状況その1」では、20歳以上の成人を対象にした「スポーツライフに関する調査」(2002年~2018年)の年1回以上の運動・スポーツ実施状況を明らかにした。第2弾として、わが国の運動・スポーツ実施状況をさらに詳細に把握するため、週1回以上の運動・スポーツ実施率に着目し、二次分析を行った。

1. エクササイズ系種目と競技系種目の実施率の推移
(2002年~2018年)

分析レポートVol.6と比較検討するため、本レポートにおいてもエクササイズ系種目はウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)に、競技系種目はサッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球に分類した。図1に20歳以上の週1回以上の運動・スポーツ実施率と、エクササイズ系種目および競技系種目それぞれ6種目のうち、いずれか1種目を実施した人の割合を示した。

さまざまな種目を含めた全体の週1回以上の運動・スポーツ実施率は2002年の49.7%から2018年の57.6%と過去16年間で増加傾向にある。その中でエクササイズ系種目の実施率は、2002年の27.0%から2018年の36.3%と増加しているが、競技系種目の実施率は、2002年は4.5%、2018年は5.8%と横ばいで推移をしている。

図1 エクササイズ系種目※1と競技系種目※2の週1回以上の実施率 年次推移

図1 エクササイズ系種目と競技系種目の週1回以上の実施率 年次推移

注1)全体:週1回以上何らかの運動・スポーツを実施した人の割合
注2)2018年調査の年1回以上の実施率上位6種目(下記参照)のいずれか1種目以上を週1回以上実施した人の割合
※1 エクササイズ系種目:ウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)を含む
※2 競技系種目:サッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球を含む

2. 年代別にみたエクササイズ系種目の実施率の年次推移

中高齢者のエクササイズ系種目の実施率は増加傾向、特に70歳以上の実施率は過去16年で2倍以上に!

年代別にエクササイズ系種目の実施率をみると、年による増減はあるものの20歳代は27.4%(2002年)から26.8%(2018年)、40歳代は24.9%(2002年)から28.6%(2018年)、50歳代は30.3%(2002年)から36.2%(2018年)とほぼ横ばいで推移している(図2)。30歳代は24.8%(2002年)から33.3%(2018年)に増加している。

特徴的な点は60歳代、70歳以上の実施率の増加である。60歳代の実施率は32.5%(2002年)から43.8%(2018年)へ大きく増加した。しかし、2014年の47.8%をピークに減少傾向にある。70歳以上の実施率は20.3%(2002年)から49.1%(2018年)へ2倍以上増加した。2002年では全年代の中で最も低い実施率であったが、2018年には最も高い実施率となった。エクササイズ系種目は、特に中高齢者の実施率が高く、運動・スポーツを行うことが日々の習慣になっていると考えられる。

図2 エクササイズ系種目の週1回以上の実施率 年次推移

 図2 エクササイズ系種目の週1回以上の実施率 年次推移

注1)エクササイズ系種目:ウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)を含む
注2)n数は表1を参照

表1 各調査年の年代別n数
20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 合計
2002年 368 363 397 439 385 315 2,267
2004年 332 405 385 432 424 310 2,288
2006年 252 323 286 362 326 318 1,867
2008年 306 395 322 394 331 252 2,000
2010年 293 388 333 362 366 258 2,000
2012年 286 376 352 334 381 271 2,000
2014年 270 357 376 332 383 282 2,000
2016年 393 499 570 474 557 433 2,926
2018年 381 480 595 481 564 428 2,929

3. 年代別にみた競技系種目の実施率の年次推移

若い年代ほど実施率は高く、20歳代、30歳代、60歳以上は増加傾向

図3に競技系種目の週1回以上の運動・スポーツ実施率を年代別に示した。
20歳代の実施率は6.8%(2002年)から9.7%(2018年)に、30歳代は5.2%(2002年)から7.9%(2018年)に増加している。40歳代は6.5%(2002年)から5.4%(2018年)に減少。50歳代は5.0%(2002年)から4.8%(2018年)とほぼ横ばいで推移している。60歳代は1.8%(2002年)から4.1%(2018年)、70歳以上では1.3%(2002年)から4.0%(2018年)と60歳以上の年代の実施率は増加している。競技系種目の実施率は、過去16年間で20歳代、30歳代、60歳以上の実施率は増加傾向にあるが、40歳代、50歳代の中年者の実施率は横ばい、または減少傾向にある。
エクササイズ系種目、競技系種目の年次推移を年代別に分析した結果、両種目で60歳以上の実施率が増加していることが明らかになった。他の年代についても、減少傾向にある年代は少なく、週1回以上の運動・スポーツ実施率は全体的に横ばいから増加傾向にある。

図3 競技系種目の週1回以上の実施率 年次推移

  図3 競技系種目の週1回以上の実施率 年次推移

注1)競技系種目:サッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球を含む
注2)n数は表1を参照

4. 種目ごとの特徴

①ウォーキング、筋力トレーニング、ジョギング・ランニングの実施人口は2002年から2018年にかけて増加傾向
②バドミントン、サッカーは2002年から2018年にかけ増加傾向、卓球も近年は増加傾向

(1) エクササイズ系種目(図4)

  • ウォーキング
    エクササイズ系種目の中でも最も実施人口が多く、人気の種目である。2002年の1,168万人から2018年の1,867万人へ約700万人増加している。健康志向の高まりや、取り組みやすさという点からも実施人口は今後も高い水準を維持すると考えられる。
  • 筋力トレーニング
    推計実施人口は2002年の523万人から2018年には1,068万人と約2倍に増加している。健康志向の高まりや、ここ10年程でパーソナルジムや中高齢者をターゲットとしたジムが数多くオープンし、取り組みやすい環境が整ったことも要因の1つと考えられる。
  • ジョギング・ランニング
    2002年の211万人から2018年の550万人と増加している。2012年の572万人をピークに2016年には467万人まで減少したが、2018年には再び増加。2007年の東京マラソン開催をきっかけに、各地でマラソン大会が開催されるなど、誰もが気軽に目標を定めながら取り組めることも、実施人口の増加につながっていると考えられる。

図4 週1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(エクササイズ系種目)

 週1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(エクササイズ系種目)

注) 推計実施人口:表3の住民基本台帳人口(人)に表2の実施率(%)を乗じて推計

表2 ウォーキング、筋力トレーニング、ジョギング・ランニングの週1回以上の実施率

(%)

2002
(n=2,267)
2004
(n=2,288)
2006
(n=1,867)
2008
(n=2,000)
2010
(n=2,000)
2012
(n=2,000)
2014
(n=2,000)
2016
(n=2,926)
2018
(n=2,929)
ウォーキング 11.6 14.7 14.2 16.3 17.8 17.3 18.1 16.8 18.0
筋力トレーニング 5.2 5.7 5.1 7.2 8.4 7.9 8.4 9.4 10.3
ジョギング・
ランニング
2.1 3.3 2.9 3.4 4.2 5.5 5.3 4.5 5.3

表3 住民基本台帳人口

(人)

2002
(2001.3.31)
2004
(2003.3.31)
2006
(2005.3.31)
2008
(2007.3.31)
2010
(2009.3.31)
2012
(2011.3.31)
2014
(2013.3.31)
2016
(2015.1.1)
2018
(2017.1.1)
100,649,429 101,730,947 102,636,961 103,387,474 103,824,522 103,973,831 103,811,681 103,888,078 103,708,284

:2011年東日本大震災により人口を報告できなかった22市町村については、2010年3月31日現在の住民基本台帳人口を使用。
注) 各年の人口:( )内の日付現在の住民基本台帳による。
出典:総務省統計局ウェブサイト(住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査数)

(2) 競技系種目(図5)

  • バドミントン
    実施人口は2002年の81万人から2018年の104万人と増加傾向にある。2016年には実施人口が145万人まで増加したものの、2018年には減少。他の種目よりも実施人口は多く、競技系種目の中でも人気の種目である。
  • 卓球
    2002年の実施人口は141万人と競技系種目の中では最も多い種目であったが、2006年に41万人と大きく減少。その後は増加を続け、2018年には104万人まで回復した。
  • サッカー
    実施人口は2002年の81万人から2018年では124万人に増加した。2012年に146万人まで増加したが、2016年にかけて減少傾向に。2018年には再び増加した。

図5 週1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(競技系種目)

 図5 年1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(競技系種目)

注)  推計実施人口:表3の住民基本台帳人口(人)に表4の実施率(%)を乗じて推計

表4 バドミントン、卓球、サッカーの週1回以上の実施率

(%)

2002
(n=2,267)
2004
(n=2,288)
2006
(n=1,867)
2008
(n=2,000)
2010
(n=2,000)
2012
(n=2,000)
2014
(n=2,000)
2016
(n=2,926)
2018
(n=2,929)
バドミントン 0.8 1.0 0.7 1.1 1.0 0.9 1.1 1.4 1.0
卓球 1.4 0.8 0.4 0.7 0.7 0.7 0.9 0.8 1.0
サッカー 0.6 0.5 0.5 0.9 1.0 1.4 1.0 0.9 1.2

3.まとめ

わが国の運動・スポーツ実施状況を週1回以上の実施率に着目し分析したところ、エクササイズ系種目は、ほぼ全ての年代の実施率と種目ごとの実施人口は増加しており、全体的に増加傾向にある。一方、競技系種目は年代や種目によって特徴がみられ、全体的には横ばいで推移をしている。年代別などの特徴や傾向としては以下の3つがみられた。

  1. エクササイズ系種目、競技系種目ともに60歳以上の実施率の増加が顕著にみられた
  2. 競技系種目は20歳代、30歳代の実施率も増加傾向
  3. ウォーキングや筋力トレーニングなどのエクササイズ系種目の実施人口が大きく増加

年代別の傾向をみると、エクササイズ系種目、競技系種目ともに60歳以上の中高齢者の実施率は増加しており、定期的に運動・スポーツを実施している人が増えている。特にエクササイズ系種目で大きく増加した。中高齢者の実施率の推移は年1回以上の運動・スポーツ実施状況と同様の傾向がみられ、実施頻度に関係なく増加している。
一方、競技系種目では、20歳代、30歳代の実施率が増加しており、20歳代、30歳代の実施率が減少傾向にある年1回以上の実施状況とは異なる結果がみられた。若い世代は競技系種目を不定期に楽しむ層より、定期的に取り組む層が増加していると考えられる。 本レポートは分析レポートVol.6に引き続き、週1回以上の運動・スポーツ実施状況を分析した。今後も経年のデータを分析し、わが国の運動・スポーツ実施状況を明らかにしていきたい。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所研究員 鈴木 貴大

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
担当研究者