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国際情報

Sport News Brazil

2015年10月27日

2016年リオオリンピック・パラリンピックに向けた準備状況

南米初のオリンピックとパラリンピックの開幕を1年後に控えた8月5日、リオデジャネイロのバーラ地区で記念式典が催された。挨拶に立ったブラジルのジウマ・ルセフ大統領は、「来年、世界で最も美しいこの町で、史上最高のスポーツイベントが行われることを確信している」と宣言したが、その一方で、「われわれには、まだ多くの仕事が残っている」とも語った。また、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は、「世界各国のスポーツファンは、多彩な文化をもつこの国で、素晴らしいホスピタリティを受けることだろう」と期待を表明した。

ルセフ大統領が自ら認めたように、2016年リオ大会を無事に開催するためには、競技施設の建設、交通機関の整備、水質汚染問題と治安の改善など数多くの課題がある。

競技施設は、リオデジャネイロのセントロ(ダウンタウン)に近いマラカナン、セントロの南西にあるコパカバーナ、南西部のバーラ、北西部のデオドロの4地区に分散している。

このうち、開幕式、閉会式、サッカー競技が行われるマラカナン・スタジアム、陸上競技が行われるジョアン・アヴェランジェ・オリンピック・スタジアム(いずれもマラカナン地区)などのようにすでに建設が完了している施設もあるが、オリンピックとパラリンピックのために新たに建設されている14の施設のうち、本稿を書いている8月末時点ですでに工事が完了している施設はひとつもない。

最も遅れているのが、ゴルフ競技が行われるゴルフ場の建設である。

ブラジルではゴルフ愛好者が限られており、リオデジャネイロ市内にあるゴルフ場は2つだけで、いずれもトップレベルの国際大会を行う条件を満たしていない。大会組織委員会とリオデジャネイロ市は、ゴルフ競技の会場として市南西部のマラペンジを選んだが、ここは環境保護地区内にある。そのため2012年末、リオデジャネイロ市議会がこの地域へのゴルフ場建設を可決したものの、その後、環境保護団体などが地方裁判所にその違法性を訴えた。最終的に裁判所が建設を認めて建設工事が始まったのは2013年4月となり、建設工事がオリンピック開幕に間に合うかどうかが危惧されている。

このほか、自転車競技、テニスの施設の建設も、予定より大幅に遅れている。

交通機関の整備に関しても、少なからず不安がある。セントロからバーラ地区まで地下鉄の路線を延長する予定だが、完成予定は来年6月とオリンピック開幕の直前。また、やはりバーラ地区まで大会関係者専用の自動車レーンが建設されているが、こちらも予定より遅れている。

今後、天候の異常があったり、あるいは昨年の2014FIFAワールドカップブラジルの際に起きたように労働者が待遇改善を求めてストライキを起こした場合、危機的な状況を迎える可能性がある。

さらに深刻な問題は、水質汚染である。セーリング競技が行われるグアナバラ湾、ボート競技とカヌー競技が行われるロドリゴ・デ・フレイタス湖、トライアスロン競技の水泳とオープンウォータースイミングが行われるコパカバーナ海岸があるが、このうちグアナバラ湾とロドリゴ・デ・フレイタス湖には未処理の下水やゴミが大量に流れ込んでウイルスやバクテリアが検出されており、選手の健康に危害を与える恐れがある。実際に、2015年8月5日から8日までロドリゴ・デ・フレイタス湖で行われた世界ジュニア・ボート選手権の期間中、アメリカ代表の選手たちが体調不良を訴えている。

リオデジャネイロの水質汚染は長年の問題で、2009年にリオデジャネイロがオリンピックとパラリンピックの開催地に立候補した際、ブラジルのオリンピック委員会は開幕までにこの問題を解決することを公約に掲げていた。しかし、その後、リオデジャネイロのエドゥアルド・パエス市長は、「開幕までに、汚染を80%減らしたい」と表明するにとどまっており、今後、どこまで事態が改善されるか不透明な状況だ。

治安に関しても、リオデジャネイロ市内における昨年の強盗事件は7万9千件で、2012年から約50%増加している。しかも、大会期間中は外国人旅行者を狙った犯罪が多発する可能性があるため、約8万5千人が警備にあたる予定だ。この数はロンドン大会の警備員の2倍以上だが、それでも万全とは言い切れない。

リオデジャネイロは、カリオカ(リオっ子)たちが「シダージ・マラヴィリョーザ」(魅惑の都市)と自慢するように、見事な景観、美しいビーチ、そして陽気で屈託のない人々が住む素晴らしい町である。一方で、計画性の欠如、作業の非効率などによる準備の遅れ、水質汚染問題に代表されるインフラ未整備、著しい貧富の差に起因する高い犯罪率といった多くの問題を抱えている。

今後1年足らずの期間に、これらの問題をどこまで解決できるか。それは、スポーツ界のみならず、ブラジルの国と国民にとって極めて重要な挑戦となるはずだ。

レポート執筆者
沢田 啓明

Sports Journalist

Partner Fellow, Sasakawa Sports Foundation

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