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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

国体に向け準備も加速 長崎県大村市 前半

国体に向け準備も加速 長崎県大村市 スポーツの力を活用し「日本一住みたくなるまち」に

ボートレース発祥の地として知られる大村市は、2014年秋に「第69回国民体育大会(長崎がんばらんば国体)」を控え、開催6競技の施設整備などが着々と進められている。チャレンジデーには長崎県の自治体で唯一参加し、6回連続で参加率50%を超え「金メダル」を獲得した。176の町内会が自主的に参加プログラムを考えるなど、地域が一体となりスポーツ活動を盛り上げている。

長崎県大村市とは 人口:93,532人(2013年6月末現在) 特長:大村市は、長崎県の中央に位置し、西は大村湾に臨み東には多良岳県立公園が控える。長崎空港や長崎自動車道による至便な交通アクセスに加え、2022年には九州新幹線長崎ルートも開業予定。県内では平坦地が多い地域となっている。

市民が主役のスポーツ活用

人間形成に重要な役割を担うスポーツ体験

松本崇市長

渡邉 大村市といえば、長崎県の玄関口である長崎空港や長崎自動車道などの高速交通網を生かし、先端技術産業が発展を続けています。一方で、日本最初のキリシタン大名大村純忠や天正遣欧少年使節派遣などの歴史ある街であり、大村公園に代表される花の街でもあります。そうした中、市長は通算5期目の市政を担当し、「日本一住みたくなるまち」を基本に、今年度は「未来を担う人材の育成」「子育て支援の充実」「産業の振興と雇用の確保」を重点施策に取り組んでおられます。今回は、そんな活力ある大村市の、スポーツによるまちづくりについてお伺いしたいと思いますが、まず、市長ご自身のスポーツ体験やスポーツに対する考え方からお聞かせください。

松本 スポーツというのは「生きる力」の基本のひとつであり、心身ともに健全な人間形成には、スポーツ体験が非常に重要だと思っています。それは家庭でも学校でも、さらに地域においてもそうだと思います。

渡邉 私もそう思います。人間が成長する過程において、人間関係を学ぶこともそうですし、目標に向かって努力することの大切さ、また、スポーツには勝敗があり、たとえ負けてもそこから得る教訓は必ずや自分の糧になります。本当に、スポーツを通して学ぶことは多いですね。

松本 おっしゃる通りです。そんな私自身のスポーツ体験でまず思い出すのは、小学校の時に4年間担任をしていただいた先生です。22~23歳の若い先生でしたが、とにかくスポーツに力を入れてくれまして、中でもサッカーが好きで、私もボールを蹴りながら闘争心が芽生えると同時に、チームワークなどを学びました。ソフトボールもだいぶやりましたね。

渡邉 小学校まで大村市で過ごした後、中学校は中高一貫の東京大学附属中学校に入られました。いかにも、行動力があり、視野の広い市長らしいのですが、これはどういうきっかけだったのでしょうか。

松本崇市長

松本 同じ東京大学教育学科の附属高校に通っていた兄に呼び寄せられる形で上京しました。もちろん東京への憧れもありましたが、上京後はさみしい思いもしました。その中で中高一貫教育の一番のスポーツ体験は、駅伝の長距離ランナーになったことです。今の体形からは信じられないかもしれませんが(笑)、かなり頑張って走ったものです。陸上部に入ったわけではないのですが、駅伝があるときにクラスで選ばれ、陸上部の選手に次いで活躍していました。高校に進学してからは野球もやりました。そうしたこともあり、県議会議員になったときに議員野球にも参加しました。当時は議員の中でも若く、九州大会や全国大会にも出て活躍し楽しかったです。

渡邉 

スポーツに関しては、球技から陸上競技まで、幅広くやられていたわけですね。市長の行動力やリーダーシップ、そして周りを元気にする明るさは、スポーツで培われた部分も多いのではないでしょうか。

チャレンジデーが地域の絆づくりにも貢献

チャレンジデー

渡邉 市長ご自身がスポーツへの造詣が深いこともあるのでしょうか、大村市は、長崎県の自治体として唯一、2008年から「チャレンジデー」に参加されています。今年で6回目の参加となった「チャレンジデー」で勝利されたことはもちろん、各町内会ベースで参加プログラムを考え実践しているとお聞きし、本当に素晴らしいと思いました。今回のテーマである、スポーツによるまちづくりにも、大きく貢献しているのではないでしょうか。チャレンジデーが市民に与える影響や手応えをどのように感じていらっしゃいますか。

松本 チャレンジデーへの参加目的は、市民の生涯にわたる健康維持と体力増進の機会を提供し、地域や組織の連帯感を図り、健康で明るいまちづくりを進めることでした。以来、年を追うごとに市民の参加意識も高まり、「市民皆スポーツ」という大きな目標に着実に近づいている感触を得ています。
初めて参加した2008年は、「後期高齢者の医療制度」や「特定健康診査・特定保健指導」が始まった年でもありました。そこで、大村市が毎年10月に開催している「健康・福祉まつり」とタイアップし、スポーツを通して健康意識を高めるきっかけづくりにするねらいもありました。市内には176の町内会があるのですが、うれしいことに毎年参加率も伸びており、チャレンジデーに限らず日常的にウォーキングをしたり、町内会でグラウンド・ゴルフを企画するなど、地域ぐるみでスポーツ習慣が浸透し、元気な市民が増えていると感じています。

大村市のチャレンジデー参加率と対戦結果

渡邉 スポーツというのは、市民一人ひとりの心身の健康につながりますし、地域の絆づくりや、コミュニティづくりに非常に有用ですね。大村市の取り組みを見ていると、それがいい形で実現されていて理想的だと思います。

松本 ありがとうございます。どうしても都市化が進むと、かつてのような市民同士のつながりが希薄になり、互いに声を掛け合ったりする機会が減ってきます。これは、アパートやマンションなどの集合住宅に限らず、一戸建てでも同じです。そうした中で、チャレンジデーをはじめとしたスポーツ行事を通じて知り合い、そして親睦を深め、一緒に汗をかくのは非常にいいことで、そこにしっかりコミュニティが生まれてきています。

渡邉 

ちょうど今、オリンピックの招致活動が佳境を迎えていますが、人種や宗教、国境などすべてのハードルを超越するのがスポーツであり、同じフィールドに立てば、そこで互いの気持ちが通じ合うとよくいわれます。スポーツの持つそうしたはかり知れない力は、オリンピックなどの大きな舞台に限らず、地域というレベルでも間違いなく発揮されると思いますね。

「長崎がんばらんば国体」を心に残る大会に

渡邉 来年の秋には、いよいよ長崎県で45年ぶりとなる国体「長崎がんばらんば国体」が開催されます。大村市で開催される種目もあり、その準備も着々と進められていると思いますが、それらの開催競技を普及させるにも良い機会になるのではないでしょうか。

シーハットおおむら

松本 そうですね。長崎国体において、大村市ではゴルフ、銃剣道、卓球、山岳、ソフトボール、バスケットボールの6競技を開催することになっています。今回は「熱く燃えよう大村から」を合言葉に、市民総参加で大会を盛り上げ、「大村での大会は良かった」と、選手にも市民にもずっと心に残る大会になるよう準備を進めているところです。
また、全国から訪れる多くの皆さんを「おもてなしの心」でお迎えする準備も進めています。特に、この7月から市民や団体・グループなどに、国体推奨花の「花の種」「花づくりハンドブック」「花の苗」「プランター」などを配布して、花いっぱい運動を展開しています。さらに、スポーツ施設の整備については、卓球とバスケットボールの会場となる大村市体育文化センター(シーハットおおむら)の体育館改修や、ソフトボール会場となる大村市総合運動公園運動広場の整備、また、山岳のボルダリング会場となる仮設の競技会場設置などを進めています。

渡邉 いまお話に出たソフトボールでは、大村工業高校が全国制覇をするなど、非常に盛んですね。地域に全国レベルの高校やチームがあると、中学生や小学生にも刺激や励みになり、いい影響が出るのではないでしょうか。

松本 大村工業高校は、ソフトボール男子が全国高等学校選抜ソフトボール大会で、2012年13年と2連覇を果たしました。ほかにもバレーボール男子も2012年に全日本バレーボール高等学校選手権大会で優勝するほどの強豪ですし、アーチェリー男子も2011年の全国高校総合体育大会で団体優勝しています。また5月には、市内の50歳以上の方で作る大村互寿会というソフトボールチームが、全国シニアソフトボール大会で全国制覇しています。このように、全国レベルで活躍する選手が身近にいる影響かもしれませんが、ここ数年、小学生も各種のスポーツで全国大会に出て、優秀な成績を残すようになってきていて心強く感じています。グラウンド・ゴルフも盛んで、対人口比で見ると大村市の競技人口が県内で最も多いのではないでしょうか。

チャレンジデー

渡邉 来年のチャレンジデーは、ちょうど国体の前になりますから、例えば、プレ大会のような形で市民国体のようなものを開催してもいいですね。大村市の国体開催競技をチャレンジデーの中に取り入れて、参加者に盛り上げていただければ、本番の国体でも開催競技への理解が深まるでしょうし、市民の方がその魅力や醍醐味をより味わうことができると思います。

松本 

それは面白いアイデアです。ロッククライミングはすでにチャレンジデーに取り入れていますし、卓球、ソフトボール、バスケットボール、それにゴルフはグラウンド・ゴルフでもいいですね。国体に向けて、市民に大村での開催競技が浸透できますし、やはり、楽しく参加できることが、市民それぞれがこれから長くスポーツを続ける上でも一番大事だと思います。

スポーツによるまちづくり